1-9 下種には天罰があるのだ~。
1-9 下種には天罰があるのだ~。
姉ちゃんは料理上手だと思う。
この辺りはあまり豊かな暮らしができるところではない。
この世界全体が遅れているのか、この辺りがど田舎なのか判断が難しいところだが、俺は両方だと思っている。
つまりこの辺りの料理は基本塩味だけなんだ。
だけど母ちゃんは冒険者なんかやっていただけあって物知りで、野草をハーブとして活用したり、木の実を利用して味付けをしたりする方法を知っていた。まあ、あまり上手ではないんだけどね。妙にチャレンジャーなところがあったから。
対して姉ちゃんは凝り性で、いろいろな野草を乾燥させたりしてハーブをコレクションしたりして結構な料理研究家だったりする。そして母ちゃんと決定的に違うのが料理のセンスがあった。
つまりおいしいのだ。
このハーブは村の女の人たちに分けてあげてたりして結構これだけでも暮らしていけそうな勢いがあるんだけどなあ…
まあ、何が言いたいかというとうちの料理は結構うまいのだ。
風味豊かなスープがあって、複雑な味わいの肉がある。主にステーキが多い。
ちなみにパンはない。
まだ酵母が発見されていないのか小麦を捏ねてを発酵させて焼くということは行われていないのだ。
代わりに食べられているのが小麦を水でこねて焼くだけの『捏ね焼き』と呼ばれるもの。
本当にただ焼くだけなんだよね。
まあね栄養素としては炭水化物も必要だから仕方がないんだけど。
だけど俺は知っている。小麦を使ったおいしい食べ物。
その名は『ザ・お好み焼き』!
小麦粉に卵を入れて、山芋を入れてあとはこねて焼くだけ。だけどこれだけで格段にうまい。
しかもこのお好み焼き、好きな野菜を適当に入れればさらにおいしくなる。
干し肉を切って入れてもいい。
キャベツのような野菜もある。
味付けはハーブで絶妙。
時々蜂の子とか入るけど、もう慣れた。
卵は鶏みたいな鳥がいるのさ。
なので我が家の料理は姉ちゃんが担当するようになってから格段においしいのだ。
「ありがとうね」
「なにか?」
「私がふさぎ込んでいる間、カイちゃんが畑見たり、狩りしたりしてくれてたんだよね。いつもあんまり考えなくてご飯食べてた」
「えへへ、気にしないで、俺もおいしいもの食べたいから」
それにどんなに落ち込んでふさぎ込んでいても飯の時間になるとちゃっちゃとご飯の支度をし、おいしい料理をしてくれていたのはねえちゃんだ。
たぶん半ば機械的にやっていたのだと思う。それでも姉ちゃんは俺の姉ちゃんで、育児放棄とかはしなかった。
きっと将来はいいお母さんになるのだろう。だからこんなところに埋もれさすわけにはいかないのだ。
食事がすむと静かな時間が流れる。
それはいつも家族でお茶を飲んだりしていた時間だ。
いつもの時間より二人足りない。
ものすごい喪失感だ。
自然と目に涙があふれだす。
姉ちゃんも涙ぐんでいる。
あの幸せな日々は失われたのだ。
もう帰ってこないのだ。
切ない。
それでも俺は姉ちゃんより人生経験が豊富だから、踏ん張らないといけない。
それが年長者の務め。
そんな静かな時間に家のドアがノックされた。
「誰かしら、こんな時間に」
「あー、俺だ、ナクラだ。ちょっと折り入って話があるんだがいいか?」
むむ、村長の息子だ。
なんだ非常識だな。
しかも勝手にドアを開けて入ってきてしまった。
まだ一部壊れて直してないんだよね。
「ナクラさん、どうしました?」
それでもねえちゃんはまじめに対応する。
村長というのは地球のそれとは違ってこの世界では、この村ではそれなりに権力者だ。あまり粗略にもできない。
ただ精霊たちがちょっと御注進に来てくれた。ふむ。
ナクラは部屋に入ってくると椅子に腰かける。そこは母ちゃん椅子だ、勝手に座りやがって。
姉ちゃんも不愉快そうな顔をしている。
「今日は改めて返事を聞きたい。俺の嫁にこい。絶対にお前を守って見せる」
はっと姉ちゃんが息をのんだ。
そして少ししてはっきりと『お断りします』と答えた。
今日、あの時、その話が出なかったら姉ちゃんは承諾していたかもしれない。だが今姉ちゃんははっきりと断った。
姉ちゃんの胸には希望の灯がともっているのだ。
ついでに柔らかいオッパイも実っている。俺は知っている。
で、こいつはそのオッパイ目当てなのだ。
いや、冗談とかではなくね。
「そうか、わかった、おい」
ナクラは外に呼びかけるように声を出した。
外にはナクラの仲間が隠れていたのだ。
若い衆の中では粋がった感じの三人組。好き勝手するナクラとその腰ぎんちゃくだ。
その二人はいきなり家に押し入り、姉ちゃんを…無視して俺を捕まえた。
なんとこいつらの目的は俺か、想像を絶する変態だ。
というわけではなく。
俺がつかまった後ナクラは姉ちゃんに言った。
「弟を無事に返してほしかったら服を脱いで股を開け」
ものすごいげすっぶりだ。
「どうせ明日には死んじまうんだ。最後に女の喜びってやつを教えてやるぜ。三人で朝まで、ぶっ壊れるまでぶち込んでやる」
姉ちゃんは十二歳だがこの言う村だ性的な知識は早く身につく。
姉ちゃんも何を言われているかわかっているだろう。
だが気になる話があったな。あしたしむ(かみました)って…
「
そうすりゃまた村に被害が出るのは目に見えてる。
だったら餌を用意してやりゃいいって話でな。
この状況はお前らの親がふがいないからだからな、お前に責任を取らそうって話になったのさ」
つまり姉ちゃんをいけにえに出して時間を稼ごうということか。
うーむ、確かにうちは新参だけど、対応がひどいな。
「俺の嫁になるってんなら当然親父に頼み込むつもりだったんだが、いやだってんなら仕方ないよな。でもどうせ死ぬんだ。最後に思い出を作ってやってもいいだろう?」
「どうせ明日にゃ熊公の胃袋だ。どんなにやられてもガキができる心配はねえんだ」
「まだガキでも胸もケツもうまそうだもんな」
「やられまくって壊れちまえ、そうすりゃ熊に食われるのもわからねえさ…いや、いっそ今日死んでも問題ねえよな」
「おう、すげえ。なぶり殺しだ。本当にやっていいのかよ」
いいわけあるかボケ。
「さあ、とっととスカートおろして股開け、ぶっこんでやる。最後に気持ちよくしてやる…」
「いぎゃーああああっ」
「あぎいぃぃぃぃっ」
ナクラの言葉は野太い悲鳴で遮られた。
聞くに堪えないし、状況は分かったからもういいや。
ちなみに男二人のケツには水で出来たドリルが今まさに土木工事の真っ最中。
ケツを抑えてのたうち回っている。
自分がやろうとしたことを味わってみるがいい。
男二人の手が離れ、俺が自由になった瞬間姉ちゃんが動いた。
ナクラの腕を取りひねり上げるようにねじってその勢いで投げ飛ばす。
姉ちゃんは冒険者修業で戦闘訓練は受けているのだ。
このぐらい軽い軽い。
投げた拍子にメキッと音がしたらからたぶん腕壊れたよね。
そのまま外に投げ捨てられるナクラ。だが俺はこの程度じゃ許さないのだ。
『水爆弾発射』
水芸の一つだ。水の塊を撃ちだすものだが、水芸というのは水の動きと状態を制御するものだ。
水の球全体を気化する状態に持て行くのは難しくない。
そして水は気化すれば一気に膨らむ。
水の球はナクラのきったない(たぶん)股間に向かって、そして至近距離で水蒸気爆発を起こした。小さい球だから死にはすまい。
ズドーン!
ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ。
だが大ダメージだ。
ケツを彫られた手下二人が内またで駆け寄り、ナクラを抱えて退場する。
「内股よれよれ三兄弟」
「ぷっ」
姉ちゃんが噴き出した。
だけどちょっと騒ぎすぎたかな。
村の連中が集まってきてしまった。
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