1-4 すごいことに気が付いた。なんか話しかけられた。
1-4 すごいことに気が付いた。なんか話しかけられた。
一歳児の日々はおおむね平和である。
惜しむらくは食事か。離乳食なども始まったがよくつぶした野菜のシチューのようなもので…あまり美味いものではなかった。
だがさらに半年が過ぎたころにはそれも改善された。
食事は普通のものも出てくるようになったのだ。ちょっとおいしくなった。
惜しむらくは味付けが塩メインで、あとはハーブで少しバリエーションを作るぐらいであることか。
この世界は食文化はあまり発達していないのかもしれない。
まあここがど田舎で物が入ってこないだけという可能性もあるのだが。
さて、一歳半になると生活スタイルが少し変わった。
俺は姉ちゃんと寝るようになり、母親とは床が別になった。
幸いなことにここには布団があった。
しっかりした布の袋にワタを敷き詰めた煎餅だがちゃんとしたやつだ。
今までは母親に抱かれて眠っていたのだが、授乳も減って、一緒に寝る必要がなくなったからだろう。
母親は赤ん坊を抱くよりも、父親に抱かれる方がよいと気づいたらしい。
うん、同じ部屋なので一目瞭然なのだ。
一応声を殺しているようだがこの二人ほんとに仲が良く、アンアンギシギシしているのでちょっとうるさい。
なんというか精神年齢が高くても肉体に性欲なんてものが全くないからうるさい以上の影響はなかったりする。
では俺はどうしているのかというと姉ちゃんと寝ている。裸で抱き合っている。
いや、別にエッチな意味ではなくてね(当たり前だ)、この世界、寝るときは裸なんだよ。みんな。
寝巻とかないの。
それに裸で身を寄せ合っていると温かくてね、いろいろ節約になる。
この辺りは日本のように温暖な地域のようなんだけど夜はちょっと冷えるのだ。
夏とかはいいんだけどね、それ以外はちょっと寒い。
でも大丈夫。子供が二人いればお互いに相手がアンカだったりするからね。
だから環境はいい。
困ったことというとトイレかな。
この世界。トイレがなんと家の外にあるんだよね。
まあ、昔ながらのぽっとん便所なので室内にあったらたまったものじゃないんだけど、子供にはつらい。
夜起きたってトイレになんか行けないよ。
下手に行ったらおっこっちゃうよ。
ものすごい恐怖感なんだ。
シッコはいいんだよシッコは。子供のやることということで昼間はそこらへんどこでもできる。
しかもこの世界パンツがない。
いや、あるか。あるけど子供は穿かない。
六歳の姉ちゃんもパンツは穿いてない。
まして一歳児においておや。
いつでもどこでも用がたせるのがいい。
もちろん姉ちゃんも。
子供だから恥じらいとかないよね。スカートの裾をまくると丸だしなのだ。
しかし俺を前において用を足すのはやめてほしいと切実に思う。
多分俺から目を離すのが心配なんだろうな。
過保護な姉である。
なので夜トイレをしたくなった時などは姉ちゃんを起こして、二人で真っ裸で家の前に行って用を足す。
全裸で連れしょん。恐るべし中世。
しかし家族の、姉弟のきずなはこうして深まっていくのだ。
ちなみだけど俺は夜ちゃんとトイレに目が覚める。
世界地図を描いたのは一度だけだ。
その一度でお灸をすえられた。
怒られたというのではなく、おねしょが直りますようにと本当にお灸するんだよ。意味あるのかな?
いや、その後ちゃんとトイレに目が覚めていることを考えるとちゃんと効果はあるのかもしれない。
そういえば世界地図を描いた時、まあ当然なんだけど姉ちゃんにかかってしまって…うーん、たぶん寝ぼけていたんだとおもんだけど、なんか姉ちゃんが恍惚としていたような…
いや、気のせいだよね。
そんな感じで俺は順調に成長している。
◆・◆・◆
さて、夜はそんな感じだが昼はどうだろうか?
家族は相変わらず畑仕事だが、最近は俺の放置が進んでいる。
水の精霊様が守ってくれるからカイトのことは心配ないな。という認識が広がってしまったのだ。
あれって俺がやっているんだから別に精霊様が守ってくれているわけじゃないんだよ。
ついでに水筒の水がいつまでたったも尽きないのも精霊様のおかげということになった。
まあこれはその方が納得いくのだろうけど、俺の気遣いがそこに生きていることをできれば知ってほしいのだ。
あっ、でもそのことは家族以外には秘密になっている。どうやらうちの親は聡明な人のようだ。
全て世は事もなし。
そんな日々が続いた。
するとどうなるか。
暇になるのだ。
うん、本当の子供なら何かしらこの中に楽しみを見出すのかもしれないが、中身が大人…でもないか、高校生だからな。
あんまりやることがないから昔から勉強したことのおさらいとかしちゃったよ。
足し算引き算…とか、全く問題ないね。掛け算割り算は…ちょっと難あり、九九を忘れかけてたな。おさらいしました。
こうしてみると結構忘れていることってあるよね。でも頭が柔軟なせいか思い出そうとすると思い出せる。
元素表とか。沸騰とか。気圧とか、そういえば気圧って地球と同じなのかな?
いゃー、結構覚えているもんだね。
俺ってば理数系で数学、科学、物理は大好きだったんだよ。
語学とか社会は壊滅だったけど。
国語は意外とよかったな。読書が好きだったから。
んで、ついでに脳みその話を思い出した。
確か脳みそも筋肉も基本的な性質は同じで、使えば使うほど性能が明かり、怠ければ怠けられるだけ怠けるようになる。
人間の体って全部そうなんだよね。エネルギー消費を抑えるためにぎりぎりまでなまけるの。
これは心臓や肺などの自律神経系ですらそうなのだ。
つまり勉強すれば頭はどんどん良くなるということ。
運動すればどんどん運動神経がよくなるということ。
これはチートだ。
俺はもらったスキルが【水芸】で今のところものすごく役に立つものだとは思う。こんな時代に水に困らないというのは何気にチートだ。
だがお脳と体を鍛えるということの意味を知るのもまぎれもなくチートである。
よし、俺の目標はこのスキルを極めることと自分のスペックをあげることだな。
「あーーーーーっ(よーし、やったるでー)」
『何をやるです?』
あれ? どこからだ?
『ココにいるです?』
足元だ。
足元を見たら、奇怪な動物が動いていた。
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