第2話「デートに誘う」
「奈々!」
校門前で見かけた奈々に私は声をかけた。
「どうしたの仁美、慌てて」
「デートの誘い方教えて!」
「わかりません」
「なんで!」
奈々はそれだけ言って私を無視して昇降口に行く。それに私も付いていく。
「そもそも。仁美。考えて」
「う、うん」
奈々は一つずつ指を立てて数えるようにして言う。
「ここ、女子校」
「うん」
「男いない」
「う、うん」
「私彼氏いたことない」
「う、う、うん」
「男と関わったことが少ない」
「う、う、う、うん」
「お分かり?」
そのお分かり? の圧力がすごいよ奈々。
でもそうだよね、女子校だもんね。出会いがある方が少ないんだもんね。
「そっか。ごめんね無理言って」
そう言うと奈々は焦るように言う。
「いや全然無理じゃないから。私はその気になれば彼氏なんて余裕でできるからね? 本当に。うん本当に。ただ作る気ないだけ」
「なら、デートの誘い方とかもわかる? 女子の方からの誘い方」
「そんなの考えればすぐわかる!」
「じゃあ一緒に考えてください!」
「任せろ!」
「ありがと!」
「ってことでみんなで会議します」
「「は、はぁ」」
昼休みの教室の端っこで行われた私のための会議に集まってくれたのは奈々、
「その七城って子と仁美はコンビニ店員と常連客って関係なんだよね? それでデート誘うのって厳しくない?」
最初に意見を出してくれたのは七海だった。
「私もそれは思うかな。難易度高すぎじゃないかな?」
それに賛成するように優里が言う。
やっぱり難しいよね。
「私も難易度高いと思うよ。でもね! これは仁美のためなの。みんなでもっと考えよう!」
「奈々…」
奈々が幼馴染でよかった、本当に良かったよ!
感動してると七海が言う。
「そういえばさ、その七城ってかっこいいんだよね?」
「私が見ても普通にかっこいいと思うから仁美からみたらもっとだよ」
「奈々がかっこいいって言うなら相当でしょ。七城って子は彼女いないの?」
七海が言った途端会議が静まり返りました。
私は頭真っ白になりました。
そうだ、大事なことを忘れてました。
彼女いないわけないよねえええええ。
「まず年齢は? 高校生? 大学生? 社会人?」
「仁美、どうなの?」
「あ、えっとたぶん大学生だと思うんだ。朝に入ってるし、高校生ではないと思う」
「なるほどね。じゃあ歳上か。仁美は歳上アリなの?」
私は少し考える。そして言う。
「七城くんなら、年上でも全然オッケーかな」
照れながら言うと3人の目線は冷たい目線になり、
「「「惚気やがって」」」
と同時に言った。
「ちょっと現実的なこと言うけど、仁美は七城くんのこと全くわからないんだよね」
優里に言われてギクッとなる。
「ま、まあ…」
「イケメンが性格悪いってのは少女漫画の王道だよ。気をつけないと喰われて捨てられよ」
「そ、そんなこと絶対しない人! だと、思います」
「はい、てことで難しいという結論でよろしいですかね?」
七海が言って奈々以外が賛成して、会議が終わった。
そして学校の帰り道。
学校帰るときは奈々と2人です。
「仁美、寄ってかないの? コンビニ」
「じゃあ覗くだけ」
私は中を覗き見てレジの方を見る。
「いなそう」
「そっか。私ははあの人優しい人だと思うよ」
「なんで!?」
いきなりの奈々の発言にびっくりしてしまった。
「昨日、いきなりきてレジ遅い新人みたいな子カバーしてあげてたじゃん。休憩あげたりとかさ」
「うんうん!」
「優しい人だとは思うよ?」
「だよね!」
私は嬉しかった。
私が初めて好きになった人を優しい人って言ってもらえるって嬉しいなあ。ちょっと日本語おかしくなっちゃったけど。
「ってことではいこれ」
「映画のチケットじゃん! しかもペアセット」
「今週の土日どちらかお暇な日ありますか? 映画を観に行く約束をしてた友人が用事で行けなくなっちゃったので一緒に行けたら行きたいです、的なの送れば? 今のは適当だから参考にはしないでね」
「うん! 奈々、これどうしたの? 買ったんだったらお金払うよ!」
「お母さんから福引券もらったの。それの3等だよ。だからお金は不要。幸せになってこい」
「うん!」
家に帰って早速文章作り開始!
なんて書こうかな?
「土日どちらか空いてますか。映画のチケット二枚余ってるので一緒に行けたら行きたいです。」
違うね。
それを消してまた考える。
「土日どちらか空いてますか?」
と打ったところで優里からラインが来た。返信しなくてはポチっ。
……あっ。
間違えて送信ボタンを押してしまった。
やってしまったあああ!
送信キャンセルできるけどやったら「何を打ったのこの子。怖い」なんて思われたくない! もういいやこれで!
やけくそになりながら優里に返信をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
18時半。
最初の2時間だけちゃんと授業に出て学校を一緒に抜け出した三木とラーメンを食ってる。
ごてごての特製豚骨醤油スープに油と汁が絡まる太麺、そしてチャーシューがたまらない。
大盛りにしたはずが、すぐに平らげてしまった。
三木はまだ食べているのでスマホをいじって待とう。
スマホを持った瞬間ラインが来た。
『土日どちらか空いてますか?』
え。
どういうことだこれは。
まあどうせ先輩のこと気になってるとかそんな感じの相談系だろうな。王道だな。
「どっちも空いてるよっと」
「誰とラインしてるの? 女か?」
「うっせ」
「え、お前も彼女できたのかよ」
「できてねえよフリーだわ」
彼女には『どっちも空いてるよ』と送った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『どっちも空いてるよ』
やったああああ!!!
うん!じゃあ土曜日!
早く会いたいしね!
「『じゃあ、土曜の昼13時に篠水駅で!』」
私は口に出しながら文を打った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「『おっけー!』っと」
俺が口に出しながらそう返信すると既読がつき、会話が終わった。
「七城さんよ。女のことなら俺に任せろ。なんでも話せ」
「お前童貞卒業したぐらいで調子乗るなよ」
「すみません」
ごちそうさまです。と店主に言ってから店を出る。
「じゃあな」
「明日学校でな」
三木と別れる。
電車に乗ってトーク画面を見つめる。
土曜日、楽しみだな。
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