コンビニ店員と常連客
自然 シュウ
第1話「常連客」
7月23日 月曜日 午前8時半。
俺こと
「ありがとうございました」
一礼をし店に客がいないことを確認して後ろにもたれかかる。
「眠い帰りたい」
独り言を呟きながら、タバコの在庫チェックをする。セッター補充しなきゃ。
下の棚からセッターのカートンを出し開けているといつもの制服のお客さんが来た。
「いらっしゃいませ」
今日1の笑顔を向けて言う。
彼女も俺を見て会釈をする。
その時に内巻きのショートカットのが揺れた。思わずドキッとしてしまった。
彼女は店内を見て回り、いつものサラダパスタとジュースを買う。
「399円です」
「ペルペルで」
バーコードを読み込み会計が終了する。
「ありがとうございました」
またも今日1の笑顔を向けて彼女に言う。彼女も「ありがとうございました」と笑顔を向けて店内を後にした。
彼女はうちのコンビニの常連客で顔見知りなだけだけど、かわいいから特別扱いをしている。
制服はここのコンビニからちょっと歩いたところにある女子校の子だろう。
「同い年かな。上かな。下かな」
そんな独り言を呟き、接客をしレジを打つ。
それ以降レジばっかりでつまらないから俺のことを話そう。
現在高校2年生の俺は三部生の定時制に通っている。
一部が朝からで二部は昼、三部は夜に通う。
俺は三部の夜に通っている。
だから朝バイトして昼に寝て夜に学校に通う生活を送っている。
最初は定時制と言うことを後悔したが、今はそうでもない。
こうして朝からお金を稼げて可愛い子を拝められるのだ。
学校には女子もいるけれど、お世辞にも可愛いとは言えない。それにうちの高校は色々問題を抱えた生徒が集まる学校である。
俺は小中勉強を怠けていたから定時制に行った普通の男子高校生である。
しばらく時間が経ち上がりの時間になった。
「お疲れ様です」
と全員に声をかけ電車に乗り家に帰る。
風呂に入ってすぐ寝る。目覚ましは16時15分にセットする。起きたらすぐ学校だ。
時間が経つのは早い。
目覚ましで起きてすぐ支度をした。
親が作ってくれたおにぎりをバックに入れて家を出て電車に乗る。
学校に着いたら4時間授業を受けて帰るだけだ。
廊下を歩いて教室を目指していた時だ。
「七城! 今期の傑作! わたしのパンツはお兄ちゃんにしか見せません! みたか!?」
「悪りぃ。見てねえ」
登校早々俺に話しかけてきたのは
「見てねえのかよ。じゃあいいや、またな!」
「おう」
俺と熊谷はクラスが違うため、お互い違う教室に入る。
「七城きた! お前今日は遅刻しないのな」
教室に入って俺に話しかけてきた金髪のこいつは
「なんでお前がここにいる」
「お前を待ってたのさ」
キメ顔でそう言う。殴りたい。
「なんか用か?」
「いや実はさ、咲が最近不機嫌でさ」
「また惚気か」
咲とは三木の彼女である。ちなみにこいつの彼女と俺は同じクラスだ。
「なんか最近不機嫌でさ。なんか探り入れてみてくれよ。「最近三木とはどう?」みたいなのでいいからさ」
めんどくせえ。
「じゃ! 頼んだぞ!」
言い終えて満足した三木は自分のクラスに帰って行った。
「ホームルーム始めるぞ」
担任の角田が出席をとり始める。
それが終わったら1時間目開始だ。
今日の時間割は数学2時間、英語2時間だ。
ホームルームが終わり俺の大っ嫌いな数学の時間がやってきた。
新しい問題が出てくる恐怖に怯えながら教科書を開く。
同時に隣の女子に声をかけられた。
「さっき三木と何話してた?」
「特に何も」
「そっか」
話しかけてきたのは先程話に出てきた三木の彼女、
「ただ、お前が最近冷たいって言ってたかな。なんかしちゃったかなって不安になってた」
「まじかー。なんもされてないんだけどね」
「じゃあなんで?」
俺は三山を見て聞く。
俺のクラスはただでさえ人数が少ないのに数学はハイレベルクラスとイージークラスに分かれる。そのため人が少ない。
聞かれる心配はないし先生はコソコソ話なら注意もしない人だ。ただしスマホはダメ。
「……実はですね」
「なに浮気した?」
足を蹴れた。痛い。
「そんなわけないでしょ。あんたの
「じゃあ、最近男として意識しすぎてドキドキしちゃう! もうハグやキスじゃ我慢できない! みたいな?」
「え、ビンゴ?」
三山は俯きながらコクコク頷いている。
「お前から誘惑すればイチコロだろ」
「できたら苦労しない」
おっしゃる通り。
「直接言えばいいじゃん」
「うるさい童貞」
「それは君の彼氏にも当てはまる言葉ですよ三山さん」
「はぁ恥ずかしい」
「もう高2だし、エッチも普通のカップルはするだろ」
ぶっちゃけ、こいつらがくっついたのは俺のおかげと言っても過言ではないのだ。
こいつらが両想いと知った時にくっつけてやろう大作戦を一人で実行し成し遂げたのだ。
それをネタバラシしたらこの二人にすごい感謝され何でもかんでも相談されるようになってしまった。
「とりあえず三木が今日うちに泊まることになってるから頑張ってみる」
「そうか。ファイト」
「ん」
相談が終わることには黒板は文字で埋め尽くされていた。
「やべ」
すぐさまノートを開き書き写す。三山のやつは寝始めた。
こいつ、イージークラスだからって舐めてるだろ。彼氏に言いつけてやる。
英語も終わり帰りのホームルームも終わったあと、ロビーの自販機で三木と飲み物を選ぶ。
今日は珍しく迷うな。
三木は買ったアイスココアを開けながら俺に聞く。
「どう? 何かわかった?」
んーと溜め、俺は言う。
「今日お前三山の家泊まるんだろ」
「うん、それが?」
「ゴムは用意しとけ。それが答えだ」
ビビビッと電撃の入ったような三木はすぐさま学校を出て行った。薬局かコンビニに行ったのだろう。
俺もアイスココア飲むか。
バックから財布を取り出す。
……おかしいな、財布がない。
「あれ? 三木知らない?」
後ろから来たのは三山だ。きっとここで三木に待つように言っていたのだろう。
「急にコンビニのチキン食いたくなったらしくて買い行ってるからごめんだけど待っててだとさ」
「そっか。あいつ痩せてるしなあしょうがないか」
嘘の伝達をし俺は学校を後にする。
頑張れよ。三木
多分財布はバイト先に忘れたのだろう。
明日朝勤あるならその時ついでに取ればいいと思い、シフトを確認すると明日は休みだった。
めんどくせえ、明日は三木とラーメン行く約束してたのに。
仕方ないので帰りにバイト先に寄ることにした。
電車に乗り、バイト先に向かう。
バイト先のコンビニに着くとすごい行列だった。
「めっちゃ混んでるじゃん」
思わず声が出てしまった。
「夕方はいないのかぁ」
聞き覚えのある声が聞こえた。
その声の主はショートカットで内巻きで制服の……。
心臓が強く動き始めた。
「残念だったねー」
その子の友達らしき人と話している。
話しかける勇気もないので裏に行き財布を取る。
また店内に戻ると列は全く減っていない。
レジを見ると新人の子とバイトの先輩の二人だった。
そりゃ大変だ、この人数二人じゃ無理ゲーだろ。もう1人はどうした。
もう一度裏に戻りシフト表を確認する。なるほど、休みなのか。
仕方ないと思い緑のコンビニフォームを着て店内に入る。
「いらっしゃいませ」
掛け声と同時にレジに向かう。
新人君の隣に行き「手伝うよ」と声をかけ袋詰めをする。
気のせいかもしれないけど、袋詰めをしてる時彼女と目があった気がした。
ある程度客が居なくなり、新人君は隣で疲れ果てている。
「疲れてるでしょ。10分休憩行ってきていいよ」
「ありがとうございます!」
彼はテクテクと裏に行った。
レジに自分の番号を打ち、客を待っていると彼女と彼女の友達が来た。
まずい、鼓動が。
「いらっしゃいませ」
全力の営業スマイルを作る。
「お預かりします」
「あとまんまるチキンください」
彼女の友達が言う。
「かしこまりました」
アルコールで手を消毒しチキンを袋に詰めていると二人の会話が聞こえた。
「悪くないじゃん。普通に顔いいしいい人そう」
「うるさいよ、聞こえちゃう」
ん? 誰のことを言ってるんだ?
周りを見渡すと客はおばさんしか居ない。
真隣を見ると後ろに寄っ掛かりぐたーとしてる先輩がいる。
先輩は普通に顔立ちがいいから先輩のことを言っているのかもしれない。
チキンをレジ袋に詰める。
「お会計変わりまして985円になります」
彼女の友達から1000を受け取りお釣りを渡した。
「ありがとうございました」
一例をすると、彼女はいつも以上に笑顔で「ありがとうございました」と返してきた。
彼女が店を出た後もしばらくドキドキが止まらなかった。
新人君が休憩から戻ってきた後、俺は着替えて駅に向かった。
先輩に「もう混まないと思うし帰っていいよ」と言われたからだ。
駅前に着くと俺はトンキーホーテに入った。
エスカレーターに乗り三階の文房具コーナーに行った。
シャー芯が無くなってきたのを思い出したのだ。
「これでいっかな」
シャー芯を選び、買って外に出るとクレープを食べている彼女を見かけた。
今日はなかなか運があるようだ。1日の間にこれだけ彼女と会えるなんて。
話しかける勇気がないので素通りをする。横通る時チラッと彼女の顔を見ると彼女もこちらを見た。
目があった途端、足が止まってしまった。
時が止まるような感覚だった。
彼女は友達との会話をやめ、俺に近づいて言う。
「七城さん、ですか?」
話しかけられたああああああああ!!
取り乱してしまった、心の中でよかった。
いやまず冷静になれ俺。なぜこの子は俺の名前を知っているのだ。
「えーと、どこで名前を」
「コンビニの制服についてるネームプレート? 見ました。顔写真付きの」
なるほどね。
「ああ、そう言うことね」
「はい、そーゆーことです!」
そこで会話が止まった。
えーと、この後何を話せばいいのだろうか。
もっと話したいし声聞きたいし顔見てたいけど話題ないんじゃ仕方ない。帰るか。
「じゃあ、俺はこれで。また来てね。うちのコンビニ」
と言って去ろうとした。
「ま、待ってください!」
足を止めて振り返るとスマホを握った彼女が顔を真っ赤にして言った。
「ライン交換してください!」
……どゆこと?
思考が止まると言うのはこう言うことを言うのだろうか。
なぜ俺のラインが欲しいのかがわからない。何も接点がないじゃないか。
あるとすればコンビニ店員と常連客って感じだけだ。
そこで一つわかったことがあった。
なるほど、先輩のラインが欲しいのか。
さっき「かっこいい」とか「聞こえちゃう」とか言ってたもんな。
納得した俺は言った。
「いいよ。交換しよっか」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
ちょっと理由は悲しいけど、可愛い子の恋の架け橋になれるのだ。
まあ先輩のラインを渡すだけだけどね。
いつも癒されてる分のお返しができるわけだ。
彼女のQRコードを読み取ると仁美と出てきた。
「私、
「七城悠人です。よろしくね」
「はい! よろしくです!」
ラインを交換した後、俺は電車に乗り家に帰った。
風呂から上がった後、スマホを開き彼女に「よろしくね」と送った。すぐに既読がついたことにびっくりした。
他の子と話してる最中に飛んできたのだろう。
『うん!よろしくね!七城さん!』と来たラインに既読をつけて、スマホを閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
七城さんが駅に行った後、私は家に帰り、湯船に浸かったままラインのトーク画面を見ていた。
まだ何もないトーク画面だけど、見てるだけでにやけてきちゃう。
私からなんか送ろうかな、と思って「よろしく」と打ってみる。
「ちがうなあ」
消して、「よろしくね♡」と打つ。
「これも違う!!」
「仁美! うるさいよ!」
「ご、ごめんなさい」
お母さんに怒られてしまった。
むー、と悩んでトーク画面を見ているとポン、と七城さんからラインが来た。
と言うことはすぐに既読をつけてしまったということ。
え、「既読早すぎ、キモ」とか思われないかな!? 大丈夫かな!?
と、とりあえず返信。
「うん!よろしくね!七城さん!」を送信!
すぐに既読がつき、会話が終わった。
大丈夫そうだね、よかった。
安心した私はお風呂から上がってベッドの上でずっと二件しか進んでないトーク画面を見つめていた。
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