Episode.7「私」

――私の小説発売記念イベントに、彼が現れた。


と、言っても、5歳の姿で、だけど…。


「優馬…?」


「うん」


「私の小説、読んだの?」


「うん」


かあああっ、と、私の頬が赤くなる。


だって、この小説には優馬に向けたメッセージ的なのも書いてたから!

もう優馬は現れないと思ってたから!

ちょー恥ずかしい!!


「美咲ちゃん!」

「夢、叶えたんだね」

「おめでとう!」


その口ぶりは、20年前…私たちが、(正真正銘の)5歳だった頃の優馬くんそのもの。


「美咲ちゃん、この小説のさ、一番心に響いたのがね」

「「私は彼に、生きる意味を教わった」ってところなんだけど…」


「ここに、落書きしてくれない?」


「サインじゃなくって?」


「うん」


私はそのページに、こう書いた。


「きっとキミは、新しい人生を描いていくと思う」

「自分なんて、誰も分からないんだから、生きるんでしょ?」

「ちゃんと、最期まで、生き抜きなさい」

「桜井美咲より」

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