Episode.5「私」

「キミ…美咲ちゃんは、夢、叶えられたかな?」


私は、なんて答えたらよいのだろう。

こんな風に、過去を思い出したことはなかった。


悩んでいると、メッセージが書かれた教科書のページがめくられ、

新たなメッセージが記入された。


「僕は知ってるよ。美咲ちゃんが、頑張ってたこと」

「もう、あの頃の夢が叶えられてるってこと」


さらにページがめくられる。


「美咲ちゃんは、昔から、優しくて強くて…」

「弱かった僕にとって、憧れだった」


さらにページがめくられる。


「幽霊になっちゃったし、もうキミに僕のことは見えてないのは知ってる」

「だから」


さらにページがめくられ、


『誕生日おめでとう、美咲ちゃん』

『幸せになってね?』


彼の声が聞こえた。


私は、泣き崩れた。


「優しくて強いお姉さんも、泣きたいときは泣いてよねっ」


新しく書かれたその文章に、私は返事を書いた。


「わかってるわよ。だから―――」

「あんたも幸せになりなさい」

「優馬くん」

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