Episode.4「僕」

今からさかのぼること15年前。


幼稚園で、僕らは出会った。


彼女は、正義感が強く、弱い者いじめを見逃さない、優しい女の子だった。


彼女の誕生日。

それは、七夕だった。


将来の夢を、短冊に書くらしいので、彼女に聞いた。


「美咲ちゃん、将来の夢、なんて書いた?」


彼女は、


「私は、優しくて強い、お姉さん」


そう言った。


きっと…いや、必ず彼女は、その夢を叶える。


そう思っていた。


けれど、僕が幽霊になって再会した彼女は、自分を見失っていた。


なぜかは知らなかったが、放っておけなかった。


僕は、なんとかあの頃の彼女に戻るよう、いろんな言葉を掛けた。


彼女は、「家に帰る」決断をして、日本に帰った。


僕も帰ったけれど、もう彼女には僕のことは見えていないだろう。


だから、いたずらをした。


彼女の中学校の道徳の教科書に、こう書いた。


「キミ…美咲ちゃんは、夢、叶えられたかな?」


彼女はもう、叶えていると、

知りながら。

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