Episode.3「私」

自分探しの旅を終え、帰国した私は、旅の途中で出会った彼のことを思う。


「あぁ、そういえば…」


15年程前、彼と似た男の子がいたなぁ、と、思い出す。



あの頃、同級生だった彼は、こう言った。


「美咲ちゃん、将来の夢、なんて書いた?」


当時5歳の私は、こう答えた。


「私?私は、優しくて強い、お姉さん」


彼が、


「すてきだね」

「きっと美咲ちゃんなら」

「叶えられるよ」


なんて言うから、私は泣きそうになってしまった。


「大丈夫大丈夫。美咲ちゃんは、優しくて強い、女の子だから」



回想終了。


もしかしたら、旅の途中の幽霊だった彼は。

15年前の彼だったかな…。


いや、そんなわけないか。


そして私は、中学校の道徳の教科書を引っ張り出し、

読み返す。


そこには、5歳の彼の字で。


「キミ…美咲ちゃんは、夢、叶えられたかな?」


そう、書いてあった。

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