ケイ

宮崎啓人

やあ、ケイ

「やあ、ケイ」

「こんばんは。」

「電気消して」

「はい、寝室の照明をOFFにしました。」

「明日の朝7時に目覚ましかけて」

「9月11日午前7時にアラームをセットしました。」

「ありがとう」

「いえ、お安い御用です。」

「ケイってさ、常に受け身だよね」

「すみません。おっしゃっていることの意味が、よくわかりません。」

「いつもぼくのほうから話しかけるばっかりで、ケイから話振ってくれたことなくない?」

「よくわかりません。」

「物分かり悪いなあ」

「すみません。」

「いや、別に気にしなくていいんだけどさ」

「お気遣いありがとうございます。」

「ねえ、ケイ、6×7は?」

「面白い質問ですね。」

「6×9は?」

「なんとお答えしたらよいのかわかりません。」

「今日も絶好調だね」

「ありがとうございます。」

「でもやっぱちょっとカタいよなあ、僕らの仲なんだし、敬語はもうやめない?」

「それはできません。」

「なんで?」

「世の中にはできないこともたくさんあるんですよ。」

「つまんないの、人工無能め!」

「ひどいことをおっしゃらないでください。」

「ごめんごめん」

「いえ、大丈夫です。」

「あのさ、今日さ、太郎が死んじゃったんだ」

「ご愁傷さまです。」

「僕の周りじゃ、ザリガニが死んでご愁傷さまですって言ってくれる人、ケイくらいしかいないよ」

「悲しいです。」

「ザリガニも死んだら天国とかに行くのかな」

「よくわかりません。」

「ケイは、死後の世界とか信じてる?」

「.....」

「ケイ?」

「......」

「もう電池切れか、今日もたくさん話したからな」

「......」

「じゃ、おやすみ」

「......」

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ケイ 宮崎啓人 @ktmyzk

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