第38話 すべては愛する人のために!?
「アッチもコッチも順調でやがるのです♪」
右目に
「〝門〟は準備オッケー、〝
炎上する〝草薙の里〟を眼下に、広大な地下空洞の天井近くに浮かびつつ、
「てなワケで、さっさと出てきやがるがイイのです〝ムッツリ刀〟……いや……」
ナマイキそうな笑みを、不意に神々しい微笑に変え……
「この世に〝
◆
「どうか
「同じ〝里〟の者の手で
そこは紫の空の下、見渡す限りの水面から無数の水柱が高々と立ち昇る世界。
「〝妹の
水面に立つ三つ首の黒い竜が、水柱の1本の
「御覚悟をと津流城さんが申し上げたのでございます」
だが紫の竜が話すと周囲の水柱が蛇のようにうねり、火炎弾を
「その声……
大きな
「まさか……お前も人の体を捨てたのか……いや……そもそも、なぜ生きている……〝
「はい。〝瀬織津〟を
紫の竜が淡々と、
「なれど、幸いにも医術に関する異能をお持ちの方が、次期当主のお
「津流城の協力だと……?」
三つ首からもれた疑問に紫の竜はうなずき、
「左様にございます。大半の血を失い
瞳を喜びに輝かせ、
「よって今は、生き
「た…魂だけだと……そんなことが………」
「〝幽体離脱〟なる異能を御存知でございますか?」
一転、紫の竜は
「
冷厳な瞳で水柱の上から水面の黒い竜を見おろし、
「この能力こそが、〝瀬織津の巫女〟に求められる条件だったのでございますよ」
雰囲気に、どこか
「そう……〝巫女〟は〝瀬織津〟の
かすかな
「あなたの母は……我が妹は、この力を持ち合わせなかったが
物悲しさの奥に、
「母上を
「あれほどの目に
かすかな驚きを
「愚弄など
優しい
「なればこそ、〝巫女〟になれなかったことは
「なんだと……?」
黒い竜が声を
「〝瀬織津〟と一体となった今、この身に残る歴代の〝瀬織津の巫女〟の思いが伝わってくるのでございます………あまりにも……あまりにも深い〝絶望〟と〝狂気〟、そして〝
瞳にも
「無理も無いのでございます。かような異形の体に魂を移され残る生涯を
黒い竜から息をのむ気配がした。
「そう……〝儀式〟で多くの血を捧げ本来の体を死に絶えさせた〝巫女〟は、魂を移した〝瀬織津〟の体を第二の体として生涯を
先人を
「とは申せ、現代であれば輸血によって失った血を
重い息を吐くように、
「
どこか運命を呪うような声がもれた……
「なれど、津流城さんの血が身共と一致するものだったのでございます。それを知ったとき身共は、改めて希望と共に〝運命〟を感じたのでございますよ♪」
一転、明るく
「身共と津流城さんは、生涯を共に歩む〝運命〟の
「……そのために、〝里〟や同胞を犠牲にするのか……!?」
「そうは申されても、あなたや
責めるでもなく自然な声で、
「〝里〟のために身共を犠牲にしようとしたあなた方と、津流城さんのために〝里〟を犠牲にしようとした身共……その2つに、何の違いがあるのでございましょう」
「さ…〝里〟に住む多くの民を救うためだ! たった1人の犠牲で多くの者が助かるんなら……仕方ないだろう!!」
後ろめたさの
「それについては見解の違いがあるのでございますね。生き残るべきは『より多くの者』か、『より優秀な者』か……」
「優秀だと……? まるで津流城ひとりが、〝里〟の全員より優秀だと言ってるみたいだぞ………」
「
紫の竜は弾む声で応えると周りを見渡しつつ、
「〝異元領域〟……この亜空間はトロニック人でさえ作成が困難な、空間操作能力の奥義とも呼ぶべき技なのでございます。地球の民でこれを創り出せる者は、片手の指に満たぬとか」
黒い竜も思わず周りを見渡してしまった。
「なれば、この奥義を
「何を申されるのでつかまつりまする」
その時、津流城が深い感謝と情愛を
「某は
「今だけのことにございます。津流城さんならば遠からず
少年と紫の竜の間に、
「ふざけるなああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
黒い竜が絶叫し、その巨体を中心に水面がみるみる石になっていく。
「こ…これは
〝石化〟は水面から立ち昇る無数の水柱にも及び、紫の竜が頂に立つ水柱も根元から石となっていき──
「まさか眠っていた異能が目覚めたと……!?」
紫の竜とその背に立つ総髪の少年は、水柱もろとも全身が石となった………
◆
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
燃え盛る大地で鬼が叫んでいる。
「おのれ……沙久夜あああああああああああああああああああああああああっ!!」
それは刀のような
「……〝クズ参謀〟め、加減を知らぬのか………」
対して
「……否、これは妹への姉の最後の
「餞……? 何のことにござりまするか……!?」
「
炎の鬼から息をのむ気配がした……直後、
「誰も彼も身共を
大地を覆う炎が爆発的に燃え盛り、うねりながら
「苦しそうらから~楽にしてあげるのれすよ~♪」
「
「風は吹き消す。断末魔の
対して遠巻きに鬼を囲んでいた
「
だが炎の竜巻が攻撃を
ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
しかし巨大な異形の四足獣が6つの口から咆哮し、衝撃波で竜巻を散らした。が、鬼は消された分の竜巻を再び発生させ、
「姉よりの餞、
「……良かろう」
「ならば……最後の〝火遊び〟に付き
巨大な異形の四足獣と共に、威厳あふれる咆哮を上げた………
◆
「なんだ……これは……!?」
石の柱が無数にそそり立つ石の大地で、黒い竜が呆然とする。
「なんで、いきなり石に……もしかして、本当に俺の力が目覚めたのか……?」
3つの首で周りを見回す黒い竜……しかし、
「
黒い竜の前に、月のような
「沙久夜……まさか、それが幽体離脱の……体と魂を分離させる技なのか……!?」
半透明の姿で宙に浮かぶ女に黒い竜が声を
「あれが俺の力じゃないなら、やっぱり……」
「はい。この十数年に渡り身共の身を石にしていた〝
魂だけの半透明の体を、やはり半透明の
「ミズシロ財団の方と接触したり〝里〟の様子を見る際にも、石とした体からこのように魂を分離させていたのでございますよ。ああ……」
何かに気づいたように石化した少年を見あげ、
「
「……ふざけるな!!」
気配り上手なイイ女を竜は逆上して
「何が父上の術だ! 津流城をだまして、津流城まで石にして、それも全て津流城のためだって言うのか!?」
「財団にて身共が
想い人を
「……どうやら、湖乃羽さんが最終段階に入ったようなのでございます」
「は…母上に何かしたのか!?」
「最後の
「あなたの複製体を造っていた
邪気の無い笑みを深め、
「今、あなたを始め湖乃羽さんや
「なんだと……何のために、そんなことを……!?」
「あなた方は〝
「明日を、未来を創る〝浄化〟を
竜が息をのむと、その背の欠片へ女は神秘的な瞳を向け、
「〝瀬織津〟には〝
声を一層
「似ているでございましょう……津流城さんと火焚凪さんの関係に……同じ日、同じ時に生まれながら、水と火という対極の性質を持つ双子に……」
「な…何の、話だ……?」
「世界に
瞳の神秘的な光を強め、
「
全身から
「新たに地上を〝浄化〟する時が来たのでございます。輝かしい未来を……新たな世界を創るため、穢れた地上を〝浄化〟する時が……!」
「あ…新たな世界だと……それは………」
「
「………………は?」
対して黒い竜は頭を真っ白にするも、女は清淑な笑みをさらに輝かせ、
「そのためにも、〝草薙の里〟には歴史に幕を下ろしていただくのでございますよ」
「……ふ…ふざけるな……そんなことのために……故郷を……同胞を……
我に返った竜が怒りと……恐怖に震える声をもらす……が、
「先ほども申したでございましょう。どのみち〝草薙の里〟は命数が尽きていると。ならば新たな世界の
依然、毛ほどの邪気も悪意も無い笑みで、
「何より身共は、己の
魂だけの身を誇りに震わせ、
「我が生涯の意義である、
目も
「愛する夫に尽くすという、妻の勤めなのでございます♡」
宙に浮いたまま、身を包む白無垢を優雅にひらめかせた………
「……馬鹿な………」
一方、竜も巨体を震わせつつ、
「愛する男のために……愛する男を
石化した水柱の上の石化した少年を見あげ、
「愛する男の他は……全てを
「そんなものが……お前の愛なのか……!?」
「
まぶしい笑みで一層竜をあとずらせつつ、
「津流城さんは先日17歳となられたばかりなれば、今は〝器〟の大部分を眠らせているのでございます。
うっとりして声に熱を
「本来の津流城さんの〝器〟は、身共なぞ遠く及ばぬ大きなものなのでございます。そして遠からず、その〝器〟は十全に目覚められることでございましょう」
興奮を抑えるように自らを抱きしめ、
「その時には身共こそが津流城さんに手綱を握られ、津流城さんだけのものにされ、一挙手一投足を思うままにされ、全てを征服され……身も心も全てを、津流城さんに〝支配〟されてしまうのでございます……♡」
儚げな美貌を
「それこそが……身共の〝究極の愛〟なのでございます……♡」
魂だけの身から、
「……………………」
片や竜は
この女の行動に、悪気は
そして……この女の世界には、〝愛する男〟と〝その他〟しかないのだと………
「あ…悪魔……いや……魔女め……!!」
「津流城さんのためならば、喜んで悪魔にも魔女にもなるのでございますよ♪」
世に降臨した女神は、世を滅ぼす魔神だった。
「勿論、一番なりたいのは津流城さんの妻なのでございますが──おや?」
何かに気づいた沙久夜が振り返って上を見る……と、
ビキィッ
石化している津流城と屋形を胴体とする竜の表面に、
「さすがは津流城さん、自力で身共の術を破ろうとしているのでございますね。それでこそ身共の
自分を誇るように笑みをほころばせ、
「ならば、太華瑠さんも最後のお役目を果たす時なのでございます」
「くっ……お前の野心の……いや、妄想のために倒されろと言うのか……!?」
黒い竜が3つの首から悔しさと
先ほどの攻防で、自分は津流城と沙久夜に勝てないと察していたからだ。
このまま津流城が自由の身となれば………
「くそぉ……!」
このまま自分は、何も成せぬまま死ぬのか。
事実から目を
人の身を捨てたことさえ、
全ては手遅れだったのか。
だとしたら……自分は、何のために生まれてきたのか………
「………………………………」
三つ首の黒い竜は無念に震える………が、
「くそがああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
直後、背の欠片を
「不覚にございます!!」
半透明の女が消えた。竜の体に魂を戻して石化を解く気なのだろう。が、一瞬早く石のままの少年に襲いかかる黒い竜――を、
「ぐおあっ!?」
水流は石化している少年の亀裂から撃ち出されたものだった……刹那、
バリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!
見渡す限りの水面と無数の水柱を覆っていた石が、黒い竜の紫の欠片ともども砕け散った。同時に水柱の上で石化していた少年と紫の竜も元に戻る。
「く…くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
直後、水流で迎撃された黒い竜が盛大な
「津流城さん、彼はまだ……」
「
だが勝利に見える光景を前に、水柱の上の屋形を胴体にした紫の竜と、屋形の屋根に立つ少年は緊張を高めていく……と、
「む……!」
津流城の鋭い視線の先で、見渡す限りの水面が黒く染まっていき……
ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
無数の水柱が紫の竜が乗るもの以外破裂し、中から額に紫の欠片の破片を付けた
「欠片に残っていた〝瀬織津〟の力を暴走させたのでございますか!?」
見渡す限りの黒い水面に、巨大な水柱に替わり巨大な黒い竜の首が無数そそり立っている。そして……
〔くたばれえええええええええええええええええええええええええええええっ!!〕
唯一残った水柱の上の紫の竜と少年へ、黒い竜の首が一斉に襲いかかった………
◆
「
炎の竜巻が乱立する燃え盛る大地で、刀のような
「
鬼は100メートルを超える巨体を一層激しく燃え上がらせ、
「かの姉も
燃え盛る巨体の前に人面の
「愚かな同胞を
巨大な異形の四足獣、空を駆ける
「
だが鬼の啖呵をハクハトウは
「Zクラスに身を置く者らは、我らが〝王〟に仕える〝個々〟であり〝同胞〟などではないのじゃ」
燃え盛る大地で汗ひとつ無く、
「汝の姉も
周りの少女たちが
「く…下らぬ
炎の鬼が息巻くや、その胸に紫の欠片が浮かび、大地に乱立する炎の竜巻が勢いを増す……さらに、
「その、通りだ……!」
大地の炎を突き破り、でっぷり太った上半身を硬い外皮で覆い、下半身に虫のような6本の
「
「
10を超える目をギョロギョロ
「仕込みは
怪物たちの欠片に嘆息したハクハトウが自分が乗る四足獣をジャンプさせ、飛来した10メートル近い鉄球を避けた。
「まだ
四足獣がいた場所にめり込む鉄球を
「この星では『ゾンビ』と申すのじゃったか……素体は異星の者のようじゃが」
「ぐ…ははは……闘技場でも、
視線は
「死体ノ・処理……イコール……
倒れていく巨人を、電撃をまといつつヒザを抱えて宙に浮く少女が無表情に見る。
倒れた巨人は燃え盛る大地の業火に焼かれ、左右の義手もドロドロに溶けていく。
「異星より流れ着きし者よ、
どこか同情的な瞳を巨人の死体に向けるハクハトウだったが、義手が溶けた金属が死体を包む様子に眉をひそめた。
「ぐ…ははは……その程度で、終わると思うなよ………」
自らもゾンビの弥麻杜が不気味に笑むと同時、巨人を包んだ金属は何かの形を成していき……
「もしかして~クララの〝金〟なのれすか~?」
見覚えのある金属の変化に他の少女たちも眉をひそめる……と、金属は人の体に
ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「だっぜええええええええええええいっ!!」
が、炎を突っ切って現れた
「まだ暴れ足りねえんだぜい!! ……あん?」
豪快に笑うマウジャドだったが、スティックが牛頭人の胸から離れないことに気づき目元を歪める。スティックの先端は牛頭人の胸にめり込み、銅色の体内に少しずつ引き込まれていく……直後、
「ぐおおっ!?」
牛頭人の胸がクリオネの口のように大きく開き、マウジャドに食らいついて銅色の体内に
「風は斬り裂く。海賊もろとも
だが空を駆ける一角獣に乗るペンテシレイアが
「行くのでござりまする〝
しかし炎の鬼の指示で人面の八岐大蛇が牛頭人の前に出て、強烈なカマイタチを自身の身で受け止めた。結果、八岐大蛇は
「ぐ…ははは……目にもの、見せてやるぞ
弥麻杜が不気味に笑いつつ紫の欠片を輝かせると、八岐大蛇の肉片は
キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
〝首〟は長い舌と奇声を出しつつ、顔の周りの巨大なヘビを伸ばし空を駆ける一角獣を襲わせる。
「風は苦もなく吹き抜ける。
だが一角獣は軽やかに空を駆けてヘビを避け、騎乗する少女も戦斧から
「風は不快に吹き
しかし、いくら切断してもヘビはすぐに再生し一角獣に襲いかかってくる。少女は
「風は流星と──むっ!?」
不意に一角獣の動きが止まり視線を下げると、切断された巨大なヘビが愛馬の後ろ足に絡みついていた。切断されたヘビが独自に動き、気配を消して死角から忍び寄ってきたのだ。さらに──
「ぬおっ!?」
百を超える他の切断されたヘビも一角獣に群がり、絡み合いつつ馬体と少女を包み込んで巨大な球を空中に形成し、
「ぐ…ははは……偉大なる、我が力……思い知るが、いい………」
弥麻杜が再び紫の欠片を光らせると、ヘビの絡み合った球は
「いいザマだ、
「ぎゃあああああああ……!」
だが多数のレーザービームが降って再び分泌腺を破壊し、再び自分の溶解液を浴びた弥麻杜が苦悶する。
「ぐぅぅ……地球軍の、飼い
「我、任務により内通者を処分するなり」
苦痛に顔を歪めつつ弥麻杜が見あげると、手足に大型の戦闘ユニットをつけて空に浮く少女……エスティリトゥが両腕のユニットから最大出力のビームを発射した。
「ぐおお……!」
弥麻杜が紫の欠片を光らせ、石の壁を大地から生やしてビームを受け止める。だが強烈なビームを浴びる石壁は、悲鳴を上げるように光る紫の欠片ともどもヒビが走り──
バリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!
石壁と紫の欠片が砕け散り、ビームが弥麻杜の腹に大きな
「ぐ…おぁぁ………」
「ま…まだ、だ……」
死相も
「言った、はずだ……」
無機質な顔の少女が空から見おろす先で、
「貴様らに……
頭が多数の
「何を、引き
膨らんだ頭が風船のように破裂し、巨体の首の位置に開いた穴から
「!?」
無機質な顔を
蟻と言っても、その大きさは1匹1匹が1メートルを超え、宙を舞っていた砂粒のような紫の破片を額に付けて光らせていた。
「我、
向かってくる大群へビームを連射するエスティリトゥだが、大群はビームが飛んで来た位置に穴を開け被害を避ける。その動きは訓練された軍隊、あるいは……
〔処分は貴様だ飼い狗め!!〕
「我、内通者の生存を認識せり」
〔そうだ! 今やこの大群すべてがワシなのだ!!〕
羽蟻の大群は1つの意識を共有するように一斉に声を発し、1つの生き物のように一糸みだれぬ動きで万を超す口から
「!!」
エスティリトゥは矢のように飛び溶解液の猛雨を
「!?」
息をのむエスティリトゥ……だったが何かに気づき上を見る。と、頭上を飛ぶ5センチほどの蟻が溶解液を吐き、エスティリトゥもビームを撃って蟻と溶解液を焼き払う……が、飛び散った溶解液が一滴、少女の左の
「う……あぁぁ……!」
顔の左半分から白煙を上げてエスティリトゥが苦悶し、動きを止めたその身を大群は素早く球状に包囲すると、
〔溶けて無くなれ飼い狗め!!〕
万を超す羽蟻が球の中心にいる少女へ溶解液を吐いた。
「我、害虫を
直後、少女を起点に空で大爆発が起こり、蟻と溶解液が炎に
〔……自滅を覚悟で、装備の燃料を暴発させおったのか………〕
幸運にも炎の無い場所に落下した少女のそばに、1匹の羽蟻が飛んできて
〔……
「……あ……うぅ………」
納得する蟻の声に、大地に倒れる少女は顔の無事な右半分をかすかに歪めた。
〔まあ良い。何にせよ……
〔ワシも手傷を負ったが、貴様ほどではないぞ〕
倒れたまま動けない少女に対し、羽蟻も空の爆発で多くが焼かれたものの500近い数が生き残っていた。そして……
〔最後に勝つのは……〝草薙の里〟だ〕
少女へ溶解液を吐きかけようと、羽蟻たちは牙のような
「さすが
同時に、羽蟻から離れた所で炎の鬼が歓喜する。
「やはり身共は間違っていなかったのでござりまする!」
鬼が
「当初の予定と
鬼の前には巨大な異形の四足獣、
「なれば
牛頭人とメデューサの首も少女たちの左右それぞれに現れ、
「身共の
3体の巨大な〝異形〟に囲まれた少女たちに……
「身共の〝世界征服〟を!!」
牛頭人、メデューサの首、そして多数の炎の竜巻が襲いかかった………
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