第33話 炎上! 草薙の里!!
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ
大きな円形闘技場が割れるような熱狂に
〔さあ本日のメインイベント! グランドチャンピオンマッチの始まりだあ!!〕
そこに興奮したアナウンスが響き渡る……と、歓声が薄れ観客席がざわめき出し、
「いきなりメインイベントだと?」
「前座の試合は無いのか?」
「なんでも、メインイベントに出る以外の闘士がいなくなっちまったそうだぞ」
「いなくなったって、なんだよ?」
「闘士の控え室がブッ壊れて、闘士がみんな死んじまったらしい……」
「噂の幽霊に取り殺されたって話も聞いたぞ………」
急速に冷めていく観客にアナウンサーは
〔ゆ…勇気ある挑戦者! 出てこいやあ!!〕
〔かつて南極海を荒らし回った伝説の海賊! その名も〝
波打つ
「だっぜえええええええええええええええいっ!!」
アイスホッケーのスティックを高々と
身長190センチを超える黒く
その胸には
〔そしてえ! 我らがグランドチャンピオン出てこいやあ!!〕
試合場をかこむ壁のうち、マウジャドの向かい側の一部が開き……
〔300戦無敗の最強チャンピオン! その名は〝
身長20メートルを超える、虫のような異星人が現れた。
6本の
背には無数のトゲが生えた
「ゲッゲッゲッ、オマエが今日の挑戦者か。そんなチビっこい体でオレ様と
「ガハハ、虫ケラに虫ケラって言われたんだぜい♪」
自分の10倍以上の巨体を見あげたマウジャドが、ガチンガチンとサメのような歯を打ち鳴らしつつ
「なぁに、害虫退治は海賊船でも大事な仕事でやがるからな。キッチリ
「……虫ケラがあああああああああああああああああああああああああっ!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
狂おしい悲鳴が闘技場に
「ガハハハハ! 虫だってのに
「ギ…ギザマァァ……ブッ殺してやるあああああああああああああああああっ!!」
バギシームの肢を砕いたスティックを振るいつつ豪快に笑うマウジャドに、複眼を真っ赤にした巨人が残る3本の肢の武器で襲いかかる――
ドバアアンッ!!
寸前、両者の間の地面が爆発するように砕け、大量の
〔お~っと! これは予想外の乱入だ~~~~~っ!!〕
ほどなく砂煙が晴れると、身長20メートル近い、
「ボー・ジックだったか……負け犬が何の用だぜい?」
「何の用だあ? 決まってんだろう………」
先刻の試合でマウジャドに敗れた対戦相手が、マウジャドに破壊されたはずの機械の義手に力を込め……
「テメエをすり潰しに来たんだぜえええええええええええええええええええっ!!」
憎悪に目を血走らせつつ、鎖につないだ10メートル近い鉄球をマウジャドへ振り下ろす。が、マウジャドは素早く避け、鉄球は地面を砕き50メートル近いクレーターを作った。直後、バギシームもボー・ジックに襲いかかり、
「ゲゲゲッ、でしゃばんじゃ──」
「ひっこんでろ虫ケラあっ!!」
「グゲッ!?」
振り回される鉄球を武器で跳ね返そうとしたバギシームが、逆に吹き飛ばされ試合場をかこむ壁に激突した。
「ゲゲ……この、チカラは………」
今までは余裕で跳ね返していた一撃に吹き飛ばされ、グランドチャンピオンが呆然とする。同時にマウジャドは険しい視線をボー・ジックの義手へ向け、
「その腕……さっきより強くなってるんだぜい?」
「驚くのは早いぜえっ!!」
優越感に顔を歪めるボー・ジックが、破壊された物と形は同じだが色が金色に変わった義手の
「〝
クラスメイトの技に似た攻撃に目を
〔ボ…ボー・ジック! 観客への攻撃は反則だぞ! ペナルティだ!!〕
「ぐおああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
うわずったアナウンスの声が響くと、ボー・ジックの金属の首輪から強烈な電流が流れ20メートル近い巨体が倒れる……が、
「ぐおお……ちくしょう、めぇ……!」
ボー・ジックは強化された義手で首輪をつかみ……
「ざけんじゃ……ねえええええええええええええええええええええええええっ!!」
首輪を引きちぎり自由の身となった──直後、
〔ぎゃわっ!?〕
「ぐへへへへ! いい気味だぜ!!」
アナウンス席を光線で爆散させたボー・ジックが狂ったように笑む。次いでマウジャドを
「次はテメエの番だぜえっ!!」
左右の義手が膜のように広がり巨体を包み、何かの形を成していく。
「まさか……〝暗転〟なんだぜい!?」
クラスメイトの技に似た変化に息をのむマウジャドの前で、ボー・ジックを包んだ金属の膜が固まっていき………頭に
「さあ! 〝
◆
「先ほど、南米で事件があった」
だだっ広い和室の
「南米で……でござりまするか」
上座のすぐ前で眉をひそめるのは、弥麻杜の側室、
「うむ、4つの州が謎の爆発で
「なんと……!」
「その州の中に、今回の協力者ネブリーナ・テクノロジーが本拠を置く州もある」
「……それでは!?」
「ああ、ミズシロ財団の
弥麻杜は
「こうなった以上、
「お…お待ち下さい……〝儀式〟も明日に行う前提で準備をしているのでござりまする……それに……」
「それに、なんだ!?」
弥麻杜の
「はい……〝儀式〟に必要な
消え入りそうな声で、
「先ほどから、その術式が使えなくなっているのでござりまする……どうやら、何者かが術式を上書きして、操作権を奪ったようで………」
「何者かだと……
「で…ですので……代わりになる呪力の源が無いと、〝儀式〟を行うことは………」
「ふざけるな! あれだけの力の代わりなど、あるわけないだろう!!」
「……いや、待て……いざとなれば……」
妙案を思いついたように
「……いや、だが……いくら〝里〟のためとはいえ……いや、〝里〟のため、だからこそ………」
悪魔との取り引きに
「……ええい、こうなった以上は
決断した弥麻杜が暗い微笑を浮かべた時、
「
弥麻杜が
「お…お助けください! 太華瑠様が…太華瑠様が……ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
折り重なって倒れていた男たちが逃げまどう後から、丸々と太った体に白い
「取り込んでいる最中だ、あとにしろ、太華瑠……ん?」
部屋の入り口に立つ息子に
「お前……右腕が……」
火焚凪に斬り落とされた右腕が息子にあることに気づき、弥麻杜は
「チチ、ウエ……ハハ、ウエェェ………」
息子は
「チチウエエエエエエエエエエハハウエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
けたたましく叫びつつ、その身が長着を引き裂いて
「太華瑠!?」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
目を
ザバアアアアアアアアアアアッ!!
猛烈な水流が〝怪物〟を襲い、窓の
その様子に、弥麻杜は冷や汗しつつ水流を放った側室を見て、
「な…何なんだ、今の化け物は……!?」
「それは……」
「クローンの
湖乃羽が
「七里塚の……!」
「ふふ、屋形のあちこちでクローンの群れが暴れとる――おんや?」
少女──
「
直後、湖乃羽が
その光景に
「……クローンだの暴走だの、どういうことだ?」
「うちより詳しい
「……!?」
葛葉に目を向けられた湖乃羽が一瞬震え、弥麻杜も
「ま…
湖乃羽が葛葉を強く
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
多数の本物の竜巻が湖に降りそそぎ、竜巻のような水流をすべて消し散らし湖にそそり立った。
「風は苦もなく吹き散らす。
その竜巻の1つの
「財団の
弥麻杜は竜巻の上の少女に叫んでから葛葉を見やり、
「何が目的だ
「
「……なんだと?」
「そもそも、あんさんらだけやと〝
「っ!?」
はんなり笑む葛葉に弥麻杜が目を
「な…
「〝純人教団〟の襲撃どすな~。南米の事件に
「……くっ!」
無数の爆炎を上げる町に弥麻杜は
「どいつもこいつも、この〝里〟を……我々を、何だと思っている……!!」
弥麻杜が怒りに震える一方、葛葉は竜巻の上の少女を見て、
「ほんなら、ここは頼むんどすえ、ペンテシレイア♪」
「風は
小さな
「〝儀式〟の場へ行ったのでござりまするか!?」
湖乃羽は
「お早く〝儀式〟の場へ! あの財団の新手を
「………頼んだぞ」
クローンの件で
「……もはや、身共は
やはり釈然としない顔で、窓の外の竜巻の上に立つ少女を
◆
「〝純人教団〟の連中、派手にやっているようですね」
30代なかばの上品な
「〝瀬織津〟のことは彼らに任せて、早くこの〝里〟を離れますよ」
ハニーブロンドをショートボブにして、高級ブランドのレディーススーツを着た地球統一政府の中央議会議員、フランソワーズ・ジュジュマンである。
彼女を守るように周りを囲んで進むのは、闘技場の控え室でマウジャドに襲いかかった〝回し者〟の闘士たちだった……が、
「ぐああっ!?」「うごっ!?」「がふっ!?」
「な…
倒れた闘士たちの中心で目を
ブラックスーツと銀色の首輪を身につけた、くすんだ金髪の少女がフランソワーズに飛来した弾丸……のような植物の種を全て細剣で
「逃がしはしないのですわ、フランソワーズ・A・ジュジュマン」
フランソワーズとくすんだ金髪の少女の前に、豪華なハニーブロンドを腰までなびかせる少女が現れた。
尊大に笑むフランス人形のような美貌に、ルネサンス絵画の貴婦人のような気品と、バロック彫刻の暴君のごとき
「我がノブレス・オブリージュの
黄金比さえ影をひそめる極上の肢体は、ブレザーの
弾丸のような種を放った
その少女にフランソワーズは顔をしかめ、
「あなたまで来たのですか、フランセス・A・ジュジュマン……」
「我が娘よ………」
◆
「〝純人教団〟め、
炎を
「とは言え〝
炎上する町で剣を振るいつつキザったらしく笑むのは、燃えるようなオレンジ色の髪をパーマにして、オレンジ色の革ジャンと革ズボンを着た20代後半の男。
「殿下たちの南米での行動が
ベルトのバックルに刻んだ『Ⅳ』の文字がまぶしい、太陽系ドミネイド帝国が誇る〝
「しかし……だからと言って戦闘員ではなく、一般信徒を動員するとはな」
ファルコが眉をひそめつつ目を向ける町の広場で、雪の結晶のような巨大な光の
途切れることなく次々と現れるのは、
しかし、着衣のどこかに〝純人教団〟の紋章を付けた人々は
「文字通り
不快感のままに吐き捨てつつ、ついさっきまで人間だった機械人形たちを斬り捨てていくファルコ。
「
また1体、機械人形を斬り伏せると、
「
全身を炎に包んで巨大な〝炎の鳥〟となり、猛然と町を飛翔し機械人形を残らず焼き払い……
「ぐおっ!?」
だが半球形の障壁が紋様を覆い〝炎の鳥〟を
「おのれ、あの転送術式も外宇宙のものか……!」
人の姿に戻ったファルコが噛ぎしりする。一方、なおも続々と紋様から現れる人々は次々と機械人形になり、再び町に広がっていく。加えて……
「なんだと!?」
目を
「おのれ、狂信者め……よかろう!!」
町の
「我が名誉と狂信者の
「〝
ファルコが叫ぶと同時、装甲車たちは25メートルを超える鋼の巨人に変形。肩のビーム砲を発射し、町に
「よお〝
ファルコの
「オシタリ! 何のつもりだ、これは!? ドミネイドの……トロニック人の兵を出すとは!!」
「あー……まー……なんつーか………」
つばめは目を
「ちょーっと弟子ばなれのデキないワガママ女の
あちこちへ目を泳がせた末……
「ぶっちゃけ、やつあたりだな♪」
開き直ったように清々しい笑顔を輝かせた。
「……殿下に何かあったのか?」
「ま、
「ったく、オマエのカノジョやら〝
「……あいつを一緒にするな。大体、お前も『我らが帝国の女』だろう」
「オ…オレはボケてなんかねーぞ!!」
「つってもアレだ。生まれつきのトロニック人じゃなくて〝
「馬鹿を言うな!! 元は人間であろうと今は完全なトロニック人なのだぞ! プロテクスも黙っては――」
ゴバァッ!!
その時〝里〟の大地に高速回転するドリルが突き出し、全長40メートルを超える土色のドリル戦車が地中から出現した。
「くっ、やはり来たかプロテクス!!」
ファルコが険しい視線を向ける先で、ドリル戦車が大地に開けた穴からレーザー砲やビームポッドなどを装備した戦闘車両が次々と現れる。1本のツノを生やす騎士の
「
「あとは任せるぞ、イムーファーザ!」
最後に二門の大型ビーム砲を装備した赤い戦闘機が穴から飛び出し、ドリル戦車と声を
「プロテクスの
戦闘車両に変形しているプロテクスたちへ指示を出し、〝草薙の里〟の広大な地下空間でプロテクス、ドミネイド、純人教団の
「なにっ!?」
不意に赤い戦闘機に生身の人間が刀で斬りかかり、戦闘機は鋼の巨人となって障壁を張り斬撃を防いだ。
「……ちっ、お前は火星に戻ったって聞いたから来たんだがな」
赤い鋼の巨人の前で、白い髪を足首まで伸ばす女が刀を手に宙に浮いている。
「……お前、『イムーファーザ』だと? だが、その重圧は──む!?」
眉をひそめた女──ブラジリアンビキニから着替えたワイクナッソは、赤い巨人が両肩のビーム砲から撃ったビームを刀で
「問答無用か! 面白い! せっかく生きていたのなら、せいぜい
寒気がするほどの美貌に高飛車な笑みを浮かべ、赤い鋼の巨人に斬りかかった。
同時に地上では三つ巴の砲撃戦が激化し、
町の住民たちは
「うげっ!? なんだありゃ!?」
つばめが目を丸くする。〝里〟のあちこちで高さ30メートルを超える黒い棒が多数、建物を下から突き崩しつつ大地より生え出したのだ。しかも……
「ひぃぃっ!?」
「ぎゃあああああああああああっ!?」
多数の棒は無数の触手を伸ばして町の住民たちを捕え、
「チチウエ……ハハウエ………」
機械的につぶやく真っ黒に染まった少年が、丸々と太った体を無数に溶け合わせて1本1本の巨大な棒を形成しているのが分かった。
「まさか……あれが全部、クローンだってのか……!? 何万……何十万……いや、何千万いやがるんだ………」
つばめが冷や汗してつぶやく……と、多数の巨大な棒が変化を始める。
そうして多数の巨大な棒は……それぞれが全長60メートルを超える、悪魔に似た黒く
「
「この声……さっきのハンプティ・ダンプティか……げっ!?」
つばめが眉をひそめた直後、〝里〟に乱立する悪魔の上半身たちが紅蓮の炎を吐いた。〝里〟を荒らす
「させんぞ!!」
「ちぃっ!!」
だがワイクナッソと赤い鋼の巨人が大型の障壁を張り、それぞれ仲間のトロニック人を炎から守った……純人教団の機械人形は、雪の結晶のような紋様もろとも焼き払われたが。
「あの転送術式を障壁ごと破壊しただと!?」
「この重圧は……まさか……!」
さらに赤い鋼の巨人──イムーファーザも
「この重圧……馬鹿な……しかし……!」
声を震わせ、多数の巨大な黒い上半身を見つめる………同時に、
「ナハハ、ちびっとでも〝呼び火〟の力を取り込んでやがるのですか♪」
地下空洞の天井近くで、右目に
「これも作戦のうち……それとも、うれしい誤算でやがるのですか〝クズ参謀〟♪」
ナマイキそうに笑んで軽口をたたいた……直後、
「
乱立する悪魔の上半身たちが、全身から荒れ狂う炎を〝里〟に
◆
「これは……」
激しく揺れる薄暗い部屋で、女がつぶやいた。
「〝時〟が来たのでございますね……〝草薙の里〟の……
部屋の壁や天井に亀裂が走る中、首から下が石になっている女は目だけを動かし、
「この
部屋の
「
刹那、壁や天井が崩れ
「
崩れ去る部屋で、
◆
「
「〝里〟は
地震のように激しく揺れる通路から、少年は故郷の
「……なれど、これこそは沙久夜様をお救いする
少年が進むのは〝草薙の里〟の地下に走る、多数の通路の内の1つ。
万一の時、〝里〟の中心にある草薙家の屋形から外界に脱出するための
それを少年は出口から逆に進み、草薙家の屋形へと向かっているのである……が、不意に通路の壁が砕け〝何か〟が複数飛び出した。
「
丸々と太った少年が複数襲いかかってくる……肌を真っ黒にして、ヘビのような下半身を壁から伸ばす〝異形〟の姿で。
「チチウエ……ハハウエ………」
「くっ、太華瑠殿の複製体につかまつるか!?」
総髪の少年は刀を抜き、息もつかせぬ
「おのれ……
少年は一瞬足を止めるも、刀を強く握りしめると……
「
刀の刃から水の砲弾を放ち多数の〝異形〟を粉砕する……が、さらに多数の〝異形〟が壁を砕いて現れ、狂気の
「複製体となろうと、某への憎しみは消えぬと……!?」
いくら倒しても続々と現れ通路を埋める〝異形〟の群れに、津流城が
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
〝異形〟の群れが炎に包まれ1匹残らず燃え尽きた。そして目を
「か…
兄の前に、白い着物を着た妹が現れた。
その幻のように
「
水の砲弾を放とうと刀を振った──が、刀は
「……っ!?」
再び目を
「……
打ちのめされたように肩を落とすと、刀の刃先を床へ下ろし、
「左様な
……はあ……はあ……はあ…………
佇む火焚凪の背後、通路の奥から数人の男が息を切らせて走ってきて……
「……ひぃっ!? か…火焚凪!? なぜ、ここに……!?」
「……太華瑠殿の取り巻き連中につかまつるか」
「ひぃぃっ!? つ…津流城まで、なぜ……!?」
眉をひそめる津流城に、無駄に
「いや……ちょ…丁度いい! 2人とも、我々が〝里〟を離れるまで護衛せよ!!」
「〝里〟を離れる? よもや〝里〟や民を捨て、逃げるつもりにつかまつるか?」
「ぐっ……い…
津流城の鋭い視線と重圧に男たちはたじろぎ、
「純人教団と太陽系ドミネイドとプロテクスが
「左様であろうと、〝里〟の名門に生まれし
「うっ……」
津流城の静かな怒りを
「ふ…ふざけるな! あんな化け物どもを相手に何をしろと言うのだ!?」
胸に
「我々は、あんな奴らとは……お前とは違うんだ化け物め!!」
「純人教団も太陽系ドミネイドもプロテクスも……それにお前ら兄妹も、どいつもこいつも化け物ばかりだ!!」
「
「某が……火焚凪と、同じ………」
津流城が
「化け物が……超人類や異星の者が
「異能を残すのも草薙家と直系の2つの分家のみとなった今、我々も名ばかりの〝名門〟でしかない……」
「〝強者〟に
屈辱に震える男たちに、津流城は一瞬、同情の目を向けるが……
「
すぐに視線を鋭くしつつも、どこか自己嫌悪の
「〝
「……っ!?」
男たちが眉をつり上げる……が、直後に肩を落とし……
「秩序を守れと言ったな……だが、〝里〟を離れ世界を回ったお前ならば、見てきたはずだ……世界を
「純人教団も太陽系ドミネイドもプロテクスも、世界を揺るがす
「かつて我々が……〝草薙の里〟が
「我らの秩序は、今や無意味だと……?」
津流城が顔を
「我々とて、
「名ばかりになろうと、〝草薙の里〟の名門に
「〝里〟を、民を、秩序を守れるならば守りたい……だが、我々はあまりにも……あまりにも非力なのだ……!」
落とした肩を
「己は、非力……何も、守れぬほどに………」
数分前に妹と
「〝
「その時、我々は思い知った……そして今日、
「我々は、お前らのような〝化け物〟ではない……だが、お前らのような〝英雄〟でもないとな……〝
男たちの目に、無念とは別の思いが感じられた。
己が遠く及ばぬ〝力〟を持つ者への、強い引け目と……〝
「〝英雄〟……某が………」
片や、津流城は
自分は世界に多大な被害をもたらし、秩序を大きく乱してきた。
しかし同時に、
「古き
「今となっては、我々自身も
「どの道、滅ぶ
暗闇に
「出来るならば……〝里〟と民を、守ってやってほしい……滅ぶしか出来ぬ、我々に代わって……!」
いつしか、甘い汁を吸う〝取り巻き〟は覚悟を決めた〝
胸の濁りを
わずかな時間で
(〝化け物〟と〝英雄〟……〝引け目〟と〝
無言で佇む妹へ目をやり、
(ならば……某の、火焚凪への
刀が手から
(某とて、〝里〟の混乱に
胸の奥を
(某も……非力なる〝無様〟につかまつったか……)
あきらめに近い納得を感じつつ……
(常に迷い……失うことに
津流城さん………
どこからか、
それは
(……否、否、否! 某は
声は
(
胸の奥で激しく魂を
(そのためならば、
(沙久夜様……!!)
それは
「護衛はせぬのでつかまつるが、逃げを打つこと、止めはせぬのでつかまつる」
落とした刀を拾い上げ、男たちの横を抜ける。
視界の
全ての迷いを振り払い、通路の奥へと一直線に。
(沙久夜様……
足取りにも迷いは無く、
ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
ほどなく、走り去った通路の後方から悲鳴が聞こえた。
「太華瑠殿!?」
肌を黒くしてヘビのような下半身を伸ばす〝異形〟が大群で追いかけてくる……鋭い牙と
「くっ……複製体め、まだ残っていたのでつかまつるか!!」
取り巻きたちの
「
大きく刀を振る──と、刃から水の砲弾が放たれ多数の〝異形〟を粉砕した。
「……
兄が苦い顔で見る先では、粉砕された数を超える〝異形〟が通路の壁を破って現れ、大群となって奇声を上げつつ勢いを増して迫ってくる。
「
津流城が大群に背を向け走り出す。そして
「沙久夜様……我が身に
時間の進みを異様に遅く感じる中……ついに通路を抜ける。と、周囲の壁に多数の入り口がならぶ円形の広い部屋に出た──途端、
「ぐっ!?」
津流城は強烈な重圧を浴びて硬直する。
同時に壁にならぶ入り口の1つから、カツーン、カツーンと足音が響いてきた。
足音が部屋に近づくにつれ重圧は強くなり、部屋の空気がビリビリと震える。
「この……重圧は……!!」
覚えのある重圧に冷や汗で全身を
その背後の入り口から〝異形〟の大群も部屋に入ろうとするが、重圧を浴びると自我も知性も無い身を本能的な恐怖に震わせ、通路に引っ込み姿を消してしまう。
「なぜ……よりにもよって、この時に……!!」
津流城が紫の欠片を握りしめ、青ざめた顔で奥歯を噛みしめた。
直後、足音を響かせる入り口から強大な重圧が
「どこへ急いでいるのかな?」
入り口から1つの人影が現れ、重圧にそぐわぬ
「やあ、
ミズシロ財団が東の本家の次期当主、
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