第11話 思い出の、欠片たちの中で

 その日、私は想い知らされた。


 真っ白な荒野が、真っ赤な鮮血に染められていた。

 その荒野に、死体になる歩手前の30人近い男女が倒れている。

 手足の2、3本ないのは当たり前、内臓をブチまけたり、体が半分なくなっている者もいる。

 

 万水嶺学院高等部の入学式の日、第一学年Zクラスで行った〝親睦会〟の結果だ。


 血で血を洗う〝親睦会〟にのぞんだのは、クラスを二分した2つのグループ。

 1つは、クラスメイトの大多数が集まった、御曹司に反発するグループ。

 もう1つは、御曹司を中心に八重垣やえがきいもうと銀鴒ぎんれい、チロル、それにドレミトリオの3人という、入学前から彼と縁のあった生徒によるグループだ。

 

 ブレイクが大多数の側にくみしたのは意外だったが、八重垣妹と戦いたいからと知って納得した。

 スカートの下にスパッツをはいていたことも、彼女の本気を表していた。

 ちなみに私や七里塚しちりづかも入学前から御曹司と面識はあったのだけど、ある理由により大多数の側にいた。


 ともあれ、凄絶を極めた〝親睦会〟の参加者のうち、ことが終わった時に五体満足で立っていたのは……わずかに2人。


 1人は、言うまでもなく御曹司。

 そして、もう1人が私だった。


 この功績(?)により私がクラス委員長になるのだけど、今は置いておく。


 その日の夜には水代家の治癒術師ちゆじゅつしのおかげで、クラスメイト全員あとも残さず元通りになっていたことも、今はいいだろう。

 

 そもそも五体満足と言っても、私と彼では状態が全く違っていた。

 満身創痍まんしんそういで、まさに『辛うじて』立っていた私。

 一方の彼は、かすり傷ひとつない全くの無傷。


 空を斬り裂く烈風や稲妻を、

 大地を揺るがす猛獣や巨人を、

 いたる所を飛び回る死霊の群れを、

 彼は光の壁で蹂躙し尽くした。

 ――後に六音をかばいながら。

 

 格の違いを、思い知らされた。 


 格別の気持ちを、想い知らされた。


 それは、


 それらは、


 きっと私だけじゃない、みんなの記憶の欠片かけらたち。


 忘れられない、みんなの思い出の欠片たち………




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