かわいいコンビニ店員の秘密を知ってしまう話(男女)

 そのコンビニ店員が立つレジの前にいくと、彼女はキラキラと後光がさしているように見えた。

「(ま、眩しい……。美人すぎて発光してる……)」

 俺の行きつけのコンビニでは、毎日決まった時間に美人の女子がレジに立っている。俺はその時間を狙ってコンビニに行くのが好きだった。

「お弁当、温めますか」

「あ、はい」

 彼女の前では一ミリもボーっとした姿を見せたくない。キリっとした顔をする俺。

 彼女は細く長い指でバーコードを読み取っている。重いものなんて持ったことがなさそうだ。彼女は全体的に『お嬢様』みたいな雰囲気を漂わせていた。きっと、上品でおしとやかな子なんだろうな……。

「850円になります。画面をタッチしてください」

 もし。

 もしここで、俺が、何か話しかけたらどうなるだろう。

 例えば、ご飯を誘ってみる……とか。

 …………。

「ありがとうございましたー」

 お嬢は無表情で会計を終えた。特に何事も起こるわけもなく、会計は粛々と終わる。

「(あー。なんか話しかけてみればよかったかな……)」

「(でも、話しかける勇気なんてねえよなあ……)」

 そんなことがぐるぐると頭の中を回りながらコンビニを出ようとした、その時だった。

「マイルドセブンの8mg一つ」

「えっと……、すみません、番号で言っていただけますか」

 俺は振り返る。旧式の銘柄の名前、しかも番号で言わない酔ったおっさんの客に、彼女はどれなのか対応に困っているようだった。

「(あー。いるんだよなあ、こういう客)」

「お客様、番号で言っていただけますと……」

「なんだとテメエ! そんなこともわかんねえのか!!」

 いきなりおっさんは激高すると、彼女の胸倉を掴んだ。

「わっ……!?」

「てめえケンカ売ってんのか! ふざけんじゃねえぞ!!」

 やばい、止めに入らないと……!! 小走りで近寄ると、いきなりガチャン、と何かが倒れる音がした。

 彼女の右ストレートが、おっさんを鋭く打ち抜いていた。そのまま商品の棚に当たりながら倒れるおっさん。

「えっ……」

 言葉を失う俺に、奥から声が聞こえてきた。

「スミレちゃーん。何かあった?」

「あ、店長、すみません。酔っぱらったお客さんが倒れたので、外に出しときますね」

「ん? そうか。災難だったねー」

 気絶したおっさんをずるずる引っ張りながら歩く彼女は、前を横切る時にそっと俺に耳打ちをした。

「バラしたら、殺すかんね」

 ぎらっと彼女の眼光が光った。そのまま彼女はコンビニの外へ消えていった。

 口をぽかんと開けたまま、俺もコンビニを出た。ふと、俺は重大なことに気づく。

「(彼女と二人だけの秘密、知っちゃったじゃん! やった~~~!!!)」

 嬉しくてそのまま飛び跳ねながら帰った、俺の深夜のコンビニの話。

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