1-9

 コンペの日時は、その日の夜には決まった。

 わたしがベッドに突っ伏して、ラジオの音に耳を傾けているころ。わたしたちのクラスの寮長がやってきた。『K9』っていう黒人の子で、わたしたちは『カーラ』って呼んでた。

「ミヒロ、マクスウェル教官から伝言だよ」

 マクスウェルっていうのは、メリッサのラストネーム。教官たちにはわたしたちみたいな作り物の名前じゃなくて、ちゃんとした名前がある。親がつけてくれたやつがね。

「なに? コンペのこと?」

 ベッドから這い出ると、お団子頭のカーラが待ってた。彼女、すっごいスタイルがいいんだよね。中学生みたいなわたしと比べると、ほんと大人っぽくてさ。なんていうか、筋肉質なんだけど、でもそこまで主張が激しいわけでもなくて。機能美って感じの綺麗さなのね。すらっとして、手足が長くてさ。

「うん。日程だけど、明後日の放課後だって」

「急だね」

「だよね。クライアントが急ぎで人材を欲してるんだって」

「ああそう。で、場所は?」

「まだ決まってない。決まったらエリスンから連絡が行くと思う」

「そう。ありがとね」

 カーラはにっこりと微笑んで部屋を出てった。彼女、ほんと人当たりがいいんだよね。こんな学校にいちゃいけないって、そう思ってしまうぐらいに。ほんといい子なんだよ。

「でも、ほんとにエリスンとやるなんてな」

 ダーニャが横から茶々を入れた。わたしは黙って、ベッドに戻る。

「べつに。負けたら、わたしはその時点で退学らしいから。どちらにせよ部屋は独り占めできるよ」

「でも、退学と仕事は違うだろ。さすがにずっとミヒロがいなくなるのは寂しい」

「それ、本気で言ってるの?」

「本気さ。だから例の副作用ノロイの話も聞きたくない」

「あっそ。でも、どのみちわたしはいなくなるから。……ダーニャ、もう寝るね。エリスンに勝つ準備しないと」

「おやすみ」

「うん、おやすみ」

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