非実在性ガールフレンド
機乃遙
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あるバンドが「五秒だけくれたら、君に僕の人生を語れるから」って歌ってたけれど。たぶんわたしには五時間かかってもダメな気がする。半生どころか、学生時代の思い出だって語りきれないかも。でも、それは別にわたしの人生が波乱万丈で愉快な物語だからってわけじゃなくて。むしろその逆。怠惰でつまらない話をいくつもしてしまうから。
あのね、これからわたしは色んな話をするけれど。もしも君がその話をちゃんと聞いてくれるのなら、まずはホールデンみたいな語り口でベチャクチャと喋る女のことを赦してほしい。
わたしっていうのは、つまりひとつのことを話すためにも、あっちに行ったりこっちに行ったり、横道にそれずにはいれない人間だから。
だからわたしの話なんて、ほんとなら子守唄みたいに聞き流したほうがいいんだよね。ベッドの中で布団にくるまって、イヤフォンを着けて、親やルームメイトにバレないようひっそりと聴く海賊放送のラジオみたいに。電波の向こうから聞こえるくだらない与太話とか、狂ったロックミュージックみたいに。ただ聞き流すべき話なんだ。
だけど、それでも君は聞きたいって言うだろうし。わたしも君にだけは聞いてほしいって思っているから。
だから、ヘタクソなりにも頑張って話してみるから。わたしにすこしだけ時間をください。
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