第52話 リレー2

アンカーはグラウンドを2周回ることになっており、差を縮めようとすると体力が残っていない。などといったことが起こりえる。


元は一定の速度を保っておりペースの管理ができていた。

俺たち後続組が一位になるにはペースよりも元に追いつくことが最優先なのである。

元よりも少し早いくらいのペースで一周を終えた俺はもうすぐ近くまで元をとらえていた。

はやいね。でも体力もつのか?と聞いてくるような視線を感じた。

俺は、声を発するでもなく、視線を返すわけでもなく、ただ元を追い抜いた。

「ははっ。そう来なくちゃね」

そういって、笑みを浮かべながら距離を詰めてくる。

追い越し、追い越されをゴール目前まで行っていた。

だが、体力が残っている元は、全力で走り出し1位でゴールした

続いて俺がゴールし、少し遅れて後続組もゴールした。


「お疲れ、リーチがなかったら負けてたな」

「冗談言うな、まだまだ余裕のくせして」

自分のせいで2位だったと申し訳なさそうにしている俺の前の奴が目に入る。


「お疲れ」

「お疲れ、すまん俺のせいで」

「気にするな、結局一位で渡されてもあいつに勝てる気がしないからさ」

そういって俺は背中を押す。

「どんまい!気にすんなよ」

「そうだよ、結果2位だったから大丈夫だよ」

などと温かい言葉が彼に投げかけられていた。


「お疲れ」

「なぎか、ほんとお疲れだったよ」

そういって、2人で自軍を後にする。

「本当は大樹君がクラスメイトから注目されてたはずなんじゃないの?」

どうして、彼が注目されるようにしたのかと遠回しに聞いてきているのか?

「別に、なんも考えてなかったんだけど…結果としてああなっただけでさ」

これと言って考えていたわけではない。

ただ、少しでも気持ちが楽になればいいかな程度の考えでやっただけだ。


「まあ、かっこよかったしいいか」

そういってスマホの画面を見せてくる

俺が走っている姿が映った動画が流れていた。

「このほかに写真もあるよ」

ニコニコとしながら見せてくるなぎ。

「見せないでいいから。それより飲み物買い行ってくる」

そういって逃げようとしたが、がっちりとなぎに腕を組まれ自販機まで一緒に向かう羽目になった。

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