第2話 好意の行為
正直、好意を寄せて貰えるのは嬉しい。
だが所構わず構ってくるのは少し勘弁願いたい。
全校集会で体育館に来ていた時の事である。
「太樹君〜」
そう言って佐藤なぎは俺に飛びついてきた。
何度もされた事もあり、受け止める事を失敗する事はないのだが、周囲からの視線がいたい。
男子は嫉妬の視線を俺に送り、女子は佐藤なぎになにかの視線を送っていた。
「視線が痛いからやめてもらえません?」
「い~や」
そう言って抱きしめる力を強めてきた。
困った…ただでさえ目立つ彼女が男に抱き着いていたとなると校内の話題になるわけで…
「おい、なぎちゃんとどういう関係だ」
机をドンっと叩き血走った目で聞いてくる男に絡まれていた。
「どういう関係も何も…」
友達?多分違うしな
「…おい。それは俺たちには言えない関係ってことか?」
怒気を孕んだ声で聴いてきたが切れられてたところでどうしようもない
どう返事をしようか迷っていたところ胸倉をつかまれてしまった。
「おい…俺のなぎに手を出してんじゃねえ」
『俺のなぎ』ね…
誰と誰がどうなっていても関係ないけど物のような言い方は少し気に入らない
「その者みたいな言い方やめようか。それにご本人様は君のこと知らないらしいけど…?」
そう言ってタイミングよく来た佐藤なぎを見てみた。
仮にも彼氏なら止めに来るだろう。その他にさっき誰アレと聞いていたので間違えない
「そんなわけないだろ俺となぎは将来を誓い合ったんだ」
勝手な妄想をしても何も言わないが現実にまで波及させないでいただきたい。
しかも被害を受けてるの俺だし
「そういうのは妄想だけにしようよ。正直痛い奴だよ?フフッ」
思わず吹き出してしまった。
彼は顔を赤くして拳を振り上げた。
拳が当たる数秒前に元が拳を受け止めた。
「なんでこんなにも絡まれんだよ…」
「申し訳ない。でも今回はソッチが突っかかってきたから俺は知らん」
「お前も名前は知らないけど、あんま人に迷惑かけんなや…」
そう言って拳を握る手に力を入れた
すぐに力の差を把握したのか静かに去っていった
「助かった~」
「助かった~。じゃなくて…。もう少し遅かったら殴られてぞ」
「多少は我慢するし、間に合うって信じてたから」
あちこちから『はうっ…』っと声が聞こえる。
そして佐藤なぎがこちらを睨んでいた
「どうした?」
「何でもないです。ただその笑顔を私に見せてほしかったな~って」
頬をぷく~っと膨らませていた。
こうしているのを見ると若干あざとさを感じるがそれでも可愛いと思ってしまうのが男の悲しさである。
一応さっきの奴が誰かを聞いてみた。
「あー…」
何やら知っているようなので聞いてみた。
曰く、前に告白を振ったにも関わらず了承されたと嘯いたらしい。やめろと言っているのにやめずしまいにはストーカーの一歩手前まで行ったらしい
「やべえ奴だな…」
「普通にキモいよな」
元と頷きしばらく復讐を警戒しておくことにした。
「思ったよりも早かったな」
てっきり明後日くらいかと思っていたのだが今日の放課後に来た。
「なんでお前みたいな根暗になぎが寄るんだよ!なぎは俺のモノだ」
「だからモノ扱いやめましょうっていったじゃないですか…」
あまりに学習能力がないため会話をするのがめんどくさくなってきた。
「俺の親父は警視庁で偉いほうだからな多少の置いたも世間に発表されないんだぜっ!!」
そういって金属バットを思いっきり振りかぶり殴りかかってきた。
「危ないなぁ…」
所詮距離をとれば当たることはない。
奴の背後に目を向けると準備完了と元が合図を出していた。
こちらに意識を向けさせ背後に意識が行かないようにした。
「それで、金属バットを使っても俺に勝てていないんですがそこはどうお考えですか?」
「うるせえ!」
こんな簡単な挑発に乗ってしまっているようではもう背後に意識が行くことはない
「一回牢屋で反省してこいッ!」
そう言って元はバックドロップを決めた
「ナイス」
「今日たまたま居てよかったわ。大樹そろそろ鍛えるだけでもしないか?」
もう、誰かを傷つけるのは勘弁だ
あの世界にいくと家族を作ることができない
「いや、遠慮しておくよ…。でも本当に守りたい人ができたらその時は…」
そうか…と頷き元は歩きだした。
「カッコつけてるとこ悪いけどこいつの事一緒に説明してくれるんだよね?」
肩をがっしりつかみ逃げられないようにした。
「おーけ。逃げないから」
降参と両手を上に掲げた。
そこからは警察に電話をして録画していた映像を見せてこちら側に非がないことを証明した。
彼がそれからどうなったのかは知らない。
少年院に送られたかもしれないし、お父様の力でどうにかしたのかもしれない。
まあ後者の確率は低いと思うが…
「なんか大樹君疲れてるね」
顔が死んでいるんだろうな…
たまに元にも言われる。
「まあね…まあ気合でがんばるよ」
そうして席に向かおうとしたときに今日も今日とて抱き着かれた。
「また…そういうのは控えてって言った気がするんだけど」
「ハグをすると疲れが取れるっていうからやったんだけど駄目だった?」
俺の胸元に顔をうずめていたが上目づかいで聞いてきた。
可愛い…
流石にこんなしぐさをされたらダメとは言えない…
しかも自分のことを心配してやってくれているとなるとなおさら
だがここは教室…
クラスメイトが居る中で長時間続けられるほど勇気がないので
耳元で『ありがとう』と言って席についた。
顔が赤くなっていたところがさらに可愛かった…
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