第24話 『彼と一緒にこれからは……』
「アミーリア様。とても、お綺麗ですよ」
「……ありがとう」
あのナイジェル様のプロポーズから早二年が経った。無事学校を卒業した私とナイジェル様は、その後それぞれの本格的な教育を受けることになった。ナイジェル様は王家の持つ公爵の爵位を一ついただき、公爵様になることになっている。つまり、私は公爵夫人になる。そのために、花嫁修業を頑張ったんだもの。ナイジェル様のお隣に、堂々と並べるように。
両親は、私がナイジェル様と結婚するということを伝えると、驚いてはいたものの、お祝いしてくださった。ナイジェル様のお父様、つまり国王様は私のことを歓迎して下さり、娘が出来て嬉しい、とまでおっしゃってくださった。だからこそ、今、私はとても幸せだった。
真っ白なウエディングドレスに身を包み、鏡を見ればもうあの時の悲しい私はいない。今日は晴れやかな日で、お祝いの日。窓の外を見れば、真っ青な空が広がっている。
「アミーリア。入りますよ」
そんな声が聞こえて、控室の扉がゆっくりと開く。そこには、王族専用の衣装に身を包んだナイジェル様がいらっしゃった。……私は、思わず見惚れてしまう。相変わらず、とてもかっこいい人。花嫁の私よりも、美しいわ。
「アミーリア。やっぱり、貴女はとても美しいですね。特に、今日は一段と綺麗だ」
「……お化粧の腕が良いからですわ」
「いいえ、素材が良いからですよ」
ナイジェル様とそんなことを言い合いながら、私は今までのことを思い出す。
ネイト様は、ニコルズ伯爵家の没落のすぐ後に姿をくらませた。シェリア様は、正式に他国に帰られたそうだ。ネイト様は最後までシェリア様に縋っていたそうだけれど、シェリア様はネイト様に何も言わずに姿を消されたらしい。ある意味、清々しくていいわ。シェリア様って、恋に溺れるタイプかと思っていたけれど、どうやら違うみたい。
「……アミーリア。貴女のことを、絶対に幸せにします」
ナイジェル様が、そんなことをおっしゃる。でも、違う。私とした約束と、違うの。
「……幸せにしてほしいわけじゃないですよ。……ナイジェル様と私で、二人で、幸せになるんです」
私がナイジェル様に幸せにしてもらうわけじゃない。私「と」ナイジェル様の二人で、一緒に、幸せになるんだ。そういう意味を込めて笑いかければ、「そうでしたね」とナイジェル様がおっしゃる。
そして……私たちを呼ぶ声が、控室の外から聞こえてきた。
「さぁ、行きましょう。アミーリア」
「はい、ナイジェル様」
手を重ね、歩き出す。
今日は結婚式。
――私たちの結婚生活の、始まりの日だ――。
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