第23話 『貴方がいい』
私のその言葉を聞いたナイジェル様は、一瞬驚いたような表情を浮かべられたものの、すぐに嬉しそうに微笑んでくださった。そして、何を思われたのか、いきなり立ち上がられる。私は、いきなりどうしたのだろうか? なんて思いながら、ナイジェル様の行動を見つめていた。
すると、ナイジェル様は私の前にいきなり跪かれた。それに驚いて私が瞳を見開けば、ナイジェル様はまるでおとぎ話の王子様のように、私の手を取る。そして、甘く微笑まれた。その表情は、やっぱりおとぎ話の王子様で。
「アミーリア。正式に俺の婚約者になってください」
そんなことをおっしゃって、ナイジェル様が私の手のひらを強く握られる。それに、少しばかり驚いてしまう私。でも……返す言葉なんて、気持ちを暴露した時から決めていた。
「……はい。私、ナイジェル様が良いんです。ナイジェル様じゃなきゃ、嫌なんです」
その手を握り返して、私はそう返事をする。その後、どちらからでもなくほぼ同時に微笑み合う。
こうして私は、ナイジェル様の正式な婚約者になった。ナイジェル様にふわりと抱きしめられて、恥ずかしいけれど嬉しい。心がどきどきとする。心臓はバクバクと主張をしている。……あぁ、今、私は――。
「ナイジェル様。私……とても、幸せです」
ナイジェル様に抱きしめられたままそう言えば、ナイジェル様が「もちろん、俺もですよ」とおっしゃってくださる。そして……どちらともなく、また笑い合った。
(……私の運命の相手は、ナイジェル様だったんだ……)
私は、ずっと自分の運命の人、結婚する人はネイト様だと信じ切っていた。でも……実際は、違った。本当は、ナイジェル様だったんだ……。そう思えば思うほど、嬉しくなって、心が弾んで。
「アミーリア。大好きですよ、愛しています」
それだけおっしゃって、ナイジェル様は私の頬に軽くキスをされた。それがこそばゆかったものの、私は嬉しかった。気が付けば、私の心の雲行きは良くなっていて。徐々に晴れ渡り、心の雲はどこかに消えていた。
(……でも、本当の苦労はこれからなのよね……)
周りを黙らせて、お似合いだって思わせなくちゃ。そう、私は強く決心する。ナイジェル様にそれを伝えれば、ナイジェル様は「もちろん、決まっていますよね」とおっしゃってくださった。
そして……このナイジェル様のプロポーズから一か月。私たちは、正式な婚約者となった。
******
「よかったわね、ナイジェル様。ようやく想い人と一緒になれたじゃない。……あたしは、もう用済みね。さーて、本当の自分の任務に戻りましょうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます