第22話 『運命を、信じますか?』
「……俺は、貴方のことを一目見たときに、惚れました。……一目惚れ、だったんですよ」
「…………」
そんなの、初耳だった。もしも、それが本当ならば……ナイジェル様は、私と同じクラスになってから、ずっと私を想ってくださっていたということになる。私とナイジェル様は去年から同じクラス。だから……それだけ長いこと、私を想ってくださっていた、のよね……?
「貴女は、運命というものを信じますか?」
不意に、ナイジェル様がそんなことを私に尋ねてくる。……運命。そんなの、私はあまり信じていない。でも、完全に否定することも出来ない。私は……都合の良い運命だけを、信じているのかもしれない。けど、都合が悪いと運命なんて信じない、と自分に言い聞かせているのだと思う。
「俺は、貴女と出逢ったのは運命だと思っている。貴女を一目見たときに恋をして、関わっていく内に、もっと好きになった。人間というものは、こんなにも一人の人間を好きになれるんだ。そう、思いましたよ」
ナイジェル様のそんなお言葉は、すごく耳に残る。私と関わっていく内に、もっと好きになった? 私にそんな魅力、あるわけないのに。シェリア様の方が、ずっと魅力がある。だからこそ、ネイト様はシェリア様に惚れ込んでしまった。私を捨てるということを、躊躇わなかったのだろう。
「……貴女は、自分が思っている以上にずっと素敵な女性ですよ。……俺のこと、嫌いですか? それとも、好きですか? 自惚れかもしれませんが……俺のこと、嫌いってわけではないでしょう?」
そんな風に優しく問いかけられて、私は頷いてしまった。嫌いなんかじゃない。むしろ、逆なの。私はナイジェル様のことが好き、慕っている、大好き、恋をしているお相手。そんな言葉しか並べられないぐらい、貴方のことを想っているの。でも、結ばれてはいけない。そう、ずっと言い聞かせていたのに……!ナイジェル様のそんなお言葉だけで、私の心は揺らいでいく。
そして、私のほどけていった気持ちは、私のストッパーをいとも簡単に外してしまった。
「……わ、私もナイジェル様のことが……好き、で、お慕いしております……」
ボソッと。でも、確かに。そんな言葉を口走ってしまっていた。あぁ、やってしまった。そう思い、ナイジェル様を見つめると、ナイジェル様は一瞬だけ驚いたような表情をされ、すぐに優しい微笑みを浮かべてくださった。その微笑みは、太陽よりもずっとまぶしくて。あぁ、恋ってこんなにも相手のことを素敵に見せてくれるんだ。なんて、今更実感して。
「だったら……障害なんて、二人で乗り越えましょう。誰にも邪魔なんて出来ないぐらいの、お似合いの二人になればいいんですよ」
ナイジェル様が、そんなことをおっしゃって私の手を握る。そして、私の指にご自身の指を絡めてくる。強く握られ、結ばれた手が、熱い。それは、まるで……私の緊張が、手に伝わっているかのようだった。
そして、私はナイジェル様の言葉に、静かにうなずいた。もう、我慢なんてしたくなかった。はっきりという、私は――。
「私、ナイジェル様のことお慕いしております。本当は、ずっとずっと、好きだったんです」
自分の気持ちを、暴露した。
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