第7話
波打ち際、海水が掛かる手前を歩く一人。
ホテルに集ったフレンズ達は今はそれぞれの住処に。
その為プライベートビーチな趣。
けれど黒かばんの頭にあったのは。
「どうしてキンシコウさんは僕の言うことを聞いてくれないんでしょウ。」
「なんだ、ホンノウをソンチョウするとイっておいて、オマエはアイツをシタガわせたかったのか?」
「違いますヨ、でも少し位僕に構ってくれてもいいじゃないですカ。」
「さて、それはアイツもオマエにオモっていたことかもしれないぞ。」
自問自答のように始まる会話。
いつもいつの間にかそこにいて今更気にしない。
地下室に閉じ込められた日からの付き合い。
ただ癪に障る、このカタカケマジムンには。
「思ってくれてたならアレを殺すのが筋でハ? わざわざビースト相手に立ち回らなくたって僕ハ……。」
「それをタメラわずできたら、それこそアイツはビーストだったろうな。だがワレワレはヒトにエイキョウされる。」
「僕もヒトだってこと忘れてませン?」
「そうだな、カギりなくヒトにチカいセルリアンだ。ヒトをトりコんだセルリアンによるコピー、ただホンモノとヨべるのはフレンズでもセルリアンでもないあの……。」
そこで言い淀む必要はないだろうに。
ただ本能の黒セルリアンと本物のセルリアン女王。
再現の方向性が違っただけ。
なのに癪が障ることに余計なことを言う。
「しかしオマエのヘンイサンドスター・ロウからメザめたアイツは、――ビーストとしてヤセイにカエってった。ならアイツにとってのヒトはオマエだったんだろう。」
「結構ですそういうノ……、僕が貴女を信用してないのはそこですヨ。」
いや初めて会った時から。
オマエはこのチカシツのようにクロいな。
だがワタシのクロにはオヨばない。
等と謎マウントを取る相手だったが。
「地下室に閉じ込められてた僕ニ、アレの誕生やキンシコウさんのいる高層を教えてくれたのは感謝しますガ。カンザシさんとやらはアレと一緒にいるのでショ、どっちの味方なんでス。」
「バランスのモンダイだ、ヒトにトうならばオマエのようなタチバからもキくべきだとオモってな。」
「僕がアレを直接殺すとは思わなかったのですカ、そう成ってたら貴女達の二千年は無駄ニ――。」
「オマエはコロせないよ、オマエのイうアレがウまれたそのトキ、ミたからな。アイツのアタマにハめられたままだったオマモりイシが、キコンジにカわるシュンカンを。ヒトのニンシキ、オモいイれによるセルリウムのヘンイをオマエはオソれてチカヅけない。オマエのショウタイがスデに、ミツリョウシャのカガヤきでヘンイしたセルリウムだとイうのにな。」
「……仕方ないじゃないですカ、このゲームは僕が圧倒的に不利なんですかラ。」
「そうだな……、オマエをセめるのはコクか。ドコまでニげようとオってクるだから、ジャクシャがキョウシャにクわれるシゼンのコウズは。」
足を留めたのは言い方で分かってしまったから。
弱肉強食、自分とキンシコウを引き裂いたけものを。
「あァ、ア。刺客寄越すとか余計なことしてくれちゃっテ、やっぱりフレンズにフレンズを騙すのは無理でしたカ。」
「オヒトヨしなのはショウチだったろうに。オマエのシマツをユウヘイでスませたのはまだいいとして、チカシツからミノガすばかりかあんなアリバイキョウリョクまでして、ヨホドオマエのことをクいてるようだ。」
「貴女にも責任はあると思いますよ僕ハ、そもそも僕の脱獄計画が貴女のスマホ経由でバレた結果ですシ。せめて最期にあそこまで運んでくださイ、そこでお迎え役の老いぼれを出迎えるとしますかラ。」
ヘリポートだけのホテル。
視線で示した場所に一瞬迷うも納得してくれる。
抱えて飛ぶ、それ位はマジムンにも出来る。
裏を返せばあとは子供相手に問い掛けるだけの存在。
「ショウジキにイおう。アイツがヤセイにカエってったこととイッショに、サンドスタータワーのホウだったともカンザシにレンラクした。」
「そうですカ、やっぱりキンシコウさんを使ってアレに問いたいんですネ。ビーストの存在意義についてでしたカ、別に好きにしてくださイ。」
「いいのか、そのケッカアイツがマジムンにナるかもしれんぞ。ビーストにモドったスガタをミても、オマエがテバナしでヨロコばなかったのはそれだろ?」
「そうじゃなくても一時的な覚醒、貴女の言う所の後天的ビースト化で終わってたでしょうしそれニ……。僕の言葉はキンシコウさんには届きませんかラ、だから僕もキンシコウさんに賭けるだけでス。そもそも貴女が現れなければ一生地下室から出ることなク、こうして関わることすら叶わなかったゲーム、僕なりに最期まで足掻いてやりますヨ。」
「そうか、ワタシとしてはオマエにイきてホしいよ。カワイがりのあるクロとして、まぁ――。」
イきてオトナにナったらもうアえないがな……。
手を離されて地に足が付く。
振り返るも無人、自分が一人じゃなく成ったから。
大丈夫、自分で選んだ逃げ場のない周りは海。
誘い込まれたのはむしろ相手の方。
小舟を乗り捨てて現れた彼女を見てそう決別した。
「奇遇ですネ、ヒグマさン。こんな所でお会いするとは、遥々セントラルの方までなんの用でしょうカ?」
「あぁお前を壊しに来たよ、黒かばん。」
白濁した瞳と熊手を向けて彼女は宣言する。
ヒトのフレンズの不始末を片付けに。
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