シアワセノメガミ

榎城 タイラ

シアワセノメガミ

 この高校にはある言い伝えがある。中庭には「シアワセノメガミ」と呼ばれる像があり、どんな願い事でも9割叶えてくれるらしい。だが、残りの1割は何かしらの不幸が訪れてしまうそうだ。急に眼が見えなくなったり、声が出なくなり、自殺してしまった生徒がいたからである。学校では、その女神に2つの綽名がつけられた。一つ目は幸運の方の「幸せの女神」、二つ目は死を意味とする「死合わせの女神」とと、いうものだった。


「おい…本当にやるつもりか? 名執」

と、やや茶髪ががった生徒、名執なとり龍雄たつおに質問したら、彼は呆れた口調でこう言った。

「大丈夫だって! どーせ所詮は噂だろ? もしかして…ビビっているのか? 楠瀬?」

「ビビってない。俺は心配しているんだぞ? 名執」

名執より身長が低い楠瀬くすのせ雅雪まさゆきはため息を付きこう言った。

「名執。お前もシアワセノメガミの噂は知っているだろ?」

「何だよ楠瀬。まだ信じているのか? 言っとくが胡散臭い噂に俺が興味無い事を知っているだろ?」

「それは…そうだけど…」

楠瀬が言おうとした所で、噂の像「シアワセノメガミ」についてしまった。

「おっ、これが噂のシアワセノメガミか! 中々美人じゃないか!」

「何オヤジみたいな事を言っているんだよ…」

「よーし! 何願おうかな…よし! 決めた!」

名執は何か思い出したかのような顔をしこう言った。

「女神様よ、サッカー部の部長、八月三十一日ほずのみや影久かげひさ先輩は少し口臭がヤバイのでフローラルの匂いにしてください。」

「おい! それはさすがに先輩に失礼だろ!?」

「大丈夫大丈夫! 多分何も変わらないって! それじゃ帰ろうか!」

「う…うん…」。

楠瀬は、口では言い表せない気持ちを抱えながら帰った。 


 次の日、少し早く起きた楠瀬がカーテンを開けると信じられない光景が瞳に映った。

それは、落ちていく名執の姿であった。

「な…名執!?」

楠瀬は慌ててベランダから出て下を見るが名執の姿はなかった。

「あ…あれ? い…居ない?」

楠瀬はキョロキョロと見渡したが名執は居なかった。

「ど…どうゆう事だ? さっき名執は落ちたはずなのに…」

その時、楠瀬の視界が傾いた。

「え?」

ベランダにいた楠瀬は何故か飛び降りていた。

「な…何で俺が落ちているの…? 俺は願い事をしていないのに…」

上を見ると何故か名執が居た。だがいつもの名執とは、何処か別人に見えた。

まるで、操られているかのように。

「い…嫌だ…助け…」

「助けて」と言おうしたが、地面に叩きつけられ死んだ。

だが、一緒に落ちて行った名執は何処にも居なかった。


 実は「シアワセノメガミ」の噂は続きがある。人の嫌な所を願うと、友達もしくは、家族を失なう。そして、願った本人は、未来永劫さまよい続ける。

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