第4話  その間の魔王城



「ゴーレム、サッカーしようぜ!」

「ガ!」

「戦士〜、ゴーレムをキーパーにするのはずるいよ〜」

「そっちだってデカスライムだろーが」

「ちょっと、あんた達!遊んでばっかりいないで、修行しなさいよ!魔王はちゃんとモンスター相手に修行を……」

「魔王さっき、リリス達に“魅惑のダンス”踊らせてニヤニヤしてたぞ」

「…………魔〜王〜〜〜!!」

「相変わらず真面目だね〜、魔法使いは〜」

「まだ誰も来ないのになー」



 ────幾年か月日は過ぎて


「勇者、来ないなー」

「勇者どころか、まだ誰も魔王城ここまでたどり着いてないぜ」

「あれから、どれくらい経ったのかしら……」

「ココに居ると、昼と夜の区別がないからな」

「ま〜、ゆっくり待てばいいよ〜」

「そうね、どうせアタシ達、年とらないみたいだし。───あ、ゴーちゃん、食料庫の備蓄が少なくなってきたわ。下の魔物ものに食料の調達お願いして」

「ゴガ!」



 ────さらに幾十年、月日は流れ


「ねぇゴーレム、まだ誰も来ない?」

「ゴ」

「……」「……」「僕さ」「何?魔王」

「最近、思うんだよ。僕達が倒した魔王も、こうやってずーーっと、僕達を待ってたんだよな」

「……そうだな」

「やっと魔王の間にたどり着いた時、魔王が言ったセリフ、覚えてるか?」

「え〜?なんだっけ〜?」

「魔王はさ、こう言ったんだ。“待ちかねたぞ、勇者! よくぞここまで来たな”って」

「……」「……」「……」



 ────またさらに月日が流れた


「ゴ!グガガ!」

「え!魔王城に侵入者!?」

「マジで〜!ついに来た〜!?」

「ちょ、アタシ、覗いてくるわ!」

「オレもオレも!」


「……一階で引き返すなんて、まだまだね!もう!」

「でもまた、強くなって戻って来るよ〜きっと〜」

「そうだな、外の連中も、やっとレベルが上がってきたみたいだし!」

「オレ達も、ガッカリされないように鍛練しとくか!」



 ────さらにさらに幾年か過ぎた頃


「どうも。お元気ですか?」

「───!! 大賢者!?」

「うわ〜〜久しぶり〜〜〜」

「すっかりご無沙汰してしまいました」

「ホントだよ!!ほったらかしかよ!」

「忙しいんです。大賢者ですから」

「それにしたって……どれくらい振りかしら」

「五十九年と三ヶ月です」

「うわ、そんなに経ったんだ!?」

「ね〜、勇者まだ〜? 僕もう、飽きちゃったよ〜」

「まだですね」

「……後、どれくらい待てばいいんだ」

「わかりません」

「……なんだよ、大賢者のくせに」

「聞こえましたよ」

「大賢者、何か用があって来たの?」

「そうでした。今日は皆さんにプレゼントがあります」

「おーーー!何だよ、早く言えよー!」

 ガラガラガラ ドシャ

「……これは……装備?」

「はい、魔王装備と四天王装備です」

「おお、禍々しい!」

「でも豪華だわ」

「魔王様、どうぞ」

「うん、着てみようか」


 ───ゴソゴソ


「おお……」「う〜わ〜」「グゴ!」

「魔王だわ……」

「え、なに凄い?」

「とても良くお似合いです」

「え、マジで?……でもコレ、あんまり能力感じないんだけど……スキルとか 補正値とか、どんな感じなの?」

「そんなに期待できません」

「……だから、どれくらい? 例えば、プラチナアーマーくらい、とか」

「木綿の服」

「……え?」

「あはは〜、大賢者さんも冗談言うんだね〜」

「いえ。冗談は習得していません」

「……」「うそ〜」「こんなに派手なのに?」

「ああ、一番外側はシルクなので、木綿の服よりはマシです」

「……じゃあこの、めっちゃゴテゴテの剣は?」

「鉄の剣ですね」

「仮面は?」

「ハリボテ」

「オレ達のもか……?」

「魔王様より若干、劣ります」

「……は?」「……」「……嘘よね?」

「何かご不満ですか?」

「あっったりまえだ!!!」

「そんな低能装備で戦えるか!」

「ゲゲー」

「ゴーちゃんも“可哀想”って言ってるわ!」

「装備は、たかが装備です。最後にモノを言うのは、おのれ自身の能力ですよ」

「……一瞬でも喜んで、損したな」



 ──────まだまだ時は過ぎ


「ね、ねぇ!今度こそなんじゃない!?」

「来るか?来るか!?」

「頑張れよー、冒険者達!」

「ふぁいと〜!」


「……今回も惜しかったなぁ!」

「なかなかのパーティーだったけどな……」

「せめてアタシまで辿り着いて欲しいわね」

「ね〜、四人目、どうするの〜?」

「四人目?」

「僕達〜、四天王なんでしょ〜?」

「……あ、忘れてた」

「ゴーレムでいいんじゃね?」

「ゴ!? ゲゲ!」

「おそれ多いってさ」

「そんな事ないわ!ゴーちゃん、強いもの」

「決まり〜」

「ゴガ〜」

「はは、ゴーレムが照れてる」



 ─────さらに長い、長い年月が過ぎた


「どうも。お元気ですか?」

「おお、大賢者」

「またずいぶん、お久しぶりね」

「今日はどうしたの〜」

「……勇者となる者が、生まれました」

「!!!!」

「……本当?」

「はい。まだ生まれたばかりですので、魔王城ここに来るのはもう少し先ですが」

「……」

「……そうか」

「ね〜、大賢者さん」

「はい。何でしょう」

「大賢者さんて〜、人間じゃないでしょ〜?」

「……そう言えば」

「……そうよね」

「お前、何年、生きてるんだ?」

「……さすが、弓使い様。鋭いですね」

「何者?」

「それにお答えする事は出来ません」

「ケチ〜」

「……また、会える?」

「……そうですね、いつか、きっと」




 ────そしてまた月日が流れ



 ついに勇者がやって来た。


















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