第2話 転生
「ここは?」
「な〜んか見覚えあるね〜」
「……ここ、魔王城じゃない?」
そこは五年前、勇者一行が長い冒険の最後にたどり着いた場所。
「正解です」
勇者一行をこの場所にワープさせた、大賢者と呼ばれていた人物が立っていた。
「何かご質問はありますか?」
「全部だ、全部!!」と勇者。
「先ほど、王様が説明された通りです」と大賢者。
「え〜と〜、勇者が魔王になって〜」と弓使い。
「アタシ達が四天王に……一人足りないけど……なると?」と魔法使い。
「ココに飛ばされたってことは、そーゆーこったな」と戦士。
「分かってるじゃないですか」
「なんで、アタシ達なわけ?」
「強いからです」
「断ると言ったら?」
「いえ、その選択肢はありません」
「は?こっから出て行けばいいだけじゃん。魔法使い、ワープして」
「……出来ないわ」
「何で!?」
「結界が張られてるようね。たぶん、この人の」
「じゃ〜この人、倒す〜?」
「やめてください。無駄です」
「……オレ達、武器も防具もないしな」
「魔法使いがいるじゃないか!」
「ムリね。装備があっても、アタシの魔力じゃ勝てないわ」
「え〜、この人、強いの〜?」
「……さっきから、この人、この人って……私は 大・賢・者 ですよ」
「質問を変えよう。オレ達が魔王一味になるとして」
「やっと前向きになりましたね」
「例えばだ!……なるとして、何をすればいいんだ」
「ここにたどり着いた勇者と戦ってください」
「あとは」
「ありません」
「遊んでていいの〜?」
「鍛練はされた方がよろしいのでは」
「……確かに。この五年でずいぶん腕が鈍っただろうからな」
「でもさ〜、勇者が来たとして〜」
「勇者は僕だ!」
「ん〜、紛らわしいね〜」
「あなたは今日から魔王です。質問の続きをどうぞ」
「……次の勇者が来たとして〜倒しちゃっていいの〜?」
「倒さなければ倒されます」
「……あのさ、もしかして……僕達が倒した魔王って……前の前の、勇者だったのか?」
「ご明察です」
「ぇええーーー!!!」
「オレ達に死ねって言うのか!」
「誰しもいずれ、死にますよ」
「……ちょっと待って。おかしいわ。アタシ達の倒した魔王は、確か、百年以上この国を苦しめていたはずよ」
「人間だったら、ずいぶん長生きだな」
「元人間です」
「え〜、じゃ〜僕達、魔物になっちゃうの〜?」
「正確には違います。魔物を超えた魔物、あるいは人間を超えた人間、て感じです」
「どうやって?」
「それは私が」
「大賢者が?」
「大賢者ですから」
「……頭が痛くなってくるな。他に方法はないのか?」
「何のですか?」
「オレ達が魔王一味にならなくていい方法」
「ありません。これは、二千年前からの決まり事です」
「二千年!!」
「……二千年前から、魔王を倒した勇者が、次の魔王になって来たの?」
「はい」
「…………」
「ではご納得いただけた様ですので……」
「納得してない!」
「魔王様、駄々をこねても状況は変わりません。頼りになる部下をご紹介しましょう。───入っておいで」
ギ、ギギ……扉が開く。
「ガー」
「……」「……」「……」「……あ」
「ゴーレム君です」
「アタシ達がさんざん手こずった」
「そうですか。ゴーレム君、良い仕事をしたようだね。こちらが、新しい魔王様と四天王様だよ」
「ゴ、ゴゴ」
「よろしくお願いいたします、と言っています」
「何で言葉がわかるんだ……」
「長い付き合いですから。皆さんもそのうち解るように」
「ならないよ」
「……魔王様、お気に召しませんか?」
「当たり前だ!」
「グゴ……」
「悲しんでおります」
「あ〜、今の僕わかったよ〜」
「弓使い様、素質がおありですね」
「勇者、冷たいわね」
「だな、襲って来なければ可愛いじゃないか」
「おい!コイツに止め刺したの、お前だったよな!?」
「ゴーレム君、魔王様は戸惑っておられるだけです。誠意を持ってお仕えすれば大丈夫です」
「ガ!」
「シャイなのですね、と」
「嘘つけーーーーー!!!」
こうして新・魔王達の新しい生活が始まった。
帰り際に大賢者が教えてくれた通り「魔王の間・右側三番目の石柱の下の方」にある出っ張りを押すと、壁が開いて廊下が現れ、左右に豪華な部屋が五つと、ダイニングキッチン、会議室、男女に別れた風呂、倉庫などが並んでいた。
生活に支障はないようだ。
日がたつにつれ、徐々に魔物の数が増え賑やかになってきた。魔物達は尽くしてくれるし、広い魔王城の散策中に、それぞれお気に入りの場所を見つけたりと、皆それなりに魔王城での生活を満喫し始めた。
「外の世界でも、モンスターが復活しているのかしら?」
「たぶんな。魔王が復活したんだから。
「今、外の世界は、どうなっているのかしらね……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます