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目を覚ます。記憶がない。完全に泥酔といったところだろう。
俺が体を起こすと、一人暮らしする大学から程近くのボロアパートの自室だった。
「頭いて~ーー」
頭の中で鉛で出来たスーパーボールが跳ねている感じがする。まじでしんどい。
ところで俺、彼女にふられた後にいつもの境内で酒を飲みまくってそれからちゃんと家にかれたのか。てっきり境内でおはようコースかと思っていたが。
「それだとかわいそうだと思ったから私がお家まで運んであげたんですよ。はいお水」
「ぁぁ、悪いな。ありがとう」
やっぱり二日酔いには水だろう。いや、味噌汁か……
「いやぁ、助かったわ」
「いえいえ! どういたしました!」
「ところで誰?」
そこには朱色の着物に身を包んだ少女がいた。けっこう可愛い。それはどうでもいい。
俺の家には俺しかすんでいない何故ならば一人暮らしだからだ。じゃあこいつは誰だ?
「お前誰だぁ!!!???」
「うぁ!! いきなり大声出さないでくださいよ!」
俺は謎の来訪者に驚きからの悲鳴をあげる。謎の来訪者もびくりと震えながら大声をあげる。頭に生えた立派な猫科な耳とふたまたに別れた尻尾を逆立たせて。
ん? 尻尾? 耳? 待てよ。
俺は昨日の夜、最後に視界に写ったものを思い出そうと頭痛がする頭を回転させた。
「あ、お前!」
「思い出しましたか!」
「いやだとしても誰だよ」
*
「私、妖怪ねこまたのまた子と申します。以後お見知りおきを」
「名前安直すぎない?」
「それは私も感じてます」
彼女は自分が妖怪だの、あやかしだの、人外だのいろいろとのたまわった。
相変わらず二日酔いに悩まされる俺はベットの上に腰を下ろしながら、床で正座しながら身ぶり手振りをしながら説明する彼女に目をやる。
世話しなく動く手と連動するように、頭に生えた立派な三角耳と根本から二つに別れた尻尾もぴこぴこゆらゆらと揺れ動く。こんな生物的な動きを見せられると本物だとわかったも同然だが。
「なぁ」
「へ? なんでしょ?」
何だかよくわからないことをペラペラと説明していたまた子の話を途中で止める。
「その耳と尻尾が本物かどうか触って確かめてもいいか?」
沈黙の時間。さっきまでブリキ人形のように世話しなく動いていたまた子の動きが停止する。そして突然に顔を赤らめはじめる。
「ななな!!なな!っな!! なにいっていやがるんですかいいいぃぃ!!!!」
まるで着替えを覗かれた女子高生みたいに両手で方を抱き、さささっと後ずさる。
「そんな!! そんな急に!! まだ段階が! それに名前も、な、あなたの名前も聞いてないのに!」
ハレンチ! スケベ! 素人童貞! エロ坊主! なんて激しい罵倒が投げ掛けられる。どうやら彼女たちにとって耳なんかを触るのはどうやらNGらしい。
やはりまだ酔ってるんだろうか俺は? そんな冷静な判断が下せたりするのも幻覚だと割りきれているからだろうか。もうこの状況に対しての感想はあまりわいてこない。ふられたショックがでかすぎるからだろうか。
「そ、そんなにいやがることだったのか……なんかすまなかったな」
「わ、わかればいいんですよ……」
すこし落ち着いたらしいまた子だったが、未だにふーふーと威嚇したときな猫のような荒い呼吸が聞こえる。
「あ、そうだ。俺の名前言ってなかったな。俺は沢谷竜也って言うんだ」
厳格かもしれないまた子に挨拶をする。
「沢谷……竜也さんですか」
「あぁそうだが」
俺の名前を聞いたときすこしばかりまた子の尻尾が反応したような気がするが気のせいだろうか。まぁ、幻覚だし俺の思い込みか……
「じゃあ俺はそういうことで寝るんで」
「え?! なんでですか?!」
「いや、だって今日まだ夏休みだし、学校始まるまでまだ3日くらいあるし」
「私はどうすれば! それにあなたに何で私が来たかまだ説明していた……」
「おやすみ」
俺は布団をガバッと被った。多分起きたとき昼頃だったからとりあえず夜まで寝よう。そしたらよいも覚めてあの変なのもいなくなるだろう。
そうして俺は眠りについた。
▲
俺は目を覚ました。酔いからスッキリと覚めた感覚が脳を駆け巡る。やっぱりしっかり酔いを冷まさないとだめだな。
俺は部屋を見渡す。
「あ、お早うございます! あ、違うかな?」
まぁ、そりゃいるよな。
どうやら幻覚ではないようだった。
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