第3話 飛音さんは提案する
昼休み、屋上。
信じられないことに俺は今、
「あんたってさ、なんであたしなんかにずっと構ってんの?」
色とりどりの具材が詰まった、まるで宝石箱のような弁当を広げながら彼女は言った。
それを聞くために俺を誘ったのか。ちょっと期待してた俺が恥ずかしい。
「なんで……か」
「いやほらあたしってさ、いっつも話しかけんなオーラ出してるじゃん?」
「まあ」
「話しかけられても生返事ばっかだし」
言い終わるや否や唐揚げと卵焼きを口に放り込みこちらを窺う視線を向けてくる。
「なんでって言われてもなぁ…」
「…?」
もぐもぐと咀嚼しながら飛音さんは頭の上にはてなマークを浮かべる。やっぱかわいいな。今の表情写真撮ってリビングに飾っときたい。
「飛音さんのことが気になってて話したいからって感じ」
「よくそんな恥ずかしいことサラッと言えるね」
「飛音さんが恥ずかしがってくれてたらちょっと照れてたかも」
「まー言われ慣れてるから」
一瞬彼女の目が沈んだ。まあ告白とまではいかなくても飛音さんに言い寄る男は結構居そうだしな。
「やっぱ迷惑?」
「まあ正直。でもあんたってほんとにただ話しかけてきてただけだよね。下心とか全然なかったでしょ」
「普通に仲良くなりたいって思ってた。飛音さんかわいいし」
「下心あんじゃん。でも本心はそこじゃないでしょ」
「……」
「知りたいんじゃないの?あたしが先輩振った日のこと。だとしたら…」
「いや別に」
「え、は?」
確かにその日のことはとても気になるが今俺が聞きたいことはそれではない。
「飛音さん今結構無理してるだろ」
「……ブフッ!?」
飛音さんは飲んでいたお茶を吹きかけた。
「こっからは俺の勝手な憶測なんだけど……違ってたらすまん。飛音さんってさ、普通のちゃんとした友達がほしいんじゃない?」
「……」
彼女は校庭の方を見ながらゆっくりとお茶を飲んでいる。
一見落ち着いているように見えて目が泳ぎまくってるから図星だろう。
「その日に何があったか聞いてきた奴いなかったんだろ?もっと言うとそこまで踏み込んでくるような仲の奴がいなかった」
「………」
「相談できる相手もいなくて薄い繋がりを全部断って1人塞ぎ込んでいるうちに周りに人が寄り付かなくなってこれはこれで気楽って自分に言い聞かせてさ」
依然彼女は黙ったままだ。
「別に責めてるとかじゃない。俺はその日何があったかなんて知らないし気軽に相談できることじゃなかったってことはよく分かる」
そこで俺は一気に飯をかきこみ弁当箱を置いた。
「ただ安心した雰囲気のなかにちょっと寂しそうな感じしたからさ。SNSだけとか廊下ですれ違ったときに手ぇ振るだけとかの薄い繋がりじゃなくてほんとの友達は欲しいんじゃないかなーって。俺では役不足かもしんないけどちょっとでも退屈しのぎになればいいなって思っただけ」
最初はこんなこと言うつもり無かったが、やっぱり俺は隠し事が下手らしい。この前も妹に見つからないように食器棚に隠したポテチがいつの間にか食われてた。
「なるほどね」
飛音さんはいつの間にか弁当を空にしていて、丁寧に弁当箱を包むとすっと立ち上がり軽くスカートをはたいた。
どこかスッキリしたような顔をしている気がするが俺の気のせいかもしれない。
「じゃああんたがそのちゃんとした友達になってよ」
「……は!?」
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