第12話 みづきの出した答え

 いくらくり返し読んだって、解決方法なんてあるわけないわよね。それに、かの女の場合はたまたまラッキーなことが重なっただけじゃないの。

 ふつうの小学生はそんなに簡単に芸能界なんて入れないし、そもそもかおるさんは入りたいなんて考えるかしら。

 しかも、高校はいじめる人がいないところに入ったって、中学を卒業するまでは、いじめ、なくならなかったってこと? そんなのイヤ。私だったらたえられない。

 ありえないとは思うけれど、もしも、圭からはなれるためにかおるさんが転校することになったとしたら。少ししか話したことないとはいえ、さみしいわね。それに、後味が悪いわ。


 それにしても、「にげられる場所、それを手伝ってくれる人」って何なのかしら。それって、だれのまわりにもあるものなのかしら。

 このお手紙の場合だと、「にげられる場所」は芸能界で、「手伝ってくれる人」は両親でしょ。じゃあ、かおるさんの場合は?

 とりあえず芸能界はなしとして。「手伝ってくれる人」ってだれのことかしら。かおるさんの両親ってどんな人なのかしら。会ったことないからわからないわ。少なくとも先生は難しいわね。あんなことを相談するなんてはずかしいだろうし。

 友達に相談するってのも勇気がいるわよね。ん? ちょっと待って。友達?

 私がいるじゃないの! ああ、でも、私ってかおるさんの友達なのかしら。かおるさんは私のこと好きって言ってたわよね。それは告白で、告白された場合って友達とは言えるのかしら……。

 ああもう! なんでもいいわ。かおるさんが「にげられる場所」、「手伝ってくれる人」、私がなればいいんだわ!


 いったん落ち着こう。つい圭がかおるさんをいじめてるって決めつけて考えてしまったけれど、まだはっきりしたわけじゃなかったわね。音や声は聞こえたけれど、現場そのものは見ていないから。

 月曜日にかおるさんと話してみて、あれが本当にいじめだったら、圭をかおるさんに近づけないようにする。圭がかおるさんにひどいことをしない場所、つまり、私の近くなら一応、「にげられる場所」にはなるわよね。私の見ている前なら圭はかおるさんを男子トイレに連れて行こうとはしないだろうから。

 ただ近付かないようにするだけって、何も解決してない気がして納得いかないんだけど。でも、今はこれがいっぱい。

 それにしても圭ったら、何を考えてあんなことしているのかしら。かおるさんのこと、気になるって言ってたけれど。

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