第6話 次の日の放課後

 今日は学級日誌書かない日だから早く帰ろう。

「よし、行くぞ」

 圭の声。きっといつものサッカーね。よくあきないものね。

「……やめろっ……はなせ……」

 かおるさん? なんかいやがってるみたいな。何やってるのかしら。後ろ見てみよう。

「いいから来い」

 圭、かおるさんを引っ張って行っちゃった。他の男子も何人かいる。ついて行って止めるべきかしら。いやがってる人を無理やり連れて行くのって、良くないわよね。


 スカートしか見えないけど、あれは多分かおるさんね。ってまた? ここ、男子トイレ。

 昨日のはまちがえた訳ではなかったこと? 圭が連れて来た? どうして?

「瀬川、のぞきか?」

 あ、おととい圭とおさななじみとか言ってた男子。でも今はそんなことどうでもいい。

「今は入っちゃダメ」

「なんでだよ。授業中でもそうじ中でもないからいいだろ別に」

 なんでって……。言い訳考えた方が良い? ああ、入っていっちゃった。

 圭、中で何してるのよ。


 どのくらいの時間が経ったのかしら。多分そんなに経っていないんだろうけど、それにしては長く感じる。

 って、中からドスドスって聞こえるんだけど。何これ。なんかヤな予感。もしかして、ひどいことが行われてるんじゃないかしら。


 長い。ドスドスいう音終わらないし。笑い声も聞こえてくるんだけど。

「女が“ぼく”だなんて気持ち悪いんだよ」

 ……っ! 圭の声。かおるさんが昨日話してた言葉。もうやだ。男子トイレだから、中に入って止めることできないし。


 音、おさまったみたい。だれか出てくるかしら。

「みづき、何してんの? こんなところで」

 圭、なんでそんなにのんきなのよ。

「それはこっちの台詞よ」

「はあ」

「はあ、じゃないわよ。見てたんだからね。あんたが、あんたがかおるさんを」

「げっ」

「ちょっと、にげないでよ」


 サッカーやってるだけあって、足速いんだから。もうげた箱に。

 あのくつ! またぬぎっぱなしにして。

 これって、昨日だけじゃなくて、おとといも、今日みたいなことしてたってこと? そしてだれかにばれそうになったからにげた? でも、なんでこんなことしてるのよ。意味わかんない。

 実際に中見た訳じゃないからはっきりしないんだけど、圭たち、もしかしてかおるさんをいじめてる? ああもう、信じらんない! 圭が私に言ったの、かおるさんが「気になる」っていう言葉だったはずよね。圭は馬鹿だけど、あんなことするような馬鹿だとは思ってなかった。

 私の想像、うそであって欲しい。

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