第7話 学級日誌

 先生とのやり取りをすることによって、連らく事こうやクラスに問題がないかを確認することができる学級日誌。昨日のこと、書こうかしら。でもなんて書くのよ。

 このクラスにはいじめがあります? でも、音や声を聞いただけで、現場を見た訳じゃないから、まだそうとは言い切れないのよね。そもそも、いじめが行われてるって思いたくない。

 京野かおるさんが男子トイレに連れて行かれ……はさすがにまずいわよね。かおるさん、こんなこと知られたくないだろうし。だれにも言わないって約束したし。男子のクラス委員長に見られでもしたら……。

 清田圭くんが……。って、なんでよりにもよって圭なのよ。気になる女子がいたらその人がいやがることをするって、男子小学生みたい。いや、実際男子小学生なんだけど。

 何なの、もう。かおるさんがあんなことになっているなんて、思ってもいなかった。圭があんなことしているなんて、思ってもいなかった。私のまわりがこんなことになっているなんて、思ってもいなかった!


 やっぱり、学級日誌には書かないことにしよう。いつもみたいに、今日あった、フツーのことを。

 日誌に書くよりも先に、やることがあるわね。圭との話し合い。昨日はにげられたけれど、なんであんなことしてたのか、ちゃんと確認しないと気が済まない。


 思った通り、サッカーしてる。かおるさんにひどいことしておきながら遊んでいられるなんて、理解できない。

「圭、いっしょに帰りましょ」

「うぉっ。なんだ、だれかと思った。みづきか」

「大事な話があるから」

「なんだ瀬川、告白か」

 似たような台詞、少し前に聞いたような。

「お前は、男女二人がいっしょに帰ったら告白しかないのか」

「だって大事な話って言ったじゃん」

「告白なんかよりもっと大切よ。ていうか、二人とも関係あるから来なさい」

「うーん」

 圭ったら、考えるようなことなのかしら。

「告白より大切な話っていったらプロポーズか。清田、瀬川、お幸せに」

「ちがうわよっ」

 話をややこしくしないでくれないかしら。

「みづき、その話って今日じゃないとダメ?」

「じゃあいつだったら良いのよ?」

「いつって、いつか?」

「まじめに答えなさい」

「うーん、明日とあさっては学校休みだから、月曜日?」

「本当? 別に放課後じゃなくても良いのよ。もっと早くても」

「わお、瀬川ったら意外と積極的」

「だからちがうわよっ」

 だから話をややこしく……。もうめんどう。今日のところは帰ろう。

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