第4話 放課後、廊下にて

 今日はびっくりした。かおるさんが私のことを好きだなんて。

 あの後チャイムが鳴ったからたずねられなかったけど、よく考えたら、友達としてっていう意味だよね。ドラマか何かでそういうのあった気がするし。それに、教室にいた他のみんな、だれも何も言ってこなかったし。まあ、次会ったとき本人に確認すればいっか。

 でも、かおるさんは、私のどこが良いんだろう。


 あれっ、かおるさん。こっち見た。なんか顔全体が真っ赤になってる。今まで見たことないってくらい。

 あ、走って行っちゃった。うん? 今かおるさんが出てきた場所って……。

 上にあるの、男子トイレの標識。


「げっ、みづき」

 圭、中にいたの。それははずかしいよね。トイレ入ろうとしたら異性がいるの。

「みづき、今のことはだれにも言うなよ」

「ええ、もちろん」

 かおるさんのためにも言わないわよ。まちがいはだれにだってあることだし。もうずっと前だけど、私も一度だけ、同じことやっちゃったことあるし。

 だけど、入り口の近くにあるかべのタイルが男子は水色、女子はピンクになってるからけっこうわかりやすいのよね。六年になってからこういうことをする人は、めったにいないかも。


 ていうか、そうよ! 元はといえば、圭が変なかんちがいするから、休み時間にああいう話になった訳で。

「あんたさあ、昨日の話なんだけど」

「またあんたって。まあ別に良いけど」

「かおるさん、あんたの下の名前知らないみたいだったわよ」

 本人に確かめたんだもの。

「まさか、そんなはずは」

「そんなはずあるわ。聞きまちがいとかじゃないの?」

「でもさっきだって……。聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声だったけど」

 そう言いながら、圭の声がだんだん小さくなっていってるし。自信ないんじゃない。


 それにしても、ふだんは堂々としているかおるさんが小さい声とはねえ。なんかイメージとちがう。ま、ジョウキョウがジョウキョウだし仕方ないか。会って話すときは、今回のことにはふれないように気を付けよう。


「ところで、みづきは何してんの?」

「学級日誌を職員室に届けに」

「それって毎日?」

「毎日じゃないわよ。大体、昨日いっしょに帰ったでしょ」

 男子のクラス委員長もいるから日がわりで。って、係の仕事決めるとき、先生が話してたこと聞いていなかったのかしら。圭のことだし、多分サッカーのことでも考えてたんでしょうね。

「ふうん。じゃ、さっさと職員室行ってこい」

「言われなくても」

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