第3話 次の日の休み時間、教室にて

 圭が気になっている女子。おととい放課後に残っていたらしい、京野きょうのかおるさん。

「ぼくに何か用? みづきさん」

 はっ。じろじろ見すぎた。

「ううん、なんでもない。ごめん」

 それにしても、かおるさんがみづき「さん」って呼ぶからつい、かおる「さん」って呼んじゃうんだよなあ。なんで私のことはさん付けで、圭のことは呼び捨てなんだろう。

「謝ることないよ」

 なんてさわやかな笑顔。見た目もカッコいいし、もしもかおるさんが男子だったら、バレンタインにはたくさんチョコレートもらうんだろうな。


「ねえ、かおるさんって好きな人いるの?」

「いきなりどうしたの?」

「たとえば、圭とかどう思う? 私のおさななじみなんだけど」

「ケイ、くん?」

 首をかしげてる。あれ? だれのことかわかってない?

「うちのクラスの清田圭のことよ」

 かおるさん、目を丸くしてる。おどろいてるみたい。うーん、でも、なんか少し、顔が青くなったような?

「わるい。変なこときいた」

 かおるさんの表情は元にもどっている。それは良いんだけど、この無言タイム。なんとなく気まずい。


「みづきさん、もしかしてなんだけど、」

 良かった。会話が続いた。

「その人のことが好きなの?」

 なんでそうなるの?

「ちがうわよ。ただおさななじみってだけ」

「あ、ごめん。今こういうこときいてきたし、昨日二人で帰ってたからてっきり」

 昨日はかおるさんのことを話してたの。なんて言うのは良くないかな。そういえば、かおるさんは私たちの前を歩いてたけど、いっしょに帰ってたところ見たのかしら? それとも、圭が大声だから、教室での会話が聞こえたのかしら? 多分後者なんだろうけれど。

「別に、いっしょに帰ったのは圭が話したいって言ったからだし、家も近くだし」

「かんちがいしてごめん」

 両手を合わせてる。そこまでして謝らなくても。

「ううん、だいじょうぶよ」

「でも安心した」

「安心?」

「だって、ぼくはみづきさんのことが好きだから」


 はい? ちょっと待って、聞きまちがいかし……。

「言っちゃった。本当はもっとみづきさんの気持ちとか考えて」

 かおるさん? 急にどうしたの?

「ちゃんとしたタイミングで告白しようと思ってたのに」

 告白!? 今、告白って?

「えっ、うそ。ジョウダンだよね」

「ぼくがジョウダンを言うように見える?」

 圭なら言うんだけど、かおるさんのことは正直わからない。

「ごめんね、こんなこと言って。気持ち悪いよね」

 びっくりしてそれどころじゃないよ。

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