#23 ラリィ=ル・レロ、テレビゲームをする

ラリィ=ル・レロ●ライブ


「こんばんらりるれろー。ラリィで~す」

 『らりるれろ』

 『らりるれろー』

 『らりるれろー』

 『らりるれろー』

 『らりるれろー』

「きょうは、タコさんと一緒にゲームします」

「よくわからないけど、ゲームを教えてくれといわれてきました」

「あたしゲーム、全然わからないからさ、教えてよね」

「わかった」


「タコさんおすすめゲームある?」

 『エロゲー』

 『乙女ゲー』

 『ド●クエ』

 『マ●オ』

「ラリィはホントにテレビゲームやったことないの?」

「あるよ。でも、やりこんだことはない」

「得意なジャンルは?」

「ジャンルってなに?」

「RPGとか、FPSとか、シューティングとか、シミュレーションとか、アドベンチャーとか」

「なにそれ」

「ざっくり分けると、反射神経で敵をバタバタ倒してゆくタイプか、考えながらゆっくり進めるタイプか」

「なんだろう? どんなゲームも途中までしかやったことないから、よくわからない」

「それじゃあ、配信時間で終わるゲームにしようか」

「OK!」




「それじゃまず、『落ちる野郎ども』でもやってみるか」

 ゲームのオープニングが流れる。

「なんですか?」

「二頭身のキャラクターを操作して、アスレチックのようなステージをクリアするゲームな」

「よくわかりません」

「ロンよりツモ。さっそくやってみよう」


 ピンクのスキンを着たラリィ登場。

 『ピンクローター』

 『ピンクローター』

 『ピンクローター』

 『ピンクローター』

「どうすればいいの?」

「複数のプレーヤーと競争したり、共闘したりしながらアスレチックをクリアしてゆくゲームだな」

「全然わかりません」

「教えていくから」

「よろしくお願いします」

「一番簡単な、『ドアダッシュ』からやってみようか」

「OK!」


 ピッ・ピッ・ピッ・ピーン!

「走れ」

 ピンクローターは、群衆にもみくちゃにされながら、進んでいく。

「どっちに行ったら良いの?」

「ひたすら開いたドアめがけて走って行け」

 蹴られ、捉まれ、飛ばされ、なかなか群衆の前に出られない。

 『草』

 『草』

 『草』

 『草』

「なん全然進まないんですけどお」

 結局、ゴールできずに終了。

 『草』

 『草』

 『草』

 『草』

「え? もう終わり?」

「まあ、最初はそんなもんだ」

「なんか動けなくなるのなに?」

「捉まれてるんだな」

「つかむことできるの?」

「できる」

「なにそれムカつく。つかむってどうやるの?」

「このステージはつかまなくてもクリアできるから、最初はとにかく、開いた扉目指して突き進め」

「わかった」


 ピッ・ピッ・ピッ・ピーン!

「走れ」

 ピンクローターは、先頭が開けたドアめがけ進んでいく。

「うおー! ドケドケドケドケドケ!」

 群衆を蹴散らし、前について行く。

「いいぞ。その調子」

「オラオラオラァ!」

 『ジョジョ』

 『丈太郎』

 『ジョジョ』

 『いいぞ』

 ゴール!

「やったー!」

 『よくやった』

 『がんばった』

 『頑張った』

 勝ち残ったメンバーが絞られる。

「それでどうなるの?」

「次のステージだな」

「よし! この調子でがんばる」

「がんばれ」



 数ステージクリアする。


「ふう、どんなもん?」

「まあ、いいんじゃないかな」

「マジで!? やったー!」

「それじゃ、このゲームはここまでにして、次はどんなゲームがいいかな」

「なんでもいいですよ」

 『ん?』

 『ん?』

 『ん?』

 『ん?』

「いま、なんでもいいって言ったね」

「なんか面白くなってきた」

「それじゃ、『ぴえん』でもやってもらおうかな」

 『ぴえん』

 『ぴえんって』

 『ぴえんか』

 『草』

「ぴえんってあれでしょ、目がウルウルしてる奴」

「それです」

「どんなゲーム」

「ホラーだな」

「ちょっと待った! ホラーはダメ」

「なんでもいいって言ったじゃん」

「言ったけど、ホラーはだけはダメ」

「『ぴえん』はそんな怖くないから大丈夫だよ」

「とかいって、めっちゃ怖いんでしょう」

 『大丈夫』

 『だいじょうぶ』

 『そんなに怖くない』

 『むしろ笑う』

 『なごむ』

「ちょっとみんな、無責任なこと言わないでよ」

「大丈夫、みんなの言うとおり」

「不安しかない」




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「さあ、ダウンロードが終わりました」

「ねえ、マジでやるの?」

「やろう」

「ホラーダメなんだってば」

「大丈夫。俺がついてる」

「タコさんあたしの胸元にいて」

「え?」

 ラリィはタコさんウインナーをつまむと、胸元にはさんだ。

「苦しいよ!」

「ちょっと安心した」

「つーか心臓バクバクいってるな」

「だからホラーはダメなんだって」

「しょうがねえな。ここからアドバイスしてやるから」

「ありがとう」

 『パイズリ』

 『パイズリ』

 『ぱいずり』

 『タコそこ俺と替われ』



 ゲームスタート

「まずなにをすればいいの?」

「バッテリーを拾って懐中電灯を点けよう」

「はい」

 うろうろして電池を拾う。

「それでどうするの?」

 うろうろする。

「ねえ? どうするの?」

「…」

「ねええ! どうするの?」

 『シラーヌ・ド・ゾンゼーヌ』

 『シラーヌ・ド・ゾンゼーヌ』

 『シラーヌ・ド・ゾンゼーヌ』

 『シラーヌ・ド・ゾンゼーヌ』


 歩き回って手紙を見つける。

 『しるしに光を当てて、ぴえんと唱える』

「なにこれ? 光当てればいいの?」

「…」

「タコさん、ちょっとはアドバイスしてよ」

「いや、最初は自力でと思ってな」

「ゲーム不慣れなんだからさあ」

「わりいわりい。電池拾うと懐中電灯が点くから、それでぴえんの絵を攻撃しれ」

「それだけ?」

「ぴえんが追いかけて来たら、ひたすら逃げる」

「なにそれ怖いんだけど」

「わき目も振らず逃げるんだ」

「なにそれ?」

「そのうちわかる」

「うう、怖い」


 懐中電灯を点け、朽ちた廃病院のような、鮮血が飛び散った暗い部屋の中をゆくっりと歩いてゆく。

 そこに、ぴえんの絵が。

「あった。ぴえんぴえんぴえんぴえんぴえんぴえんぴえんぴえんぴえん」

 絵は何ともない。

「消えないけど!?」

「あははははハハハハハ!」

 『草』

 『草』

 『草』

 『草』


「タコさん笑ってないで」

「E連打だな」

「え? ぴえんて唱えろって書いてあったじゃん」

「まあ、いいから」

 懐中電灯の光を当てて、Eを連打する。ぴえんの絵が消える。

「えー! こういうこと」

「そういうことです」

 部屋をこっそりと忍び込んで、ぴえんの絵を見つけると、懐中電灯を照らして連打!

 後ろから、ぴえんの音楽が聞こえてくる。

「キャーーーーーーーーー!」

 部屋から部屋へ逃げまくる。

 行き止まりで振り返った時、ぴえんがいた。

「キャーーーーー!」



 ラリィは元居た部屋に戻る。

「これやられたってこと?」

「そう」

「マジかーくっそー! マジムカつく」

 部屋を歩き回り、バッテリーを拾い、懐中電灯を点けたり消したり。

 突然、後ろからぴえんの曲が聞こえる。振り返るとそこには、ぴえん。

「キャーーー!」

「あははははハハハハハ!」

 『草』

 『草』

 『草』

 『草』


「突然出てくるの止めて…」

「部屋の間取りは決まってるから、頭の中でマッピングしたらいいな」

「そんな頭あたしにあるかー!」

「とりあえず、ぴえんの視線を切るように、ジグザグに逃げるといいな」

 再び、マップの中を歩き回る。

 ひとつ。ふたつ。みっつと、順調に絵を消していくと突然、ぴえんの音楽が聞こえてくる。

「キャーーーーー!」

 しかし、やられる。

「また最初から?」

「がんばれ」


 ─中略─


「終わったー!」

「終わりました」

「蹴飛ばしてやる! こいつ!」

「どうでしたか」

「楽しかった。音楽良かった」

「それはなにより。それじゃあ、次のゲーム行ってみようか」




「次は、某国民的RPGです」

「タイトルは知ってる」

「プレイしたことは?」

「パート8? 9? は、ちょっとだけやった」

「なぜ最後までプレイしない」

「その頃、友達の家、泊まり歩いてたから、時間かかるゲームはクリアできない」

「それじゃあ、定住の地を得たということで、1からやってみようか」

「なんでタイトル言わないの?」

「言うと、なろう運営からBANされるから」

「世知辛い」



 聞き覚えのある、オープニングテーマが流れる。

「普通に始めればいいんだよね?」

「どうぞ」

 ピ!

 >名前を入力してください

「ラリィっと」

 突然、玉座の前に現れる。

「こんな始まりかただったっけ?」

 ゲームを進める。

「えっとまず、街の人に話を訊いて、情報集めだっけ?」

 *王女は東の方へさらわれていきました。

 *鍵があればドアを開けることができるだろう。

 *道具はただ持っているだけではダメです。

「武器、鎧、盾、兜、やくそう、って買うの多いな。金足りないし」

「とりあえず外に出てみれば」

「そうだね」

 フィールドを歩き回る。

「この音楽良い曲」

 突然、スライムが襲いかかる。

 戦って勝つ。

「おお! 勝ったあ」

 また、スライムが襲ってくる。

「おりゃあ」

 ラリィが勝つ。

「なんだ、楽勝じゃん」

 調子にのって遠出。ドラキーにボコられる。

「おおラリィよ、倒れてしまうとは情けない」

「どうもすいません」

 『もうちょっと慎重に』

 『慎重に』

「タコさん、どうしたらいいの?」

「城の周りをぐるぐる回って経験値稼ぎだな」

「めんどくせー」


 ラリィは、経験値とゴールドを稼ぎながら、順調に活動範囲を広げて行く。



 気がつけば、かなりの時間、ゲームしていた。

「あ、もうこんな時間」

「今日はここまでにするかな」

「了解で~す」


「今夜はあなたの夢の中に、お邪魔しちゃうぞ。Sweet dreams♪」

 『おやすみらりるれろー』

 『おやすみらりるれろー』

 『おやすみらりるれろー』

 『おやすみらりるれろー』




 ラリィは、涼風翔也と話している。

「以上。タコさんとゲームした話でした」

「ホントにそれだけ?」

「それだけです」

「おかしい。発信元のサーバーを特定できなかった」

「あのー。VTuberに転生した、あたし自身が言ってるけど、中の人なんていませんよ」

「それじゃあ、君たちをのことをどうやって説明する」

「AIなんじゃないんですかね」

「AI?」

「今、流行ってますよね。あたし自身、生前の記憶をこの世界に持ち越しているけど、肉体がないのに、記憶だけがパソコンに残ってる。それって、生きてるって言えるんですかね?」

「あなた達のことをAIと仮定するなら、納得できる部分はある」

「じゃあ、AIということで」

「しかし、あなたたちは皆、生きていた人の記憶を有している。今の科学で、人の記憶をコンピューターに取り込む技術は無い」

「あたしはよくわからないけど、取り込む技術を開発した人がいるんじゃないんですか? どっかに」

「…」

「それじゃあ、あたし、眠くなったから帰ります。Sweet dreams♪」



 ラリィはネットから消えた。

 理工学部電子工学科の同僚からメールが届く。


 『追跡失敗。サーバーの彼方に消えました』


 小田は考える。

 ラリィがウソをついているようにみえない。ハッキング技術のある同僚でさえ、正体を追跡できない。完全に手詰まりだ。


 もう、本当に、人がVTuberに転生したと、信じたい気分だ。

 そこへ、英文のメールが届いた。

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