#11 VRでデート
見た目は17歳。中身は28歳。
水色あさがお●ライブ
「おはようございま~す! 朝から笑顔、水色あさがおで~す。はじめましてのみなさん、はじめまして。スパチャ、メンバー登録ありがとうございま~す。夜だけど、あさがおはいつでも朝なので、おはようございま~す! で始まります」
水色あさがおは、アサガオを育てる円形の植木鉢の中心に立っている。
「今日は、クイズバトルロワイヤルをしまし。まず、みなさんに集まってもらって、転生組に関するクイズを出します。優勝者は、あさとVRデートできちゃますよ~。ど~ですか~」
『がんばる』
『がんばります』
『がんばるぞー』
「参加したいみなさんは、概要欄に貼ってあるURLに行ってもらって、今から公開するパスワードでログインしてください。先着20名で締め切りま~す。いいですか? 公開、スタート!」
参加したメンバーは、画面の中で、アサガオの種になって現われる。
『種になりました』
『種だな』
『種』
『あさがおの種』
『あさがおの種(;´Д`)ハァハ』
「あっという間に、20人になりました。締め切りで~す」
『種』
『種w』
『種から草生える』
『おまえ種になってるぞ』
『この種、動くぞ』
「今、この部屋には、あさがおの種がいっぱいいます。ようこそ、あさの部屋に」
植木鉢には、ごま粒のような黒い点が、うごめいている。
「これからクイズを出します。2択です」
真ん中に白線が現われる。
画面に向かって左側に[Yes]、右側に[No]と表示される。
「正解だと思ったら[Yes]へ、間違いだと思ったら[No]へ、10秒以内に移動してください。
さっそく、第1問。デデン! アサガオはナスの仲間である。YesかNoか? わかれてくださーい」
ごま粒の様な種は左右に分かれる。
「3,2,1,0! 時間切れでーす」
「正解は[Yes]でした~。[No]みなさん、残念でした」
タコさんウインナー つ[カンペ]
「えーと、アサガオはナス目ヒルガオ科で、ナスの仲間です。へ~。アサガオってナスの仲間なんだね~」
正解した種に、尾っぽのような根が生える。
「正解するごとに、種が生長します。最終的に花が咲いた人と、あさがVRデートします。みんながんばってね~」
『おまえ尾っぽ生えてるぞ』
『おまえもな』
『俺生えてない』
『子供か』
「第2問。デデン! さくまどろっぷは、とうろく…。しょう…。タコさんこれなんて読むの?」
タコさんウインナー つ[カンペ]
「登録商標である。YesかNoか?」
種が左右に分かれる。
「タイムリミットは10秒! 検索する時間は無いよ~。3,2,1,0! 時間切れでーす」
タコさんウインナー つ[カンペ]
「正解は[No]! 商標に登録されているのは「サクマドロップス」で、さくまどろっぷは商標登録されていませ~ん」
正解した種は、根が生えたり、生えた根が生長したりする。
『おまえヒゲ生えてるぞ』
『おまえち●ん毛生えてるぞ』
『産毛だろ』
『まだ芽が出ない』
『種のままだ』
『俺まだつるつる(;。;)』
「みなさん、がんばってくださいね~。どんどんいくよ~。第3問。デデン! 可愛美麗さんは、元は男でした。このように、心の性と、体の性がちがうことを、
『よく読めたな』
「タコさんが、ふりがなふってくれました」
種は左右に分かれる。
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は[Yes]でした~」
全問正解者は既に、白く長い根にうぶ毛のように根が生え広がっている。
「どんどんいくよ~。第4問。デデン! 高崎紫さんは、転生前、同人作家をしていた。YesかNoか?」
ほとんどの参加者がメンバーが[Yes]へ移動する。
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は[Yes]でした~」
全問正解者はとうとう、双葉が芽吹いた。
「双葉開いた方は全問正解ですねー。あと一問ぐらいいきますか?」
タコさんウインナー つ[カンペ]
「次の問題いきましょー。第5問。デデン! あさのお弁当に、タコさんウインナーが入っていたことがある。YesかNoか?」
『俺んち父子家庭だったんだよね』
『涙拭けよ』
『良い父ちゃんだったよ』
『良かったな』
『俺は弁当を持ったことがない』
『今度俺が作ってやるよ』
『ありがとう(;。;)』
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は、[No]で~す。あさのママはねぇ、作ってくれなかったんですよ~。うちの家族は共働きで、パパもママも忙しかったからさあ。しょうがないね」
『(;_;)』
『がんばれ』
『うちも一緒だ』
双葉からさらに葉が生えた個体が現われる。
「え~と、ここで分けますか?」
タコさんウインナー つ[カンペ]
「今、葉が芽吹いている人が、7人いらっしゃいます。7人の方には、植木鉢から庭に植え替えます。それ以外の方は、すいませんが落選です~。さようなら~」
鉢植えには種から葉の芽吹いた7人が残っている。
「移動しま~す」
ヴォン!
背景が花壇に変る。花壇には、アサガオの蔓が巻き付くように棒が立ててあって、その元に、葉を芽吹いた7人が植えられた。
タコさんウインナー つ[カンペ]
「新ステージです。これからは、数字に関する問題です。正解に近い回答ほど、成長します。一番早く花を咲かせた人が優勝です。回答はコメントでください」
『一番最初に咲いてやんよ』
『ツルを巻き付かせてやるぜ』
『俺なんか既につるつるだぜ』
『萎えて枯れるなよ』
「第1問。デデン! あさが小学生の時に育てたアサガオの長さは何センチだったでしょう?」
『1m20cm』
『1m36cm』
『2m99cm』
『実は途中で枯らした』
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は、2m13cmでした~。夏休みの明けに、クラスで長さ測ったら、あさが1位でした」
正解した割合に応じて蔓が伸びる。
「蔓伸びましたねー。第2問。デデン! あさを跳ねて殺したト●タのプ●ウスの重さは?」
『重い』
『問題が重いよ』
『2t』
『1515kg』
『1000kgぐらい』
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は、1675kgでした~」
正解した割合に応じて蔓が伸び、葉を生やす。
「どんどん成長してるー。見てて楽しい。第3問。デデン! あさが死んだとき、遺族に支払われた慰謝料はいくらでしょう?」
『だから重いよ』
『問題が重いよ』
『2億円』
『1億3千万円』
『1億円ぐらい』
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は1億6千8百万円でした~」
正解した割合に応じて蔓が伸び、葉が増え、その先端に小さなつぼみができた。
「つぼみができた人がいますね~。花が咲いたら優勝ですよー。第4問。デデン! あさが産まれたときの体重はいくつ?」
『100g』
『軽すぎだろ!』
『2800g』
『3200g』
『当てにいきます2978g根拠無し』
『1t』
「3,2,1,0! 時間切れでーす。正解は3180gでした~。意外と大きかったんですよ」
正解した割合に応じてアサガオは生長し、とうとう、大輪の花が咲いた。
「花が咲いたあなた! 優勝です! おめでとー」
『おめでと~♪』
『おめ』
『悔しいが認めてやる』
『おめでとう』
「というわけで、優勝したあなた、お名前を教えてください」
「『夕顔』です」
「夕顔なんだー。声からして、男性の方ですか?」
「はい」
「お歳は?」
「28歳です」
「あさと一緒ですね」
「あささんは17歳ですよね?」
「ああ! そうでした」
「11歳差ですね」
「PS5とVRはお持ちですね?」
「もちろん」
「それじゃあこれから、あさと一緒にVRの世界でデートしましょう」
「どうぞよろしくお願いします」
タコさんウインナーが作った遊園地に、ふたりはやって来た。
「遊園地に来ました~」
「来ました」
「夕顔さん、あさのことちゃんと見えてますか?」
「はい、見えてます」
「あさには、夕顔さんが、ジ●リのカ●ナシに見えてま~す」
「よく言われます」
「どこか行きたいところありますか?」
「いや、あさがおさんと一緒ならどこでも良いです」
「それじゃ手を出して」
夕顔は恐る恐る手を出す。
水色あさがおがその手を握る。
『氏ね』
『ひっぱって押し倒せ』
『爆発しろ』
『末永く爆発しろ』
『おまえそこ俺と代われ』
┌(゚д゚)おだた┐
│\10,000
└遊園地のチケット代┘
「それじゃ行きましょう」
「よろしくお願いします」
水色あさがおが歩こうとすると、夕顔の手に引かれて止まる。
「一緒に歩いてくれないと進めないよー」
「失礼しました」
「歩調を合わせて行きましょう」
「はい」
「なんに乗る?」
「おまかせします」
「それじゃ、メリーゴーランドに乗ろう」
「はい」
夕顔視点では、リアルな遊園地で水色あさがおと手をつないでいるように見える。
水色あさがお視点では、夕顔は名探偵コ●ンに登場する、黒ずくめの犯人の様なモデルに見えている。
水色あさがおはユニコーンに乗り、夕顔はその隣のロバに乗った。
メリーゴーランドが動き出すと、ユニコーンとロバは、前後、左右に動いて、風景は、海、山、他のアトラクションを回る。ふたりで草原を駈けているようだ。
流れる風景を、水色あさがおと夕顔が目を輝かせて眺め続ける。
「夕顔さん、楽しい?」
「はい。楽しいです」
「手、つなげるかな?」
水色あさがおは手を伸ばす。
「え?」
夕顔が手を伸ばす。
届きそうで届かない、ふたりの手。
『氏ね』
『ひっぱって押し倒せ』
『爆発しろ』
『おまえそこ俺と代われ』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\500
└乗り物代┘
メリーゴーランドが止まる。
「届かなかったね~」
「そ、そうですね」
ポンと飛び降りて、夕顔の手をとる。
「次は何に乗りたい?」
「え? っと、じゃあ。ジェットコースター」
「レッツゴー」
ふたり並んでジェットコースターに乗る。
実は、夕顔もジェットコースターは苦手だ。
ガコン! と動き出して、ガタガタ坂を上り始める。手に汗がにじむ。
頂上に達し、一気に落ちるとき、ふたりで悲鳴をあげた。
『氏ね』
『爆発しろ』
『爆発しろ』
『おまえそこ俺と代われ』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\500
└乗り物代┘
コースターから降り、ベンチで一休憩。
「あのね。お弁当作ってきたんだけど。食べる?」
「食べます」
「おにぎり作ってきたんだ~。デジタルの世界だから、ホントに食べることはできないけど、雰囲気だけでも味わってください」
「はい」
水色あさがおは、竹籠の蓋を開ける。そこから、いびつな形に、バラバラな大きさ。海苔は巻く、というより、貼り付けてあるといった表現が正しい。いびつな海苔からご飯がこぼれている、見るも無惨なおにぎりが顔を出す。
『あ』
『あ』
『あっ』
『草』
『美味しそうですね』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\500
└胃薬代┘
「具は、鮭と、梅干しと、辛子明太子です。どれから食べる?」
「それじゃあ、鮭で」
水色あさがおは、ジャガイモのようにいびつな形をしたおにぎりを手に取って、彼の口元に運ぶ。
「どうぞ、召し上がれ」
夕顔は口を開けるが、歯ごたえがあるわけではない。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
『草』
『草』
『草』
『無茶しやがって』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\5,000
└病院代┘
食後、コーヒーカップ、迷路、ゴーカートなどに乗って、陽が傾いてくる頃、観覧車に乗る。
高くなっていく窓の向こうに、けもフレの風景が広がっている。森、海、遠くに山。眼下に小さくなっていく、遊園地の乗り物。
「綺麗だねー」
「綺麗ですね」
水色あさがおが夕顔の隣に座る。
『今だ押し倒せ』
『キスしろ』
『爆発しろ』
『おまえそこ俺と代われ』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\500
└観覧車代┘
「耳かきしてあげる」
「えっ!?」
「ここに寝て」
膝枕をポンポンと叩く。
「よろしくお願いします」
膝枕に頭を乗せる。
耳の中を、まさぐり、ふ~っと息をかける。こそばゆい感覚が耳を震わせ、男性部分が反応する。
「どうですか~?」
「き、気持ち良いです」
「そう? 良かった」
『ふう』
『ふう』
『ぬいた』
『ふう』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\500
└ティッシュ代┘
観覧車から降りたら、空はすっかり暗くなっていた。
園内のアトラクションに色とりどりの光が灯り、鮮やかに輝かせる。その光景もまた、ふたりの気分を紅潮させる、
「夕顔さん。今日は楽しかったですか?」
「はい。とても楽しかったです」
「あさも、実際にリスナーさんと触れ合えて、とても楽しかったです」
見つめ合うふたり。
『良い最終回だった』
『キスしろ』
『爆発しろ』
『俺のライフは0よ』
┌(;。;)イカさんウインナー┐
│\10,000
└お祝い代┘
「残念だけど、夕顔さんとはこれでお別れです」
「ありがとうございました」
「またね」
「さようなら」
夕顔がログアウトした。
「またこういった企画をやって行こうと思います。今回は、夕顔さんとふたりだけのデートだったけど、みんなが参加できる企画も考えてます。それじゃみんな、バイバイ」
ノシ
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