第5話

幸いなことに男からは、俺を攻撃しようという意志は全く感じられなかった。


俺は思い切って男の左肩を両手でつかむと、無理矢理こちらを向かせた。


――!


俺だった。


そこにいたのは俺だったのだ。


充分なくらいに予想はしていたつもりだったが、実際に目にすると、その衝撃はそうとうなものだった。


強引に体を回された俺は、俺の顔を見ると、にまり、と笑った。


異相。


自分の顔がこれほどまでに不気味なものになるなんて、思ってもみなかった。


「うわっ!」


俺は思わず声を上げ、そのまま部屋を飛び出した。


そして部屋の外で気がついた。


全裸なのだ。


中にいる俺も怖いが、こんなところに全裸でいるところを誰かに見られでもしたら、それはそれで非常に都合が悪い。


俺は一瞬躊躇ったが、部屋に戻った。


すると中にいた俺は、跡形もなく消えていた。

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