第4話
いやその言い方は間違ってはいないのだが、正しいとも言えない。
なぜなら男は俺に背を向けていたが、それでもどう見てもその男は俺自身だったからだ。
――えっ?
確かめなければならない。
なぜかその時俺は不思議なことに強くそう思った。
風呂に入っている間に見知らぬ男が侵入してきたという可能性は、ゼロではない。
ゼロではないが、その男はやっぱり俺にしか見えないのだ。
だったらその確認をするのが当然だろう、と。
俺はそいつの正面に立とうとした。
しかしそいつはくるりと回って、俺に背を向けた。
完全に俺の動きと連動している。
俺にはその男の横顔さえ見ることが出来なかった。
再び回り込んでその面を拝もうとしたが、男はまたもや俺の動きは完全に読んでいるかの如くのタイミングとスピードで、体を回転させた。
俺は男の周りを一周したにもかかわらず、ずっと後頭部しか見ることが出来なかった。
俺はむきになった。
嫌でもその顔を見てやろうと思った。
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