「どうでしょう。とても素敵なお話でしょう?」


「そうですね。ですが、どうしてこの先輩は後輩の彼を振ってしまったのですか。」


僕の疑問に目の前の男は少し目を細めた。


「さあ。私には分かりません。何故でしょうね。他にもっと愛する人でもいたのでしょう。彼に向けた好きなんて、お世辞かもしれませんしね。」


「......。」


確かにと、納得してしまう自分もいた。でも、同時にお世辞かどうかなんて僕にはわからないと思う自分もいた。


「貴方はこのお話をどう思いますか?」


「あ、僕は...悲しい話ではありますが、嫌いではありません。」


「そうですか...。僕はあまり好きではないです。まあいいでしょう。気分を変えまして、次の作品にご案内いたします。」


ふふっとわらって彼は次の作品の方へ歩き出した。


そして、目の前の男は、すっと、黒の中に一人の少女が白い花を持ちながら笑う絵を指した。


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