僕の崩壊

何故だ。何故だ。

置いていかないで、真。

君は僕を愛していたじゃないか。

僕が君を愛していなくても、僕が君に振り向かなくとも、君は一途に僕を愛していたじゃないか。

それが当たり前だったじゃないか。

今まで通り僕を愛してくれないのか。

愛してくれるのが当たり前だったじゃないか。


「俺は糸、お前を愛している。俺の事をお前が見ていなくても、ずっと俺はお前を見つづける。」


あの言葉は嘘だったのか。

僕にとって真に愛されることがこんなに大切だったのか。

愛してくれないのならお前はもう必要ない。

お前も、その周りの人間も、作品として永遠に飾ろう。

僕が死ぬ前の祭りだと思ってもらえればいい。

僕の前菜なんだ。

僕が美しく死ぬために、僕が生まれた役目を果たすために。

そのために君たちを僕は招こう。

先輩待っててください。あなたの願いを僕は果たします。

最後まで貴方の事を僕は愛し続けますよ。


「やめろ。やめてくれ。」


「やめて下さい。先輩。」


真や他の男達が嫌がったとしても、貴方はきっと違う。

きっと貴方なら僕を受け止めてくれる。

僕が愛した貴方なら。きっと。

だから次は貴方をここに向かい入れましょう。


「いらっしゃいませ。」


愛さない依存が愛されている事を愛してしまった結果、小さな一つの美術館が生まれた。

それは僕にとって城であり、赤の海でもある。

人魚の僕が愛する貴方を刺して、泡にならない様にするための場所。

人魚姫は愛する彼を刺せずに泡になったけど、僕は貴方を刺す。

そして来世でやり直そう。

僕は貴方と結ばれる世界に生まれるまで何度でも貴方を殺して、僕も死のう。


黒いタイルのど真ん中で彼は汗の粒を強く握り締め、強く心に誓った。

カランという色気のあるドアの鐘の音が鳴り響くと共に彼は強く床を踏みしめながら前へと進み、来館者を見てニヤリと笑った。


愛する貴方のご来館だ。

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