6:修羅場で始まる戀物語=Sideアカリ
ーーーダンっ!ダダダ、ダッ、ダッ!
がちゃっ、っばーん!と、
え、なになに?どしたの?
「アカリっ!ヤバイ、遅刻だ!もう出ないと!
やぁっと起きてきたかと思えば、
「ぇ、巴先生?雪彦、何か言われたの?ズズ…」
「説明してる時間はない!お前、自転車だろ?先に走ってるぞ!」
飲みかけのコーヒーをすすりながら、時計を確認するけれど、7時半を過ぎたばかり。
普通なら、遅刻する
思い
今日は終業式だから、あの人に何かしら仕事を
雪彦は…いや、アタシもだけど…あの人に頭が上がらないのだ。
小さい頃の事を覚えられているのって、
特に相手が歳上だと、自分の覚えてない事までほとんど一方的に知られてたりして。
…本当に、ほんっとぉおにっ!危険がいっぱいなのよ!アタシなんて…いやいや、今は
雪彦よりはマシだしね、と思い直して…すぐにでも
我ながら見事に
「ふぁにほれ(何これ)?」
…またも、ちょっと
「買い置きのクロワッサン。せめてそれくらい
「ふぁんふぅー(サンキュー)!」
言うが早いか、玄関に早足で向かってしまう。
アタシも残りのコーヒーを飲み
帰ってきたら洗いやすい様に水を張っておくだけにして、雪彦の朝食(だった)に保温カバー?でしっかりフタをしておく。
いっつもカバーとしか呼んでないんだけど、これ
早めに玄関を出たところで、本当はとっくに走り出していたかったであろうに、雪彦は
…まったくもう。
待っててくれたと思ったアタシの気持ちを返せ…こんなのいつもの事だけどさ。
「…まったくもう。」
今度は口に出してやると、特に急ぐってほどではなく…ごく普通の自転車の速度で追いかけ始める。
ふと、昔の事を思い出した。
ーーーあれは確か…おばさん達が亡くなって、すぐの事だった。
本当は、その場で大声をあげるほどに泣き出したかったはずの男の子は、苦いものでも食べたみたいな顔をしたと思ったら、
子供心に、
けれど…まだ
どんどん離れていく背中を見て…『あぁ、置いていかれたんだ…』なんて、あの子の為に追いかけたはずだったのに…あの時のアタシは、ただ自分が置いていかれたくなかっただけだった事に気付いてしまい、そこで
あの日…アタシは両親を亡くしたばかりの男の子を、大した
きっとあの日、独りきりになった男の子は強さを…独りを押し付けたアタシは弱さを手に入れてしまったのだろう。
今も思い出すと、
もっと怖がらずにスピードを出していれば…例え、結局は自分の為であったとしても…何がなんでもあの子を
ーーー今も、きっとアタシの足は泥に
けれど…だからこそ、アタシはもう後悔しない為に、自分に出来る事はなんだってしてやると決めたのだ。
泥塗れでも、後悔しかなくても、アタシにはきっとその
アイツの為になる事なら出来ない事だって、出来る様に…いや、出切る様に努力するのだ。
例え、今のアイツが…これからのアイツが
だから今は…忘れずにいる後悔を
きっと、きっと…彼が明るい
ーーーアタシの
差し当たっては…気を取り直して、あの馬鹿に追い付きましょうかね。
少女マンガの主人公みたいに、運命の
その万が一をフラグ立ててしまっていた事に、アタシは後日気が付き…自分の抱き枕に八つ当たりする事になるのだけれど、それはまた別のお話。
物思いに耽っていた事で、随分ゆっくりになってしまっていた事に気付いたアタシは…あの日出せなかったスピードで走り出す。
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