4:修羅場で始まる戀物語
「ぁ…あんた、何してんのよぉっ!!」
耳をつんざく、とはこの事か…。
けれど、そんな声に反応する事も出来ず…目の前にある美少女の顔に目を奪われ固まっていた。
先ほど一瞬、しかしてしっかりと
流石に女の子なだけあって軽くはあったが、人にのし掛かられて物理的にも身動き出来なかったと言うのもある。
とんでもない美少女に間近で顔を覗き込まれて、その吸い込まれそうな瞳に文字通りで
…実際、
何より
とは言えそれも
え、あの…突然の事態に戸惑うのは分かるけど…そんな見つめられると、その…いやいや、て言うかホントどしたのこの
いつまで、この
アカリっ!
内心だけでそう叫ぶ。
彼女の顔がそのまんま、目と鼻の先にあるお陰で声が出ないのだ。
いやいや、ホントだって。
見知らぬ美少女にこんな密着されたら、声出せねぇーの。
起き抜けに走ってきたし汗とか
べ、べっつにー?もう少しだけ?このままの体勢でいたいとか、そんな事あるワケない事もなくもないとも言えなくもないですけど?
ところで「時よ止まれ、お前は美しい!」ってこう言う時言えば良いの?
…ファウストさん出て来ちゃったしよ。
そして…時は動き出す。
「い・つ・ま・でぇ~…」
ガシッと、名も知らぬ美少女の後ろから彼女の
一瞬、ハッとした顔をしていたがもう遅い。
「そうしてんのよぉっ!!」
グンッと、アカリによって引き上げられた彼女は、今度は…いや、今度も驚いて固まってしまった。
「ちょっと、あんた大丈夫なの?さっきからウンともスンとも言わないけど、生きてる?」
いや、生きてるよ。
でないと、自分を
いや、まぁ…元を
「私…初めて、男の子に口付けてしまいました…。」
頬に!ほぉ~ほ~にっ!!頬にね!?
海外じゃ、
「………。」
無言怖いっ!アカリさん?無言でこっち見ないで下さいます!?
アカリはそのまま一言も
そのまま、一瞬の
「バ、バカバカ、馬っ鹿、お前!マジでシャレにならんだろ!!」
発信ボタンを押す
「シャレ?
怖い怖い…怖いって。
何だよ、怪我したいの?って…どう考えてもその怪我の原因、君なんですけど?
本当に怪我させられては
「いやね、誤解なんですよ?曲がり角からこんな時間に人が来ると思わなかったから…事故って言うか、いやそれ事態は…俺が悪いんだけど、倒れてきたその
「知ってる?誤解って、もう答えが出てそれ以上解けないから誤解って言うんだって。」
「気付いて!?誤ってる事に気付けば、解き直せるって!!」
アカリの
ぇ、え~…どうしろと?
と…どう説明したものかと思案していると、ようやく
「ぁ、えぇと…じ、事故なのは本当です、よ?」
フォロー
えぇ、本当に…でも、その言い方だと事故ってところ以外は全部否定しちゃってるからね?
あれかな?この
いかん、
…じゃないっ!取り合えず
「あ!そう!そうだよ!遅刻しそうなんだった!早く登校しようぜ!本当に
「
見事な
あんまりに見事なもんだから、俺の
…このままフェードアウト出来ねぇかな?…無理だろ。
「って言うか気にするのそこ!?良いから遅刻するって!」
とにかくもう、
流石に、二人とも遅刻したくはないだろうし。
と、思っているとアカリが
「…? 別に私達はまだ、大丈夫よ。ユキは巴先生に何か言われてるのかもしれないけど、いつもより一時間位早いんだし…。」
「はっはっは!(笑) アカリさんや、なぁにを仰って…ぇ、ホントに?ブラフじゃなくて?」
ほら、と言いながら俺の手にある自分のケータイをスリープモードから立ち上げ、時刻を
7時55分!…7時55分!目覚ましじゃ○けんの時間だよ!!
…とか言ってる場合か!
「えぇ!?でも天井の時計…8時半だったんだけど…?」
「電池で動いてるスタンドアローンのデジタル時計と、リアルタイムでネットと繋がってるケータイ…どっちが信用出来ると思う?」
「け、けーたい、です…ね。」
やべぇ、証明問題のわりに一言で答えられちゃったぞ…そもそも、問題ですらなかったですね、えぇ。
「はぁ…どーりで、慌ててたワケね。何か、もう気が抜けちゃった…とにかく、そんなワケだから時間は大丈夫なの。それよりこのコに言う事があるでしょ?」
「ありがとうございま…ぃ、いや!ぶつかってすみませんっした!!」
っぶねぇー、
アカリが一瞬、
ユキヒコを
…グールズのボスでもそんな事出来ねぇぞ。
デュエル脳を
置いてけぼりになっていた彼女が、恐縮した様に形の良い
「ぃ、いえ…私も
天使かよ…。
「天使かよ…」
「天使なの?」
いっけね!口に出してた…!あまりの天使っぷりにアカリも同感だったらしく、ハモってしまった。
むしろ、女神?女神なの?
「てんし…?えぇと…
同じ神に
「あ、ごめん…名前って
「アタシは同じく、緑山でこいつと同じクラスの
え、三吉神社の巫女?三吉神社って毎年秋に祭りやってるとこだよな?屋台の印象しかねぇけど、巫女っていたんだ…いや、普通いるか。
「ぁ…失礼致しました。私は、三吉神社の巫女を
ペコリ、と…丁寧に頭を下げる巫女様こと浅間さん。
なるほど、道理で
しっかし…同い年にここまで
「いえいえっ!巫女様、頭を上げて下さい!こちらこそお願いします。」
おや?何でアカリまで丁寧?っつか巫女様て(笑)
「なに、何で
「こびっ…!?ぁ、あんた知らないの?ここら辺一帯はほとんどの家が三吉神社の
え、どゆこと?…ポカーンとした顔をしていると、アカリが更に
「この町での氏子って言ったら、
なるほど。
そりゃつまり、この
「ち、ちなみにどこら辺まで、浅間家の土地なん?」
たまに、山1つ持ってる地主とか聞くけどそれくらいだろうか…。
「…あんた、ホントに何にも知らないのね。呆れた…この町、と言うかここは
は?ここ緑山町は浅間市に所属する町だ。…流石にそれくらい、は…。
…ぇ?いやいや、まさか…?
「あさま…浅間市、浅間家…?これは
「ここまで説明して、んなワケないでしょうが。理解した?」
マジで!?山1つとかじゃすまねぇじゃん!…大きい山だけで言っても、3つはあるぞ?…ヲイ、想像の
「ただ、古いだけですよ。氏子の皆さまに支えられて、細々と生き永らえさせて頂いているだけの家なのです。」
くっ…持たざる者には分からんが、すげぇ
「流石は巫女様、言う事が違うわー。何かこう、
いやいや、知らんかったんですたい!いや、知ってても防げなかったなこれ。
何言っても、
開き直るしかないんじゃないかな、これ。
「…し、」
「し?」
アカリが何を言うのかと、オウム返しに問うてきたがお構いなしに言ってやる…ああ!言ってやるともよ!!
「し、知るかーー!!すげぇのは浅間さんちであって、娘である巫女さんは俺達と同じただの学園生ダロが!!」
ダロがー、ロがー、がー…と、
「え、なに…間違ってないだろ?」
そんなにポカーンとするほどだった?
すぐに放心から戻り、先に答えたのはアカリだった。
って言うか、さっきから放心し過ぎじゃね?俺ら3人とも。
「いや、何かあんたらしいわ…ホント。」
ふふん、見直したかね?アカリくん。…いやこれ、呆れられてますね…分かります。
「…ス。」
浅間さんがポカーンとしながら何かを呟いたが
「え、なんて?」
聞き返すと、カッ!と目を見開く様にして早口で突然
「す、凄いですっ!初めてです!そんな事仰って頂いたのは!私も
あ、待って待って…近い、近いって。
ヤメテ!先の一件を思い出しちゃう!
…あ、もう思い出しちゃってますね。
浅間さんも気付いたらしく、
「もも、ももも…」
すももも、ももも、もものうち?…んなワケあるか。
「も、申し訳ございませんでしたーー!!」
マンガなら「ぴゅーっ!」と
いやー、見事な走りである。
「これって追いかけない方が良いパティーンのやつ?」
「そうね…誰にでも、落ち着ける時間は必要だと思うわ。」
でもこれ、後で顔を合わせたら余計に恥ずかしくなるんじゃ…いや、同じクラスにでもならない限りそうそう鉢合わせる事もないか!
などと、
怪我の
俺達もそろそろ向かった方が良い。
けれど、最後に1つだけ気になった事を俺と同じく
「なぁ、浅間さんて…何で今日から登校してんだ?確か、元峰山の人達は夏休み明けからじゃなかったか?」
「え、あぁ…授業はね。向こうの
ほーん…それって、意味あるか?いや、だって夏休み前に1回登校した位で慣れるもんじゃないと思うが…。
アカリの
「て言うか、顔合わせって…絶対覚えられないだろ。いくら少子化で統廃合されたって言っても、3桁はいるぞ?よしんば覚えられたとしても、夏休み明けたら忘れてるって。」
「同感だけど、そこは先生方がリハーサルを兼ねてるんじゃないの?ほら、急に登校する生徒が倍近くなるわけなんだし。」
あ、なーる。
確かにそれは必要か。
納得していると、アカリが自転車のスタンドを上げて歩く様に
どうやら、乗る気はないらしい。
…まぁ、浅間さんに追い付いても気まずいか。
まったり向かうとしよう。
「で?口と口だったワケ?」
一瞬で引き戻されたが…。
「…。ノーコメントで。」
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