第2話 再び

 昨日と同じ時間、同じ場所にめがけて俺は下校した。案の定、あの狂った人はいて勧誘してきた。この人は俺のことを全く覚えていないらしい。もしかして、その日ごとに記憶がリセットされているのか?それは考えすぎだとしても、昨日の今日で覚えていないのは、それはそれでおかしい。ますます、おもしろくなりそうな予感がする。

 まず、宗教に入らないにしても、その場所の見学くらいはさせてくれるだろう。

 まあ、良い印象を与えとけばいいだろう。

「あの、なにかの宗教の人ですよね?」

「はい、そうですが、入りますか?入りますよね?」

この人は、初めて見たときから短髪でボロボロの作業着を着ていたことから、男の人かと思っていたが、声からして女の人のようだ。

「まだ、入るかは決めていないのですが、どういうことをやっているのか知りたいです。入ることは前向きに考えていくので、見学などさせていただけないですか?」

これで無理なようだったら、かなり先が思いやられるところだが、前向きな考えと言うのが気にいったのかわからないが思ったよりもあっさりオーケイがでた。

 だがしかし、ここから長かった。うちの宗教は何をいんじてるだの、ある山が総本山だのと全く興味のない話をたくさんされたが、一つだけ興味深い話があった。

 日本のある貧しい家族に一人の子供を授かった。その日は、雷の凄い日でその赤子に雷が落ちて、急にしゃべりだしたのだと言う。その赤子がこの宗教の教祖だと言う。

 かなり馬鹿らしい話ではあるが、信者たちは皆信じているらしい。そもそも、その話は教祖自身が言っていたことなのか?もしそうならば、自分のことを話していることになる、赤子のころの記憶があるのかどうかすら怪しいのによくもそんな馬鹿げたことを、またその記憶があったとしても、赤子を抱いていた母親は雷で即死だったろうに、可哀そうに。まあ、こんなところである。さらに、聞いた話では、教祖は超能力者でいろいろなことができるらしい。これは見学した時に、見してもらおう。

 このまま、謎の自慢話をされても困るので、強引にいつ見学に行っていいかを聞いた。そうしたら、瞬時に週末という言葉が出たので、今週の日曜日十時からに決まった。

 それからは、逃げるように帰り、胸躍らせながら、教祖にする質問を考えた。そして、最終的に決まったのは、

「お母さんは元気ですか」

だった。もし元気なら雷に打たれて死んでいないのか、教祖の伝説?の矛盾を論破することが楽しみで、早く日曜日がこないかと、まちどおしくなった。

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