第52話 べんてんリターン




♡龍神、もうちょっと早くに言い寄ってくれたらえにしちぎりをしたのに。とにかく後はよろしくお願いします。1500年間弁天島ありがとう!♥



♡わたしは神々に見送られながら、この地を後にしたの。

足元に見える会場ではマキノコールが起きていたわ、そりゃそうだよね。

100代目弁天娘。あっバラしちゃった、ごめん。なんだかわたしも鼻が高いよ。♥



♡ああ、もうあんなに小さくなっちゃった、けど、、、ヒト多っ!!何万人いるのよ、引いてみてびっくりしたわ。しばらく気ままにふわふわ空を登っていると、対岸の黒壁も見えてきたわ。そうね。1500年前ドキドキしながらこの地に降りてきったっけ。♥



♡ちょっと変わっちゃったけど、田んぼが広がって、街が出来て、湖を船で行き来して。雨の降らない夏もあって、雪が多すぎる冬があって。いっぱい大変なことがあったけど、こうやって人々は暮らし続けていたんだな。♥



♡でも、わたしのせいで優作様は力をなくしてしまわれて。本当に申し訳ないことをしたなぁ。もしかしたら新しく人間世界を救ってくださる方だったかもしれないのに。♥



♡入道雲が綺麗だな、湖に映ってる。だいぶ高い所まであがってきたんだ。なんだかちょっと泣けてきちゃった。はじめは人間なんてって思っていたのに、気がつくと人間のために禁忌まで使っちゃってさ。♥



♡ああ。もう、雲に隠れて見えなくなってしまったわね。みんな幸せに暮らしていってね。高天原までもう少しだ、結構遠かったんだね。あっ、そうだ。ナギちゃんのお見舞い行かなくちゃ。♥



♡やっと門が見えてきたぁ。てか、ウチ大丈夫かな?1500年も空けっぱなしだったし、埃とかいっぱいなんだろうなぁ。こんなことなら先にクリーニング業者に頼んでおけばよかった。えっ。なに?白いカラスが何か咥えて飛んできたけど。♥



♡なに咥えてるの。これ、わたしに?なによ一体。さらに懲罰とかやめてよね。♥



♡なになに、よいしょっと、サラスバティこと弁財天を近江一国の総氏神に任命する。♥



♡はぁ、なに言ってんの!さっきクビになったばっかじゃん!ちょっと本部に連絡してやろう!♥



♡もしもし!あっ、本部!なにこれ!白カラスがなんか変なもんを咥えてきたんだけど。なにこれ、イヤミ!えっ、説明しなさいよ!♥



◯連絡が遅れて申し訳ございません。なんせ急だったもので、おめでとうございます!記録更新です。●



♡はっ、あんたなに言ってんの?記録って何よ!おちょくってんの!そこに行って暴れるわよ!♥



◯いや、とても急なことでございまして、あの、ご存知ないのでしょうか?●



♡ご存知も何も無いわよ!いまこうやって本部に向かっているのに、それに総氏神てなんなのよ、そんな人事聞いたこと無いわ。5000年も修行してないのに!♥



◯そうなんですか、実は。サラスバティ様に祈りが捧げられたのです、それも一度に100万も。これは未曾有のことでありまして、急遽サラスバティ様を総氏神にと首脳会議で決定いたしまして。●



♡そんなの知ら無いわよ!なんかの間違いじゃ無いの!♥



◯それでしたら、その証拠をおくりますので、見ていただけますか?●



♡「何よ証拠って!」わたしはひとさし指で空を四角くなぞると、その空間がモニターになり、さっき後にしてきたイベント会場が見えたの。そこにはマイクを持って立っている莉緒の姿が。♥





「ありがとうございました!beni5の皆様でした、せっかくですからね。もうこのままやっちゃいましょうか!昼の部最後のイベント。ミス弁天の結果発表です!


 はい、事前に町内の配布しました。投票用紙に弁天町にすむ女性の名前を書いていただいたのが3000通。そして、当日。すごい数ですね。現地で投票していただいた分がなんと3万通も!スタッフが必死で開票作業していたのですが。


 なんと、みなさん、すごい結果がでました。こんな結果みたことないのですが。最多得票数32999票!ミス弁天始まって以来の最多得票です。そしてそれが全て一人の女性でした。………あと1票はだれだったんですかね?


 とにかく、ほぼ全員のハートをゲットした方のお名前ですが。ほんと100人目のミス弁天にふさわしい方です。では、発表しましょうかね。さぁ、この方です!」




♡マキノでしょ。知ってるわよ。♥



◯ええ!それ先に言いますか!●



♡そらそうでしょ、神様なめてんの?でも、こんなに人気が集まるって想像もしていなかったわ。さすがね。♥




「発表します。栄えある100代目ミス弁天は。」



「高島マキノさんです!おめでとうございます!、さぁ、ステージの真ん中に立ってください。すごいです、マキちゃん、あっ、高島さん。栄えある100人目のミス弁天に選ばれました。それもすごい投票数でしたが。」



「えっ、はい、なんだか、不思議な気持ちです。」



「祖母の浜さん、そしてなくなったお母様もミス弁天で親子三代にわたっての受賞は街が始まって以来のことです!」



「マキノ!マキノ!マキノ!マキノ!マキノ!マキノ!」



「会場からもマキノコールが飛び交っていますよ、マキノさん、今の気持ちをお聞かせいただけませんか?」




♡よかったね、マキノ、こんなに多くの人に愛されて、あんたを竹生に帰した甲斐があったわ。♥




「みなさん、高島マキノです。あたしは、、、幼くして母と死別して、そして施設でそだちました。ここにいる新あさひと一緒に暮らして、そしてアイドルになって、母の生まれ故郷のこの竹生に帰ってくることができました。


 あたしはしあわせ者です、昔もいまも、だって、いつも誰かがあたしを助けてくれました、それもよく考えると、不思議な縁の繋がりできっとどこかで誰かが助けていてくれたんだと。


 さっきここに来る前に、湖岸から弁天島が見えました、あたしを助けてくれている人がわかったのです。それは!弁天島の弁財天様です!

 

 身の回りに説明できないような、まるで神様でしかできないことがたくさん起きて、そしてみんなが笑顔になって。だからあたしは辞退します、100人目という大切な名誉を、弁財天様に捧げたいと思います!」




♡マキノ、、この子ナニ言ってんの。マキノ!おい!あんたの力でしょ!♥




「えっ、それは、、、、いいのですか、マキノさん。」



「投票していただいた方には申し訳ないのですが、この街の一番の女性は弁天様以外にはいませんから


あたしたちはいつも神様にお願いしてばかりですでも


あたしは弁天様に感謝したい!この街を守り続けていただいてありがとうって


みなさんも、弁天様に感謝していただけませんか?ただ心からありがとうございますって。」




♡マキノ!マキノ!あんた神様を泣かすんじゃないわよ!、みんな手を合わせて祈ってくれてる。えっ、インターネットを通してみんな私に感謝してくてているのね。ああ、なんて甘くて温かい光なんだろう。こんなの初めてだよぉ。♥




◯わかりましたか?これが総氏神に推薦された理由です。このあと、手続きがございますが、それは追って弁天島に使いを出します、、、って。お〜い!もう弁天様ダッシュでもどって行ってしまわれたぁ。しかもあんな遠くに。●





♡マキノあんたに奇跡をあたえたのに、私がもらっちゃって!会いたい!かわいい私の子供に!マキノ!!!………あれっ、もうイベント終わってんじゃん。遅かったかぁ。みんなで片付けしているね。♥





◯サラちゃんおかえり!早いご帰還おめでとうございます。●


♡ナミさん!ただいま、ってまだそんなに時間たってないけどね。♥


◯サラちゃん大出世じゃん!うちの人を超えてさらに上位に昇格おめでとう。●


♡総氏神なんて気が重いわ。それならおとなしく高天原でのんびりしてるほうがよかったわ。ナミさんごめん、私まだナギちゃんのお見舞いにいけてないんだ。門に入る前にとんぼ返りで帰ってきたから。♥


◯いいのよ気にしないで。来月には帰ってくるから。てか、サラちゃんの部下だけどね。●


♡やめて!そういうのやめて!今まで通りに気楽にやらせてもらうんだから!♥


◯どうするの龍神君とは結婚するの?●


♡保留よ、保留!………ということで、私はまたここに戻ってくることができたの。あっ。優作様がセットの片付けしているわね、ごめんなさい。力を奪っちゃって。♥



「弁天様!いろいろとありがとうございました。マキノと暮らしていきます!」



♡なんで、いま優作様が挨拶してくれたよ、力が戻ってるじゃない!♥


◯よく考えなさいよ!あなたよりも上の位の力を剥奪なんてできないでしょ。●


♡知らなかった。まぁ、いっか。………そうして私はまたこの地、いや、湖全域をまもることになったの。………人間ってほんとおもしろいわ。♥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る