第48話 ド演歌



「はい、素敵なマジックショーありがとうございました。

ほんと不思議だったよね、びっくりしてしまいました、もう一度。

マジックジョンソンさんに大きな拍手を!」




♡おお!莉央ったら、そつなく観客の前に入っていったわね。そして会場の雰囲気を見ながら、こう切り出したの。♥




 みなさん昨日はわたしの大切な親友の高島マキノを、町の皆さんで探していただいてありがとうございます。

 全くのデマで心を傷つけられた彼女は、パニックになって、自分を失いそして夢遊病のように町をさまよっていたそうです。でも、今朝無事に見つかりました!本当にみなさんのおかげです。


 その、この町のヒロインのマキノさんは今こちらに向かっているのですが、高速の渋滞にハマってしまってこちらに着くのが未定になっています。


 スタンバイしていたbeni5も全員で歌えると思っていたのですが、時間がきてしまいました。その時です、近江舞子さんが、この町の大切なマキノさんのため、そして、何年もこの町にお世話になったお礼として、beni5の前に歌わせて欲しいと提案がありました。


 すごいじゃないですか!今日引退するアイドルのために、花道を作らせて欲しいとおしゃったのです。本当に義理人情に厚い近江舞子さん、さすが演歌の女王だけありますね。


 みなさん、プログラムが変わってしまいますが、近江舞子さんの意思を組んで先に歌っていただいてもいいですか?良いって方は拍手で近江舞子さんを呼んでください。


 パン、パン、パン、パン、はい、わたしの手拍子に合わせて。パン、パン、パン、パン、おうみ!まいこ!おうみ!まいこ!




♡莉央が会場のボルテージを引き上げていく、老若男女beni5のファンまで近江舞子コールが起こったの、莉央が完全に数万人の気持ちをコントロールしていたわ。♥




では、令和に咲いた演歌花、人の心を歌い上げます!近江舞子さんです!どうぞ!


パイパチパチパチパチ!





♡会場は拍手に包まれて、そして近江舞子がステージに上がってきたの。

莉央は舞子を立てながら、軽いインタビューをしてそして、近江舞子がマイクを握って話始めたのね。♥





「みなさん、また今年も帰ってきました。竹生町町制100周年おめでとうございます!思い起こせば5年前です。まだ名もないわたしを呼んでいただいて、ここで力をもらえたからこそ、去年は音楽大賞をいただくことができました。ひとえに竹生町の皆様が近江舞子を応援してくださったからです。


 そして、突然のわたしのわがままで、beni5の先に歌わせていただくことをお許しください、どうしても、どうしても。この町で弁天味噌で、頑張っておられる高島マキノさんのその姿をステージにあげたくてわがままを申し上げました。


 そしてわたしより芸歴の長いbeni5の皆様のために、近江舞子が立派に花道を作りたいと思います!


 まずは聞いてください!みなさんの心の歌!琵琶湖周航の歌!





♡首を長くしてbeni5を楽しみに待っていたネットユーザーからも莉央と舞子の神対応に賞賛の声があがっていたの。近江舞子の名前がインターネットで検索回数一位になっていたわ。思わぬ宣伝効果で近江舞子は大きく株をあげたみたいね。


 一方日吉は、渋滞を抜けて竹生まであと15分の距離でべ号と接触することができたの。日吉はマキノに衣装を渡すと、べ号はそのまま会場に向かっていく。そして日吉からあさひの携帯に連絡があったの。♥




「あ、あさひちゃん、今ね。マキノに接触できて、衣装をわたしたよ、あと15分くらいでそっちに乗り込めるわ!」


「日吉さん助かりました、ありがとございます!

  ちょっと、あさひ電話貸して、あの、いぶきです。

日吉さんも気をつけてこちらにきてください、わたしたちの最後を見てくださいね。まってま〜す!

ちょっとなに勝手に話してるの、そういうことなので失礼します。 

バイバイ、ダーリン!。ちょっと、ツーツーツー。」




♡いぶきマジか?まぁいいや。とにかくマキノはコッチに向かっているわ、控え室のメンバーたちもステージ衣装に着替えているの。あさひは赤、ひなつは緑、いぶきは青、さくらはピンク、そしてマキノは。車の中で着替え中みたい、優作振り返ったらダメよ!♥




「優くん着替えられたよ、なんか優くんばかりに運転させてごめんね。」


「いいよそれよりマキノ。。。えっ。か、かわいい。」


「あはは、やだ!」




♡そうか、こいつ、マキノのアイドル姿見るの初めてなんだ。そら後ろの席にbeni5のメンバーが乗ってたらそうなるわな。


 マキノの口上なんだったっけ。そう。すくすく育たまんまる果実。心にオレンジ柑橘娘のまきのです。だったよね、だから色がオレンジなんだ。


 べ号は湖岸に出る、そして弁天島を左に見ながら会場まであと少し。

ステージ上では、近江舞子が歌い終えてトークで引っ張りに引っ張ってもう15分は経っていたの。

 さすがに限界が近づいたときに、あさひたちもステージに上がってきたの。そして舞子とコラボトークを始めて。舞子、beni5の両ファンも盛りアガちゃって、藤色の着物と原色のコスチュームがなんともカラフルだったの。♥


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る