第44話 希望
♡神様ナビにチラチラと見えるマキノの姿、涙で肌がボロボロになっている
こんな辛くてかわいそうな姿みていられない。
そう、マキノは電車に乗りながらちくわのマスコットを大事に手で覆っていてくれているの、その手のぬくもりがまだマキノが生きている証。♥
「ちくわくん、遠いところに来ちゃったね、これからどうしようか?あんたどっか行きたいとこある、わたしね。もう、行き場所がないんだぁ。会いたい、優くんに、逢いたい!」
♡マキノを乗せた電車は北に向かって走っている、海岸線から登った朝日が車窓を照らしていたの。マキノの荷物はバッグひとつに、画面の割れちゃったスマホ、そして飲みさしのペットボトルが一本。
とても旅行をしている人には見えない、電車が鉄橋を渡るときに飲みさしのペットボトルが通路に落ちて転がって行ってマキノくらいの年齢の女性が拾ってくれたんだ。♥
「あの、こちら落ちとされましたか?」
「あっ、すみません。」
♡ペットボトルを拾ってくれた地元女性は、そっとマキノに渡してくれたの。
ちくわのマスコットに泣きながら話しているのをずっとみて何かを感じて見守ってくれていたみたい。♥
「あの、旅行ですか?」
「は、は、はい、そんなかんじです。」
「そうですか?今日はいい天気になりそうですね。」
「は、、、い。」
♡電車が青い橋を渡ると、並走している道路に一台の車が見えたの。そしてその車の運転席の男性が窓をあけ、手を上げてこちらに何か言ってるのと、その女性はマキノに告げてくれたの。♥
「くすっ、変わった車ですね。誰か窓の外で手を上げていますよ。白い軽バンに大きく車に「べ」って書いてますよ。」
「えっ?「べ」って、えっ、べ号?」
♡そう、私たちはやっとマキノに追いついたの。マキノは必死に窓を開けようとしているんだけど、ローカル線の窓の開け方をしらなかったの、それを見ていた、女性が窓を開けてくれて。♥
「優くん!優くん!あたし、あたしい。。。。。」
「おーい、マキノ迎えにきたよ、次の駅でおりろぉ!」
♡そう、マキノの横には。竹生でマキノが愛用していた白いバンの「べ号」
大きく紫ので「べ」って書いてあるわね。
白い車体に朝日が反射してマキノを照らしている。その時「ふっ」っとマキノをしつこく包んでいた影が消えてしまったの。マキノの魂が元にもどったの。♥
「わかった!次でおりる。優くん会いたかった! 大好きだよ!」
「おれもだよ、マキノ!」
♡マキノはバッグから切符の入った財布を取り出し、逆の手にマスコットだけ握って電車の乗降口に向かったの。そして電車の窓が開くと改札で乗り越し料金を支払ってローカル駅を外に向かって走っていくんだ。
そこには白い「べ号」が停まり、レスキュー制服のままの優作がおりてきて
走ってくるマキノを朝日が包む駅の花壇の前で抱きしめたの。♥
「マキノ、ごめん、守ってあげられなくて!」
「うんうん、優くんに会いたかった!会いたかったヨォ!」
♡まるで映画のワンシーンのように強く抱き合う二人
駅に来た人たちも何かの撮影かと思いその姿を見ているわ。
マキノの長いまつげかキラキラと光っている。もう悲しい涙なんかじゃない!♥
「マキノ、これから一生お前のことを守らせてくれないか?、何があっても手放さない!」
「うん、あたしも優くんを幸せにしてあげたい。」
「結婚しよう。」
「うん」
♡あまりにもドラマチックな光景に駅を利用する人たちも、なぜかつられて涙をながしながら拍手をしているわ、二人が周りの状況に気がつくと、ちょっと照れちゃって。♥
「なんか恥ずかしいね。」
♡優作はマキノを見つけた第一報を浜に伝えたの。♥
「浜さん!マキノが見つかったよ!うん、ちょっと疲れているみたいだけど、無事、うん。」
「ほんまか!優作くんありがと!ほんまありがと!」
「みんなぁ、優作くんがマキノちゃんを見つけてくれたんやて!
珠ちゃんありがと、永吉さん、小海、あさひちゃ、ひなつちゃん、いぶきちゃん、さくらちゃん、多賀ちゃん、弁天様ほんまありがとうございます!」
「もしもし!わたしあさひ、ねぇ、マキノに変わって!、ねぇ、あんた大丈夫?」
「あさひぃ。わたし、わたし、みんなをまた裏切っちゃった。合わす顔がない。。。」
「マキノ、みんなあんたを愛してるよ。もう大丈夫、ごめん本当のこと…あんたが全部背負っていたことをみんなに公開したの、もうだから平気だよ。
帰ってきて。おねがいマキノ。。。おねがい。」
「あさひぃ、あたしもみんな大好き。帰ってもいいの?」
「当たり前だよ、あんたが無事でよかった。浜さんに変わるね。」
「おばあちゃん、ごめんなさい、わたし、弁天味噌に傷つけちゃった。ごめんなさい。」
「まきのちゃん、もうええんや、それに全部嘘やったって全国にあさひちゃんたちが伝えてくれたん。だから、帰っておいであんたの家に、この竹生に!」
「いまどこにいるんや?」
「えっと、能登って所」
「能登って能登半島のか?」
「うん………」
「ちょっとまたあさひちゃんが替わって言うさかいに、替わるわな。」
♡マキノが見つかったってことでみんな一安心。そしてあさひがマキノにイベントのことを話したの。♥
「マキノ、あんた携帯繋がらないけど、どうしたの?」
「ごめん、書き込みが怖くて投げて壊してしまったの。」
「だから、誰もつながらなかったのかぁ。怖かったでしょ、よく耐えてがんばたね。あのね、私たち、竹生に来てるの。わかる。」
「えっ、ちょっと待って、あんたたち今日から沖縄でしょ。」
「そうだったんだけど、急遽変更でね、マキノ!解散ライブやるよ!」
「えっ、どういうこと?」
「今日のイベントでbeni5の解散ライブするの、あんた間に合う?」
「そんな、突然言われても!なんの用意もしてないもん。」
「平気、用意は全部してある。だから、身一つで来て!
昨日あんたが失踪してから急遽決まったの、あんたや、竹生の人、そして弁天味噌のネットの嘘を晴らすために、あまり時間がないわ。
詳しいことは彼氏に話してもらうから、だから竹生に帰ってきて!」
「わ、わ、かった。竹生に帰るから。」
♡電話を切ると、べ号を見つけてくれた女性が、マキノのバッグを持っていて♥
「あの、バッグ忘れていましたよ。」
♡優作のことで頭がいっぱいだったマキノは、ちくわのマスコットは持っていたのに、バッグを忘れて電車から降りちゃって
ずっとマキノを心配そうにみていてくれた女性が忘れ物に気づいて持ってきてくれたんだ、ことの一部始終を見終わってマキノの落ち着いた頃、バッグを渡しててくれてこう言ったの。♥
「今日はいい日になりそうですか?」
「はい、とてもいい日になりそうです。そしてあなたに希望を掴んでいただきました、いつかお礼させてください。」
「しあわせになってくださいね。」
♡その女性にマキノはお礼をしたいと言ったのだけど、女性は連絡先を明かしてはくれなかったの、ただ、両手にかわいいケーキ屋さんの紙袋をもっていたわ。
二人は深々とその女性に挨拶をして、ロータリーに停めたべ号に乗り込み竹生に向けて戻っていったの。
マキノを守るという大役を果たしたカッパの子が私の腕の中で眠っているわ。この子よく頑張ったわね、褒めてあげたいな。
わたしはカッパの子を腕に抱きながら、この産土神に挨拶をして竹生に戻っていった。残念だけど、もう優作様にわたしの姿は見えなくなっていたの。♥
「弁天さま、おら、あの人のことが好きダァ、いつもよくしてくれたぁ。」
「えっ、あんた。マキノのこと知ってるの?」
「んだ、あのひと、いつもお地蔵様を綺麗にして、よくきゅうりをお備えしていただよ。おら、お地蔵様からきゅうりをもらっていたんだぁ。」
「あんた、わたしのとこに来た時、きゅうり持っていたわね、あれって。」
「んだ、あの女の人からもらったもんだ。おら、あの人に恩があるんだぁ。」
「だから、あんた、あんなに頑張ってくれたの?」
「おら、あの、やさしい人には幸せになってほしいんだよぉ。」
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