第38話 若い力



♡午後4時、一向にマキノの消息はつかめずにいる。


浜たちは京都からタクシーを飛ばして竹生まで戻ってくる、

みんな居酒屋日吉にあつまって、

マキノの心配をしているわ。そこに町長が入ってきて。♥





「浜さん、すみません。わたしが、マキノちゃんのことを言ってしまったばかりに、こんなことになってしまって。すみません。すみません!」


「町長やめて!大丈夫や!あの子は自分の足でここに帰ってきたんや、また帰ってきてくれるにちがいない!

 それより、明日のお祭りの準備してください。うちらは何言われても平気やさかいに。あの子はぜったい帰ってくる。べんてんさまがついてるもん!そやろ、永吉さん、小海。」





♡浜が仏壇の前に座り、マキノの無事を頼んでいると、玄関にバイクが止まる音がしてそして、優作が日吉に飛びこんできたの。♥





「ばーちゃん!浜さん!マキノちゃんから連絡あった?」


「それがないんよ!優作にはマキノちゃんから連絡は?」


「訓練中に電話があったんだけど、出られなくて。」


「うちらも飛行機の中やったから出られんかったんよ。」


「そっか、じゃぁ、探してくるよ。何かあったらすぐに電話して!」


「ほんま腹たつわ!なんでマキノちゃんがこんなひどいこと言われなあかんの!

ここに酷いこと書いとるやつは何も知らんのや!あんな熱い豆に手を入れたり

凍りつくような冷たい水で樽を洗ったり、誰もが逃げてしまいそうなことを

必死でやってるマキノちゃんのことなんかな〜んも知らんくせに!

あああ、もう!!!!」





♡珠代は罵詈雑言ばりぞうごんの書き込みサイトに怒りをあらわにさせて感情を爆発させていた。竹生町が総出でマキノ探しをしている最中、あさひのいる東京でも動きがあるの。♥





「ごめん、わたし、明日、旅行に行けない。

ごめん、マキノのところに行かせて!おねがい!この通り、おねがい!」




♡明日は社員旅行で羽田から沖縄に旅立つ日。あさひはこうなった原因はマキノの毒子の問題をうやむやにしていた自分にあると思い、ひなつ、いぶき、さくらにおねがいしたの。♥





「ああ、じゃぁ、幹部は遅れていくかぁ。マキノの十字架を俺たちも背負おう。お前だけじゃないぜ、マキノを思っているのは。」


「うん、もう、はっきりさせようよ!わたしはマキノが笑顔になってくれるなら、手にしたものを捨ててもいい!マキノはそれくらいのことをしてくれていたんだもん。」


「ワタシハ、モウイチドマキノト。イッショニ最後ノ舞台ニ立チタイナァ。ファイナルコンサートヲシタカッタ!」


「えっ。さくら、そうだよ、やろ!明日竹生町でイベントあるんでしょ。うちらも行ってマキノの毒子の嘘を晴らそう!じゃないと竹生の人も嘘を背負わされることになっちゃう、あんなに美味しいお味噌がなくなっちゃう。」


「おばあちゃんも心配しているだろうし、俺たちがこの問題にピリオドを打たないとな。」


「わかった、これから本当のことを全部ニコチューブに流して真実をぶちまけまけるわ!」


「じゃぁ、明日の竹生のイベントにねじ込んでもらえないか確認しよか。もし可能ならその動画もニコチューブにアップして、マキノと竹生の嘘を消し去ることもできるかもしれないし。」


「わかった。じゃぁ、俺は撮影の準備をする、あさひは、竹生のイベントの仕切ってるやつに電話してくれよ。」





♡あさひは虎姫に電話したんだけど話し中で繋がんなくて、莉央に電話をいれたらすぐに電話に出てくれて。

スケジュールにbeni5のコンサートをねじ込みたい一心で責任者に連絡をつけてくれと言ったの。そしたら電話口で男の泣き声が聞こえてきて。♥





「すまない!俺のせいだ!おれがあんなサイトを開いたのがきっかけなんだ!

あさひさん、みんな許してください。」



「何言ってんの!あんた。その声は、莉央の父親ね。それよりスケジュールの管理者は誰よ!」



「はい、それはわたしです。実行委員では手が足りないから役場でうけもったんです。」



「サイトの件はあとで殴りとばしてやる、それよりbeni5の最後のライブをやりたい、2曲10分、なんとか開けらんない?」



「えっ、beni5の最後のライブって?」



「これから洗いざらい隠していたことをぶちまける。そこであす、竹生のイベントでマキノと、弁天味噌の潔白を証明するための、解散コンサートをしたいんだよ!時間とれる?」



「もちろんです、あさひさん、やらせてください、ぜひおれに、おねがいします!時間はとるようにします!おねがいします。」



「わかった、あのさ、莉央に変わってくんねーかな?」



「あっ、姉さん!ほんとごめんなさい、おとうさんがマキちゃんを苦しめていたって、わたしマキちゃんに顔向けできない。」



「莉央!しっかりしろ!マキノは絶対に帰ってくるから

その時に司会のあんたがうろたえていたらどうすんだ!

 明日うちらもそっちに行ってラストライブをやる。

もちろん、マキノとマキノの愛した、人、街、それにあんたの為によ!

信じて、いいね!笑顔でマキノを迎えるのよ、わかった?」



「はい、姉さん、マキちゃんを笑顔で受け止められるように、わたし頑張る。」


「そうだ、それでこそ、わたしの妹分だよ。じゃ、明日そっちで会おうね!」





♡明日は待ちに待っていた社員旅行なんだけど幹部たちは1日日程を削って二日目からの参加になるの。


 撮影の準備ができたと内線が入って、あさひたちは急いで社長室を出ようとすると。♥




「社長!嘘なんですよね、マキノさんに対するこんな書き込み!

明日beni5の解散ライブで嘘を全部晴らすって米原部長から聞きました。

私たちもなにかお手伝いさせてください!」


「ちょっと、何言ってんの、あしたは待ちに待った社員旅行でしょ!あんたたちには関係ないことだから。うちらの騒動に巻き込めないわよ!」


「マキノさんのピンチの時にわたしは旅行なんて行ってられません。」


「社長、おれもっす。東京に出てきて、初めて俺たちの体のことまで気を使ってくれた、マキノさんのことを放って、沖縄なんて行けねーっす!」


「それに、解散コンサートするんですよね!こっちで、動画編集とか人がいるんじゃないですか?」


「だめよ!だめ!絶対に!あんたたちには関係ないでしょ!」


「関係ないことないもん!マキノさんは、マキノさんは、わたしに料理の楽しさ、そして食材の大切さを教えてくれました。うちの5時からお買い物サイトも、マキノさんがいなければできませんでした。わたしもオカンを守りたいんです。」


「そうです、社長。おねがいします。片道の航空券なら自分たちで出します。だから、俺たちもマキノさんの為に何かさせてください!」




♡あさひはフゥって息を吐くと、いぶきがあさひの肩をポンポンとたたいて♥




「あさひ、社長が残してくれたの使うか。こいつらだって、俺たち残して沖縄で楽しめんだろ、いいじゃねーか。こんなにマキノの味方がいてよお。」


「わかったわ、でも全員は無理よ、20人だけ残す、後のみんなは沖縄についてから自由行動。オンラインでこっちの作業を手伝いたいものがいれば参加して。

そうしないとあと二日もキャンセルになっちゃうからね、それでいいよね!」


「はいっ!」


「私たちは明日の告知を収録するから。

伊賀!あなたが裏方になってリーダーになって誰が何をするのか決めなさい、

有志のものも伊賀を補佐するように。

18時にサイトにアップと同時に、竹生に渡るものを連れていく。

かなりハードなことになるけど。覚悟はいい!」


「もちろんです!」





♡あさひは急遽立ち上がったプロジェクトの指揮をマキノを慕っている伊賀に全権をまかせたの。


 社員の全員が残りたいみたいだけど、有志20人、その他の人員は沖縄のホテルで東京組の補佐にかかることになったの。


 まだ小さいながらもマキノをまもりたいうねりがここで生まれ始めたの。♥

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