第33話 マキノの実力
♡リハーサルが終わると、マキノたちは控え室に通され出番を待っていたの。
毎週土曜日に関西地方で放映されているローカル番組なんだけど、出演者になるとやっぱり緊張するもの、ただマキノは普段と変わらない感じでいたの、その堂々とした姿に莉央と市長は安心させられていたのね。♥
「莉央ちゃん、お茶飲む?喉とかかわいてるんじゃない?」
「うん、ちょっと欲しいかも!」
「わかった、市長さんもいかがですか?」
「わ、わたしも。も、も、おらおう!」
「じゃぁ、お茶入れるね。あのね、1/3しか飲んだらダメよ、まずは湯気を鼻で楽しむの、湯気をスーッと吸い込んでから、軽く口を湿らせる程度でいいから。飲んじゃうとトイレにも行きたくなるしね。」
「マキちゃん、すごいよ!そんなに落ち着いていて!」
「こういう時は、うまく終われたことだけを考えるの。だったら余計なこと考えないでいいでしょ。」
♡控え室のモニターにはタイムテーブルに沿って進んで行く番組が見えている。
そんなに受けない芸人が滑ったことを言ったりしているけど、あれもすごい度胸がいるんだから。そんなこんなでスタッフがマキノたちを呼びに来たの。
莉央は藤色の可愛いワンピース、マキノは勝負服の白いワンピースで市長を鼓舞しながらスタジオに入ったんだ。♥
+ + + + + + + +
はい、今日の町ナビは、今年で町制百周年を迎えられる、竹生町長の
♡司会がマキノたちを呼ぶとマキノはビジネス愛嬌を振りまきながら、莉央と市長はまだ固いままカメラの前に立たされたの。
マキノはカメラの前でポージング立ちをしている、そして莉央もマキノの真似をしながら市長の左右に立っているね。
流れとしては、弁天味噌、
まずはその弁天味噌について司会者が市長に聞いたんだけど。♥
「こ、この、おみ、みそは、ここにおられる、た、高島マキノさんが作っておられて。昨日は、はっ、発酵食の大会で賞をとった、もので、ま、まきのさんは、み、味噌を愛していて。まきのさんは。昔はbeni5で毒子と言われていましたが、それは、まったくの無実で。この味噌は美味しく安全であります。」
♡なによ市長!あんた選挙とかで人前で話すのが仕事でしょ!
なにやらかしちゃってくれてんのよ!ちょっと市長の動揺にスタジオ凍りついちゃったじゃん。♥
「市長さんも緊張なされているみたいですね。それだけ
♡市長は舞い上がってもう話せない。そして、莉央も、大なレンズのカメラに新人の頃のトラウマが甦って声が出ないでいる、そんな時とっさに司会者のフリにマキノが答えたの。♥
「そうなんですよ、こちらは
「はぁ、そうですか。手が凝ってますね。」
「お花の柄が可愛いいっ。和蝋燭って普通のロウソクとは違うのですか?」
♡あまりにもうまくロウソクを説明するマキノに、スタジオを盛り上げようと、女性コメンテーターが話を振ったのね。莉央も必死に声を出そうとおもうんだけど、カメラの向こうの人たちが自分を怖い目で見ている気がして声がでないの。♥
「そうなんですよ、よく聞かれるんですけど、実は和蝋燭は全部植物由来で、ススがほとんど出ないんです。見てもらえます。このロウソクの芯なんですが、なんでできていると思います?」
「そうえすね、普通のロウソクよりも太いですね。」
「じつは、畳と同じい草で出来ているんです。
この太さがあるので、大きな炎がゆらゆらと左右に揺らめいて、見ていても気持ちいいんですよ。」
「そうなんですね、さすが地元のかただけあってよくご存知ですね。」
♡莉央はその時、自分の壁がやっとわかったの。
目の前にあるカメラを乗り越えられずにずっと、その前をちょろちょろとしていたことを。合格点以上のスタジオトークで場をつないでいくマキノに自分との力量を感じてしまったの。♥
「そうですか、あの、高島マキノさんって、あのbeni5のですか?」
「あはは、今は、ちょっとオーガニックなことに興味がありまして、実家のある竹生でお味噌を作っています。とってもまろやかで美味しいですよ。」
「そうなんですね。それなら言っといてくださいよぉ。さすがアイドル、テレビ慣れしていますね。」
「おっと、竹生100周年祭のイメージビデオがあるんですか?じゃぁ、マキノちゃん、ブイ振りしてもらってもいいですか?」
「はい、琵琶湖の奥の奥に、いま日本人が思い出したい昭和の風景が大切に残された竹生町。そんな訪れるだけで琴線を震わせ涙が出てきそうなこの町のいいとこをぎゅっとまとめたステキなVTRをごらんください!」
♡突然ブイ振りと言われたんだけど。もちろんそんなものを用意しているわけではなかったの。
でもこのセリフ、随分昔にbeni5が旅行番組で呼ばれてあさひが言った言葉をおもしだして地名を変えて使ったんだ。あまりの即興性と完成度にスタッフ、演者一同、驚愕のまなざしだったの。トップを張った人間は格が違うって。
そして、まだ目の前のカメラという猛獣の前で震えている莉央の背後に回りあの、魔法の言葉を莉央に授けたんだ。♥
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