第34話 贈ることば




♡スタジオのは竹生の音声付きのイメージVTRがながれている。

スタジオの音声がオフになったと同時にスタッフがマキノを褒め称えるんだけど、そんなことは気にせずに長浜社長からもらったあの言葉を莉央にプレゼントしたの♥




「あのね。莉央ゆっくり目を閉じて、大好きな人のことを思い出してごらん、そう、大好きな人笑い顔をおもいだすの!」




♡マキノも社長がやってくれたように莉央にに暗示をかけるようにゆっくりと耳元で声をかけたの。♥




「そう、大好きな人が笑顔で莉央を見てるよ、その人の目を見てごらん、真ん丸でしょ。綺麗なまん丸だ!、莉央のことがとても大好きな顔しているよ。」




♡莉央は一夫の飲んで上機嫌な顔、そしていつも優しい瞳でみてくれている洋子のことを思い出したの。次第にマキノもあの時のセリフを鮮明におもいだしている。そう、長浜の声で。♥




「ほら、莉央が大好きな人のまん丸の目はカメラのレンズや、失敗しても優しく受け止めてくれる、せやから大丈夫や。カメラを大好きな人やと思て表自分を表現してみ。きっとどこかでそれを見て喜んでくれてるわ。」




『ガラガラガラ!』




♡莉央の前に何年も立ちふさがっていた壁が音を立てて崩れたの

何年間も莉央を閉じ込めていた壁がね。


前から爽やかな風が吹いてくる、草原を渡ってくる優しい風。


莉央は不思議な気持ちでいたの。マキノともう一人の誰かが自分をたすけてくれたんだって。


 すごく嬉しかったの、泣きそうだった、でもさすが竹生の女、うれし涙をぐっとこらえた時に、そのVTRは終わったの。♥




「竹生町っていいところですよね。ちょっと興味が湧いてきました。最後に何かありますか?」


「興味をもっていただいて感激です、きっとみなさんも何か気持ちに引っかかるものがある不思議な町です。」


「そうです、竹生はべんてんの町、あなたの気持ちに七福神の宝ものがきっと届くハズ。電車なら京都から1時間、車なら1時間半の忘れ物を探すノスタルジーな旅です!」




♡普段のマキノと莉央のように、軽快な掛け合いが続いて町のことをアピールしていくわ。演者たちも「巧い」と思いながらみているね。そして二人で声を合わせて♥




『ぜひ、みなさんで、おこしください。』


「明日は近江舞子さんもきますよぉ!」


『まってまぁ〜す。』




♡最後は市長も満面の笑みで「まってまってまぁ〜す」だって。


 はじめはどうなるかと思ったんだけど、最後は無事に百年祭のことをアピールできたわね。CMに入りマキノは演者に頭をさげると、演者たちはひな壇からすくっと立ち上がり深々と頭を下げている。


 自覚はしていないんだろうけど、beni5はだから何年もトップを走り続けられたんだよ。


 そして、控え室に荷物を取りにいくと、突然に莉央がマキノに抱きついてわんわん泣き出したの。♥





「マキちゃん、ありがとう!すごい、いい言葉もらっちゃった。


 わたしね、カメラの向こうは誰がいるかわからずに怖かったの、でも、でも、マキちゃんが教えてくれたから、もう、怖くないよ。


 本当にありがとう私の壁を壊してくれて。マキちゃんに会えて本当に良かったよぉ!」





♡そして、大阪駅に戻ると、三人は別々のルートで帰ることに、

莉央はこのあと、私鉄で京都まで黒壁側のスタッフと打ち合わせ。


 町長は奈良の姉妹町の表敬訪問に、マキノは大阪駅で竹生に帰る電車に乗ったの。スマホには生出演の成功を讃えるメールがひっきり無しに届いていたわ、広報担当のマキノは大役を果たしてあとは実行委員の補佐としてお祭りに参加することになっていたの。♥







♡うっ、気持ち悪い!なに、この嫌な感じは!吐きそう。マキノ、えっ、マキノに黒い影が取り付いている。なにこのモヤモヤ!あっち行きなさい!吐きそう。だめ!マキノ行っちゃだめ!♥

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