第31話 表彰式
♡7月30日の夜。弁天味噌保存協会は
世間が変わっても代々女たちの手によって作り伝えられた弁天味噌は、全国発酵食の最優秀賞として評価されたのよ。
時代の喜びや悲しみを乗り越えて、女たちが伝え作ってきた味はいまや竹生を飛び出し、日本中で支持されているの。
アルバイトの多賀は弁天味噌が表彰される様を動画に撮って、リアルタイムで居酒屋日吉にとどけていたの。
それを一夫がパソコンを持ち込みネット回線で表彰式が見えるようにセットアップしてくれていたわ。
パブリックビューイング?
居酒屋日吉を愛する常連、そして非番のレスキュー隊員も見に来ていたわ。
優作は画面に映る珠代を見て自分のことのように誇らしげにしていたの。♥
「おとーさん、こんなことできるんだ!すごい!」
「莉央、見直したか?てか、おとうさん元々こういうのが専門だからなぁ。」
♡飛び交う拍手の中、浜が壇上に上がってマイクにてをかけて話し始めたの、
やはり浜の貫禄は衰えていないね。なんなら竹生の市長と思えるくらいに力強い声でスピーチが始まる。♥
「みなさん、はじめまして。弁天味噌保存協会の
今回はこのような栄誉のある賞をいただきまして、誠に感謝しております
私たち弁天味噌保存協会は昭和45年に発足いたしました。
私の
それから半世紀、辛いこともありましたが、昔と変わらない方法で細々と作ってまいりました。押し寄せる高齢化の中で、わたくしたち弁天味噌も後継者不足問題でもう未来が無いと思っていた矢先に。一筋の明かりが弁天味噌を照らしてくれました。それは今、街の用事でここにいない一人の若い女性が私たちの後を継いでくれたのです。
それは、私たちにとって、未来に橋を架けてくれる希望の光でした。
彼女が弁天味噌を愛し、わが町、竹生を愛してくれたことで、次々に若い人たちが味噌作りに興味を持ってくれるようになりました。
私たちの街には、弁天島という島があり、そこに地元の女たちを守ってくださっている氏神の弁財天さまがおられます。きっと、その味噌を絶やすなという計らいだったのかもしれません。
わたくしたちはふと思いました。本当にこの賞を受けるべきなのか?
日本中で地道に昔の味を伝えている作業所やお店がたくさんあります。わたくしたちがそうであったかのように今も後継者で悩んでおられる団体も多いとおもいます。
これからは、古いなんて思わずにどんどん発信していきましょう。
作り方は昔ながらでも、今の時代に合わせたカタチで先祖から引き継いできた
ウチがそうだったかのように、皆さんの未来にも明かりが灯せるはずです。
この賞はそのような小さな、小さな地元の団体の賞だと思い、これからも味噌作りに精進してまいります。
変わりながら守っていきましょう。それが先人の意思を継ぐことだと、わたくしたちは思います。
最後に感謝したい人がいます。この味噌を残してくれた、ははの節と、そして私たちに、竹生に未来を照らしてくれた、最愛の孫のマキノにこの賞を捧げたいと思いす。
「ぱち、ぱち、ぱち、パチパチパチ、パチパチパチパチパチパチ!」
♡それは、素晴らしいことば、優しく、力強く、まるで母親が子供に唄う子守唄のように、聞いている人の心に染み込んでいったの。会場は割れんばかりの大拍手につつまれていたわ。♥
「おっ、おばぁちゃん。あたし、あたし。。。」
♡その優しい力をもった
涙でモニータが見えないマキノの背中を莉央がそっと撫で。
東京のとあるオフィスビルでこの放送を見ている、若い社員たちが思いを詰まらせながら、幸せの余韻に浸っているわ。♥
「そうよ、私たちは単なる売り子じゃない!届けるべきところに届けるのが仕事なんだよ!
みんな!旅行から帰ってきたら作るわよ!
マキノたちみたいな、細々といいものを作っている人たちの
「おおおおおおおおお!」
♡イベントまであと一日、絶対に成功させようね。♥
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