第29話 Bレイディオ




♡さてさて。虎姫が地域活性化の3本柱に据えている一本の計画

地元メディアの設立の件なんだけど、計画が本稼働しはじめたの。


 プレ開局が百年祭と同日の8月1日。週の半分づつの放送を黒壁スタジオと竹生スタジオで行い、オリジナル番組の時間は朝8時から12時 夕方4時から7時まで、あとは全国地方局ネットの番組が流れるというものなの。


 放送局名もなかなか決まらなくてね。黒壁、竹生共通でる琵琶湖と弁天島の頭文字をとってBレイディオと命名され、莉央は晴れて竹生局のパーソナリティに大抜擢!


 黒壁側はベテランのDJなんだけど、初めての莉央は東京で毎日DJの研修付けで、凹むことが多いみたい、そんな時はちょくちょくあさひに泣きついているようで。あさひもなんだか自分の妹みたいに莉央を可愛がっているんだって。♥





「莉央がDJになるなんて、がんばってるんだね。」


「うん、地元の開局だし、プレ開局記念放送としての百年祭のイベントMCも兼ねているから、プレッシャーで押しつぶされそうだヨォ」


「そうだよね、でもさ地元のために頑張れるって張り合いあるんじゃないの、てか、わたしは地元がないから莉央のプレッシャーをなんて言ってやわらげてあげていいかわかんないけどさ、でも。あっちにはマキノが居るじゃん!」


「うん、わたしにとってマキちゃんの存在は大きいかも。最近ちょっとおもうんだ、マキちゃんって神様なんじゃないかって。」


「あははは、なんでも見てるようで、仏顔だから?」


「あはは、仏顔ねぇ弁天島の弁天様に似てるかも。」


「あの、大きな女神様。」


「マキちゃんの周りっていい空気が流れているっていうか。」


「いい空気かぁ、確かにマキノが莉央んことに行ってから変わったかな。

違うか、そう、魅力的になってっていうか?去年のことなんだけど、東京に来てあっという間にうちの若い子たちをまとめたのよ。」


「あっ、この前さ近江舞子の件で姉さんたちの会社に行った時に社員さんたちに愛されてましたよね。」


「うん、本当に誰にでもなんだよ。あ〜マキノがうちの人事にいてくれたらなぁ。」


「わたしも、マキちゃんに会えなければ、こんなに一生懸命になれなかったかも、トップアイドルが田舎に来て、毎日毎日汗かきながらお味噌をつくってさ、町のイベントに参加して、居酒屋で働いて。でも笑顔がキレイなんだ。」


「そう、本当に莉央んトコに行けてマキノは正解だったのよ。」




♡その日はちょっと遅くまであさひの部屋で語りあっていたの、いつしか話は恋話になって。♥




「姉さんは彼氏とかいないんですか?」


「いない断定で入る質問かぁ。そうだね、今は会社のことで頭いっぱいだから。」


「そうなんだ、きっといい出会いがあるって。」


「そういう、莉央はどうなのよ。」


「あはは、うん。。。。。」




♡莉央の心の冷凍室に氷付けされた想い、誰にも言わずに凍らしておこうとおもったんだけど、ほっといても冷凍焼けしちゃうもんね、ここで想いを解凍して恋話という焚き火の枝にしようと思って話し始めたの。♥




「負けちゃった、完敗よ!」


「えっ、なにが?」


「マキちゃんに完敗。」


「やっぱりそうなんだ。なんとなくわかったけどね。」


「えっ、わたしの中では隠していたつもりなんだけどな。」


「顔に書いてあったよ。あの彼のことでしょ。」


「うん。」


「去年のことだけど、みんなで乗ったヨットが転覆しちゃってね。彼が虎姫さんを助けて、そのあと溺れて湖に引きずられちゃって。わたしは怖くてどうしていいのか、わかんなかったんだ。」


「うん、マキノから聞いたよ。彼氏が助かったって。」


「マキちゃんね。溺れた優ちゃんを、自分の命を投げ打ってまで助けにいこうとしたの。わたしは、目の前のマキちゃんも湖に引きずりこまれるのが怖かったの、だからマキちゃんに抱きついてライフジャケットを外さないようにしてたの、必死だったわ。だってマキちゃんって怪力だから。」


「すごい!あのマキノをおさえつけたの、そっか、じゃぁ、莉央はマキノの命の恩人なんだ。ありがとう。」


「そんなんじゃないよ。ただただ怖かっただけだから。その時、思ったの。もうわたしでは勝目ないって。だってさ、命を投げ打ってまで彼氏を助ける彼女って最強じゃん。わたしは震えていただけだから。」


「わたしはそれは違うと思うよ。莉央が優しいから、きっとマキノをまもりたかったんだよ。きっとそうだ。あんた優しい子だもん。」


「そう言ってもらえるとうれしいなぁ。なんかさぁ、姉さんに話を聞いてもらったらスッとした、どこかモヤついていたんだ。」


「そう、莉央にもマキノにも幸せになってほしいなぁ」


「姉さんもね。」




♡莉央は結局ウイークリーマンションには帰らずにあさひの家で夜を明かしたの。マキノを通して莉央のまわりに広がる仲間。自分でもすこしづつ何かがかわりはじめていることにきづきはじめたの。♥




「姉さん、起きて!朝だよ!」


「えっ、いい匂い、おかん、いるのぉ?」


「何ねぼけてるの、朝だよ起きて!」


「あれっ、マキノじゃない、莉央だ。てか、あんた料理できるの?」


田舎ちくぶの娘ですから、さぁ、食べようよ。」




♡冷蔵庫に入ってあるお味噌はマキノがあさひに送った弁天味噌、あさひの部屋にマキノの香りが広がっているわ。♥

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