第5章 莉央

第28話 おとうちゃん




♡すでにキャラ薄いんだけど、莉央の父親「一夫」のお話。


シーンは毎度ながらいつもの居酒屋日吉。


 夜になりいつものように一夫が一杯飲みにやってくる。定位置に座りそしてビールで喉を潤す。彼の一番の楽しみ、それはbeni5のポスターをみながら、、、無い!beni5のポスターが無い!♥




「おい、ひ、ひ、日吉!あのポ、ポ、ポスターはどうした!」


「莉央ちゃんが張り替えていったよ。さすがにもう古いからマキノがかわいそうだって。それにあまり父親おやじがここに入りびたら無いようにってさ。……ねぇ、いっちゃん、、、なんか感じないか?」


「感じないかって何だよ!その上から目線は、大体なんだその新しいポスター、、、って。………………………莉央。何で莉央がいるんだ!」


「てか、知らないの?レスキュー隊の人に頼まれてモデルやったの!」


「そんなの聞いてないや。」


「ちゃんとさぁ家族と話してる?」


「ああ、あんまりしてないなぁ。」


「そんなもんなのか?」


「50歳のおやじと娘の間に何を話すことがある?」


「子供いないからわかんないよ。」





♡前にマキノがレスキュー隊の本部で聞いていたポスターの件ね。

結局、莉央と弁天味噌を手伝いにきてくれている女の子たちが

ずらっと並んでポスターのモデルになってるの。


 笑顔で白いTシャツに蛍光オレンジのライフジャケットを着込んで

ポスターのコピーが「ライフジャケットは水辺のシートベルト」だって。

メガネもぼんやりと笑顔の愛娘をみているの。♥





「莉央も大きくなったなぁ、水辺のシートベルトかぁ。」


「どうしたの?もの思いにふけっちゃって。」


「小学校まではいつも俺の後についてきて、よく遊んだんだけどな。

いつも鳩マート連れて行ってとか、公園で遊びたいとか言いながら、俺のケツに張り付いていたのに。」


「かわいい盛りのおやじの思い出か。」


「それが中学生になったらお父さんのパンツと一緒に洗濯しないでだって。」


「いろいろと難しい年頃なんだろうなぁ。いっちゃん、洋子さんとはどこで知り合ったんだっけ。」


「ああ、大学のサークルだよ、二つ後輩でさ。」


「あっそっか、中学高校とかぶってなかったんだ。」


「俺一年、浪人してるからなぁ。」


「すごい人気だったんだよ。老舗のろうそくやの洋子さん。」


「まさか俺がその伊香家に入るとは思ってなかったよ。老舗っていっても、もうろうそくなんて、そうは使わなくなってきたしな。」


「そんなことないよ、お寺とかさ。」


「お寺も減ってるって。最近ではお坊さんの派遣とかあるらしいぜ。」


「へぇ、そんな世の中なんだな。」


「ロウソク絵付けとか綺麗だからさぁ、インスタ映えとかでブレイクするかも?」


「だったらいいなぁ。」




♡メガネはまたポスターの愛娘を見ながら、ぽつりと呟く♥




「莉央もそろそろ、結婚とかするのかな?」


「えっ、そうなの?」


「いやいや、そんな年頃かなって思ってさ。」


「心配なのかい?」


「心配しない男親なんていないだろ!」


「やっぱり、莉央ちゃんの父親なんだな。」


「いつも怒られてるけどな。」


「日吉、なんか今日は帰るわ。」


「えっ、もうかい?」


「たまには機嫌取りで土産でも買って帰るかぁ。日吉、玉子焼き焼いてくれよ。今晩は家で娘に叱られようかな。」


「それがいいや。」




♡実行委員の帰りに莉央も少し居酒屋日吉に顔をだしたの。♥




『ガラガラガラ!だだいま帰りました。こんばんわぁ。』


「日吉さんこんばんはです。」


「おかえりマキノ、あれっ、莉央ちゃんも一緒かい?」


「おとーさん来てるの?」


「ああ、ほらあそこ。」


「二人ともお疲れ!」


「日吉さん玉子焼き焼いてるの?莉央も食べたい!」


「あっ、これ莉央ちゃんの玉子焼きだよ。」


「えっ、どゆコト?」


「いっちゃんが、娘に買って帰りたいんだって。」


「ほんと!どうしたの?ママと喧嘩でもしたの?」


「いいや、なんだか、たまには家が恋しいのよ。」


「てか、自分の家じゃん!、それよりお父さん、莉央のポスター見たでしょ。」


「ああ。」


「どう?かわいい?キレイ?」


「ああ。かわいいけど、お母さんのほうが綺麗だな。」


「何よそれ!」


「実行委員も大変そうだな、役場も祭りにむけていろいろ手配が大変だよ。」


「絶対成功させたいもんね。」


「莉央あのな。……なんでもない。」


「気持ち悪いよ!何よ!」


「ほら、いっちゃん焼けたよ。」


「ああ悪いな、家で晩酌でもするか!」


「おかーさんご飯作ってないかもよ。」


「あっ、おにぎりでも作りましょうか?」


「いいよ、マキノちゃん。お気遣いありがとね。」


「莉央、俺、帰るけどお前どうする?」


「私も帰ろうかな?」


「いっちゃん、一本持って帰る?」


「そうだな、じゃぁ、玉子焼きと大びん。つけといて。」




♡いつも莉央にガミガミ怒られている一夫だけど、今日は莉央と一緒に帰っていったの。マキノは父親を知らないからちょっとだけ羨ましかったみたい。♥




「ねぇ、さっき言いかけた言葉って何よ!」


「忘れた。」


「あっ、おかーさんからのメール、牛乳買ってきてだって。」




♡一夫は莉央がマキノと一緒に竹生のために実行委員の仕事を通して

親子の会話が増えたこと。何より、竹生の女の顔になってきたことを

そっと心の中にしまっておくことにしたの。


一夫、もうあの古いポスターはいらないよね。大事な娘を見れるんだから。♥

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