第27話 楽園
♡1年ほど前にあさひたちの会社の若者と触れ合って、食生活の乱れをあさひに指摘したマキノだけど。
食堂が作られて社員のための野菜バイキングまで作られていて、あさひが社員のことを大切にしている気持ちが伝わってきたわ。
「マキノさぁ〜ん!」
♥あら、奥の厨房から誰かがマキノのことを呼んでるけど。」
「あっ!里乃ちゃん!元気したタァ!」
「マキノさん、どうしたの?」
「うん、ちょっと東京に用事があったから。」
♡それは、キッチンに立ち調理している里乃の姿だったの、もう一人の料理人と一緒に慌ただしく料理をしていたわ。♥
「いい匂い、本当に調理してるんだ。みんなにおいしいものを食べさせたいって言ってたもんね。」
「うん、日吉さんとマキノさんにこってり技を叩き込まれたから。」
「えー!愛情持って伝えたよぉ。」
「うそうそ、本当に勉強になりました。」
♡マキノと里乃が話していると、後ろからあさひが顔を出してきて二人の会話に入ってきたの。
はじめは社員の前でかしこまった感じだったんだけど、だんだんテンションが上がってきたみたい。マキノがいれば嬉しいよね。♥
「ちょっと、あさひ、すごいじゃない!こんなに野菜もあって、定食もおいしそうだし!」
「でしょ、若い子たちも喜んでくれているわ。一人暮らしの社員が多いからね。」
「あさひ、えらいえらい!」
「へへへ、マキノに褒められるとうれしいなぁ。そうだ、定食も食べて行ってよ。」
♡かわいい正午を告げるベルが鳴ると、社員さんたちが食堂に集まってくるの、そしてあるグループの女の子たちがマキノを見つけて♥
「ああっ!マキノさん!久しぶり!お元気ぃ!」
「えっ、マジで!本当だ!マキノさんだ!」
♡そう、前に社員寮で知り合った若い社員たちが定食に並ばずにマキノの周りに集まり始めたの。そしてあっという間に人だかりの山になってるの♥
「マキノさん、おひさしぶりっす!元気したか!マキノさんのおかげで毎日健康的な食生活送れてるっす!」
「この前は、玉子焼き作っていただいてありがとうございました!里乃の玉子焼きもおいしいんですよ!」
♡そこにマキノの話を聞きつけた、ひなつといぶきも来たんだけど、マキノには近づけなくて。いぶきがあさひに耳元でボソッと話したの♥
「あさひ、こりゃ完全に乗っ取られたな、マキノに。」
「ホント、わたしにも感謝してほしいわ。でも、なんかちょっと嬉しいような、寂しいような。」
♡あさひがボソッと漏らすと、二人はあさひの肩を押さえたの。♥
「ちょっと何すんのよ!」
「あんたの発作がでないようにしてんだよ!」
「みんなの前でしないわよ!」
「ならいい。」
♡マキノの人気に莉央と虎姫、委員長はポカンとしているね。♥
「ねぇ、莉央ちゃん一緒に食べようよぉ!」
「うん、食べるぅ!」
♡莉央がマキノに呼ばれると、食堂内の男子社員がざわつき出したの。♥
「この子を紹介するね。わたしの親友の
♡男子勢が一斉に莉央の前で挨拶しだしちゃって、………そらするかぁ。モデルみたいだもんねぇ、てか、モデルなんだけど。
んで、あさひを見ると。。。ちょっとマキノと莉央がイチャぽいから、あらら、あさひの肩がプルプル震えているわね。ふふふ。♥
「ねぇ、あさひも一緒に食べようよぉ。あっ、
「あのね、みんな部長なの、ホントにあんたは変わんないんだから!」
「だって、変わるなって、言ったじゃん。」
「言ったね、言ったわ。」
♡beni5が再々集結して若い子たちと昼食を食べている。
美味しくてバランスの取れている食事をとりながら、花が咲いたみたいにかしましくおしゃべりしているね。♥
「なぁ、マキノ、あれ久しぶりに作ってくれよ!」
「里乃ちゃんが焼いた玉子焼きあんじゃん、すごく美味しいよ。」
「ウチのおかんの味を思い出したいんだよ。」
「かってにいぶきの
♡隣のテーブルで食べていた里乃がマキノに自分の腕が上がったか見てほしいって言いだしてね。いつの間にか話は、玉子焼きの師弟対決になっていたの。♥
「ちょちょっ!あたし作んないってば!」
「まぁまぁ、マキちゃん、みんなもそう言ってることだし、ほらほら。」
「ちょっと莉央ちゃん、やだぁ………もう、仕方ないなぁ作ってみようか。」
♡莉央にほだされて、キッチンに立つマキノ。予備で置いてあったエプロンをきゅと腰に巻くと表情がキリッとしたのね、もう既に巨匠の域だよ。
キッチンに並んで同時に卵を溶いてフライパンで焼いていく二人。対決というよりも近所の玉子焼き屋さんみたい。息ぴったりに玉子を返すところなんか鏡を見ているみたいね。♥
♡「ほわぁ、ほわわぁ」出来上がった玉子焼きがテーブに乗ったの、そして急遽結成された、役員の4人と莉央、じゃんけんで勝ち上がった5人の社員、計10人の審査員が、二つの玉子焼きの味を審査することに。♥
「こっちのマキノの。はふはふ、おいひい、ふかふかして、でこっちが伊賀ちゃんのね。はふはふ!ん!おいひい。同じじゃん!」
「ほんとだ、まったく一緒だ!おいしい!」
♡審査員一同、どっちがどっちを作ったかわからないほどの同じように仕上がりに驚いている。その言葉を聞いて里乃はマキノに抱きついたの。♥
「やったぁ!マキノさん!わたし!嬉しいです!」
「あははは、我が家の秘伝よ、大切にしてね。」
♡なになに、里乃が泣いちゃってるよ。よっぽど嬉しかったんだろうね。そしてマキノは里乃の両肩をポンポンと撫でて。♥
「里乃ちゃんなら任せられる、あさひたちをお願いね。」
「はい、がんばります!」
「あいつらわがままだから、気をつけるのよ、なんかあったらあたしに言ってね、注意してやるから。えへへ。じゃぁ頑張ってね。」
「はい、マキノさんもお元気で!」
「じゃぁ、あさひウチらそろそろ帰らなきゃ。なんせ昨日の夜中に飛び出してきちゃったから。」
「そっか、またおいでよ。マキノ!」
「うん、また来るね。これでわたしはおかん卒業かな?」
「そうね、あんたは新おかんのおかんだ!」
「なんだそりゃ!」
♡あらら、あさひったら、すっかり社長の顔から、あの時の顔に戻っているわ。マキノは再会を約束して竹生の面々と食堂を後にするんだけど、なぜか社員のコたちが後についてきて、結局、駐車場でお見送り。超VIPだよマキノは。♥
それから。
♡東京から帰ってきたマキノたちは「近江舞子」の出演という、大金星をつかみ竹生に凱旋したの。実行委員はすぐに行動を起こした虎姫、交渉に大きな役割を果たしたマキノを大いにたたえたの。
そんなこんなで、当日のスケジュールやポスターには近江舞子の写真が掲載されることになったのね、なんだかんだいいながら結局、あの時ベンガラ太郎オファーにしておいてよかったみたいだよ。
百年祭までもう一ヶ月を切って実行委員並びに役場や町の人までお祭りムード一色になっているわ。」
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